ワークショップ「福岡」
■日時 2009年3月26日(木) 13時~17時
■場所 福岡県立修猷館高等学校(2F講義室)
福岡県高等学校公民科研究会との共催で「経済教育ワークショップin福岡」を、福岡県立修猷館高等学校を会場にして、実施した。当日は、福岡県の公立高等学校では 人事異動発表後の職員会議などが多くの学校であり、出席者がどのくらいになるか心配されたが、17名の先生方の参加を得て、以下のようなプログラムで、熱心に講義、 模擬授業、討議を行った。
【プログラム】
13:00~13:10 研究会、ネットワーク代表挨拶
13:10~15:00 経済を教えるために (同志社大学経済学部 篠原総一)
15:20~16:20 公共財ゲーム (東京都立西高等学校 新井明)
16:30~17:00 質疑・討論・閉会挨拶
【ワークショップの要約】
まず、篠原代表から、「経済を教えるために」という講義が行われた。篠原代表は、東京書籍の『政治・経済』の教科書の「金融」の箇所を基に、 現在の教科書記述の問題点、各項目の考え方を展開した。この教科書も含め、現在の教科書での「金融」は、(1)貨幣とは何か(moneyの問題)、 (2)金融とは何か(financeの問題)、(3)金融政策とは何か(monetary policyの問題)、(4)近年の制度改革(monetary systemの問題)の全くレベルの異なった 4つの領域がわずか2ページほどで記述されていること、したがって、生徒にとっても教員にとっても、分かりにくく、教えにくい構造になっていることが指摘された。 その上で、(1)の貨幣に関しては、たとえ生徒が興味を持ったとしても、そもそもこの箇所で扱う必要はない、(2)の金融に関しては、フローの金融とストックの金融を 区別して扱うべき、(3)の金融政策に関しては、マネーサプライの増減による金利管理だけで景気(設備投資)をコントロールすることは出来ず、 大事なのは将来予想であることを理解させることが重要である、(4)の制度改革では、「貯蓄から投資」へのスローガンの時代的な意味を踏まえて問題を整理しておく 必要がある、との視点を提出された。
次に、新井から、「公共財ゲーム」の提案がされ、シミュレーションやゲーム教材の定義、分類、実例などを紹介した後、先生方の参加のもとで「公共財ゲーム」を実施した。 模擬授業では、ゲームの仕組みを理解すればするほど、フリーライダーが増えるという、当初の予想とは異なった結果となったが、参加の先生からは、フリーライダーに なることによる損失額をもっと強調したらよい等の意見をいただいた。
質疑・討論では、篠原講義に対して、貨幣の役割のなかで何を重視したらよいか、立場の違う経済学の流れをどう総合的に生徒に紹介すればよいかなどの質疑や、 経済の仕組みを分からせることが大事であるという講義の趣旨に賛同するなどの意見が出された。
今回のワークショップでは、金融を切り口に現在の教科書の問題点、そこから何を問題にして、どう突破したらよいかという道筋が提起されたこと、「公共財ゲーム」を 高等学校の先生を対象にはじめて本格的に実施して、そのメリットや問題点が浮かび上がったこと、福岡の研究会とのネットワークがつながったことなど、有意義な会となった。
(文責:新井明)