ワークショップ「東京」
■日時 2009年3月14日(土)13時00分~17時00分
■場所 日本大学経済学部7号館(東京都千代田区三崎町)
日大経済学部7号館において経済教育ワークショップ「東京」が、(財)経済広報センターと東京都千代田区教育委員会の後援で開催された。 中学校の社会科教員を対象とするワークショップであったが、それ以外にも高校教員や大学教授、出版関係者、ビジネス関係者など多様な顔触れの参加者が20名ほど集まり、 それぞれの立場から活発なコメントや意見の交換が行われた。
【プログラム】
13:00~13:10 開会挨拶
Ⅰ 使える「企業」モデルをめざして
13:10~14:20 講演:公民教科書における企業の位置づけ(同志社大学経済学部 篠原総一)
14:30~15:40 教材提案:公民で「企業」をどう教えるか(目黒中央中学校 三枝利多)
Ⅱ.ディスカッション
16:00~16:55 質疑・ディスカッション
16:55~17:00 閉会挨拶
【ワークショップの要約】
まず新井明氏(都立西高)の開会の辞に続いて、篠原総一(同志社大)経済教育ネットワーク代表が、「『仕組み』から学ぶ経済」というテーマで講演を行った。
篠原氏によると、経済の基本は分業と交換であり、その分業と交換の「仕組み」を知ることが、経済を理解する上でもっとも重要であること。特に経済全体のあり方を、 企業による生産の仕組みの視点からすべて関連付けることによって、雇用、労働、消費、金融、政府などの仕組みも容易に理解できるようになることが指摘された。
次に、三枝利多氏(目黒中央中)が、以上の指摘に基づいて、特に企業と経済社会全体とのつながりを考えるための教材の提案が行われた。
その展開1としては、まず教室で2時間程度の「牛丼屋経営シミュレーション」のゲームを行い、その結果を振り返る。その上で展開2として、 「牛丼屋を大きくしてみよう」という新たなシミュレーションを行い、そこから現実の企業についての認識を深めさせ、企業と経済社会のかかわりを考えさせる。 さらに時間があれば、企業づくりのシミュレーションを企業関係者を講師として招いて行う。そして最後に、企業と家計および政府とのつながりについての シミュレーションもできれば望ましい。
以上の篠原、三枝両氏のプレゼンに関する討論が、加藤一誠氏(日大)の司会で1時間ほど行われたが、議論は多岐にわたり、篠原氏については、 そもそも経済を見る見方としての「効率」と「公正」という視点を生産や消費のレベルでどう生かすか、例えば企業がモノを作る仕組みを評価する視点として、 生産の効率性だけでなく、社会全体で不必要なものを作りすぎていないかといった点も重要であることが指摘され、さまざまな意見が出された。
また三枝氏については、牛丼屋のモデルは中学生だけでなく高校レベルでも非常に役立つ教材であることが指摘される一方で、簡単なモデルではカバーできない 重要な点、例えば雇用の問題などを、限られた時間内でどうカバーするのかが課題といった議論が出された。
さらに、企業関係者からは最近の経済の混迷に鑑みて、伝統的な経済学の考え方だけでなく、新しい社会のあり方や価値観に基づいた経済の教育を考えるべき ではないかといった根本的な問題も提起され、議論はワークショップ後の懇親会に持ち越された。
全体として、短い時間の中で消化するには大きすぎるテーマであったが、その意図と意味および課題が参加全員で共有でき、今後に向けて有意義な一歩が 踏み出されたワークショップであった。
なお、ワークショップの様子を撮った写真は以下を参照:
http://miyao-blog.blog.so-net.ne.jp/archive/20090314
(文責:宮尾尊弘)