ワークショップ「福井」

 
■日時 2008年11月29日(土) 13時~17時30分
■場所 福井大学 総合研究棟2階


今回は福井大学と共催で、福井大学総合研究棟で開催した。


【プログラム】


12:40 受付

Ⅰ.経済教育の進め方
13:05~14:00 講演:先生方に知っておいていただきたい経済学の考え方
          (同志社大学経済学部 篠原総一)

14:00~15:00 教材提案:公民で「企業」をどう教えるか
          (神戸夙川学院大学観光文化学部 小島克巳)

15:00~15:20 質疑

Ⅱ.新学習指導要領と経済教育
15:40~17:25 パネルディスカッション:新学習要領のねらい
          (福井大学教育地域科学部 橋本康弘)
          (同志社大学経済学部 篠原総一)
          (福井大学教育地域科学部附属中学校 向当誠隆)


【ワークショップの要約】

Ⅰ 篠原総一代表(同志社大学経済学部)による「経済教育:子供たちに教えたいこと」と題した講演があった。篠原代表は,公民が社会のしくみを知り, プレイヤーの働きを理解し,よりよい社会の条件を考えるための目を養う教科であるべきであるとし,授業で取り扱ういくつかの概念を具体的な事例をあげて説明された。

(1)正解は1つではない:現在,所得格差が問題になっている。ある都道府県が最低賃金を引き上げれば,雇用者は雇用を削減するから,かえって失業(所得ゼロの人)が 発生してしまう。このように,最低賃金の引き上げによる賃金上昇がよいのか,失業の増加がよいのか。つまり,正解は1つではない。

(2)なぜ,市場に関わる経済活動と政府に関わる経済活動に分かれているのか:家計や企業の自由な意思(勝手な行動)に任せておけば,社会全体の無駄を省ける (=効率の達成)。しかし,市場が機能するためには,所有権や取引のルールといった多くの条件が必要である。つまり,世の中には不完全な市場しかないため, 政府の役割がある。政府の活動は社会資本の整備,規制,許認可や免許制度などのルールをつくるというように多岐にわたる。例.消火器の例(フリーライド,過少供給)

(3) 市場活動=効率,政府活動=公平という考え方の間違い:社会の無駄をできるだけ少なくし,全体の所得をできるだけ高め,そのうえで,別途,所得分配を考えなければ ならない。そのためには,企業と政府の経済活動の仕組みと働きについて学ぶことが重要。家計や企業のインセンティブに逆らうとき,政策は当初の意図とは異なる結果を もたらすことが多い。例.家賃規制と低所得者の住宅事情:家賃規制によって低所得者の住宅供給が減少する。住宅は他の用途になってしまうか,低所得者はもっと高い家賃を 支払うことになる。ここでは,貸す側のインセンティブを無視していることが問題である。取引する両者にとってプラスにならないといけないのである。

Ⅱ 小島克巳氏(神戸夙川学院大学観光文化学部)は「教材提案:公民で「企業」をどう教えるか」のテーマで講演された。小島氏からは,企業を軸に教材を構成する場合の 考え方や教え方のポイントが説明された。

(1)企業を中心とした経済のしくみの理解の確立:現在の教科書では消費者から教え,企業については,会社の種類と株式で終わっている。しかし,コンビニの商品を例に とってもその製造や配送に多くの企業がかかわっており,それが社会の仕組みではないか。

(2)福井ということもあり,眼鏡産業を例に上流部門から下流部門への流れを説明。いわゆる中間段階における企業間関係の説明。

(3)企業の役割として考えられるのは,1.生産者としての企業,2.働く場所としての企業,3.資金の借り手としての企業,4.納税者としての企業である。 それぞれ教材の単元となり,現在,ネットワークで教材化を検討しているという報告をされた。

最後に,企業を軸に教えることによって,教科書では見えない社会のしくみが見えてくるという言葉でまとめられた。

Ⅲ 「新学習指導要領のねらい」のテーマでディスカッションが行われた。メンバーは橋本康弘氏(福井大学,兼司会),向当誠隆氏(福井大学教育地域科学部附属中学校) および篠原代表であった。

第1部では向当氏から篠原氏の講演と小島氏の提案に対する疑問や意見が述べられ,それを軸にディスカッションはすすんだ。第2部では橋本氏から新指導要領のポイントが 解説され,どのような教材をつくるのか,授業の構成はどのようにするのか,といった点からディスカッションが行われた。また,フロアからは積極的に質問もだされ, パネリストが応答する場面もみられた。

Ⅳ 本日の意義と閉会挨拶:藤井宏樹(同志社香里中学校高等学校)


(文責:加藤一誠)

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