ワークショップ「京都」

 
■日時 2007年12月9日(土)
■場所 京都市総合教育センター


第2回経済教育ワークショップ(京都)が、12月9日に京都市総合教育センターで開かれました。近畿地方の教員、大学関係者、教育委員会関係者など54名の参加を得て、 活発な議論が展開されました。


【プログラム】


Ⅰ.「経済」の授業内容をどう組み立てるか(司会 同志社大学 篠原総一)
    問題提起(弘前大学 猪瀬武則)
    コメント(同志社香里中高等学校 藤井宏樹)
    討論

Ⅱ.教育課程と経済教育(司会 京都学園大学 中西仁)
    講演 文部科学省初等中等教育局視学官 大杉昭英
    質疑

Ⅲ.モデル授業:シミュレーション教材(司会 同志社大学 野間敏克)
    牛丼屋シミュレーション(東京都目黒区立目黒中央中学校 三枝利多)
    労働に関する授業用資料(大阪大学 大竹文雄) 
    討論 (東大阪市教育センター指導主事 川原和之)

Ⅳ.全体討論授業用資料体討論(司会 大阪大学 大竹文雄)
    総括(京都学園大学 中西仁)
    最終討論



【ワークショップの要約】

初めに、経済教育ネットワーク代表の篠原総一氏(同志社大学)、読売新聞教育支援部長の河合敦氏、および、京都市教育委員会教育企画官の生田義久氏の挨拶のあと、 午前のセッションがもたれた。

まず、猪瀬武則氏(弘前大学)が「経済の授業内容をどう組み立てるか」というテーマで問題提起がなされた。猪瀬氏の提起された授業方法は経験から概念の把握であった。 まず、具体的な経験をもとに反省的な検討(省察)を加え、そこから理論的な見方・考え方を習得した後、具体的な問題へ適用(実践)することによって、次の段階 (新たな経験)へのプロセスを踏むことになる。すなわち、振り返り(ディブリーフィング)の重要性を強調された。

これに対する藤井宏樹氏(同志社香里中高等学校)は、コメントとして「経済教育」の概念・イメージ・考え方の多様性を指摘された。特に、強調されたのは、 「生きる力」「善く生きる」視点からの経済教育の大切さであった。その後、フロアーから活発な討論が行われたが、特に教育の多様性に照らしてみれば、 具体的な経験からの授業方法だけでなく、「経済のしくみ」を教えることの重要性も指摘されていた。たとえば、金融経済教育についていえば、利子の概念や金融の仕組みを 教えることの大切さには異論はなかった。また、いろいろな意見が披露される中で、参加者の共通認識として醸成された事柄も見受けられたように思われる。 すなわち、経済教育の要諦は「経済学」を教えるのではなく、「経済」を教えること。また、抽象性の高い概念は生徒には理解し難く、生徒の視点に立った教育が 大切であること。等々。

午後の第一セッション「教育課程と経済教育」では、大杉昭英氏(文部科学省初等中等教育局視学官)が学習指導要領における経済教育の取扱いについて説明された。 経済教育の中心に据えられているのは“選択”の基準であり、それを過去・現在・未来の「時間軸」、個人の属性と社会の係わりの「関係性」、および「命題」=「内容」の 三つの要素から、それぞれ教える具体的な項目を示された。

続いて、第二セッション「モデル授業:シミュレーション教材」では、三枝利多氏(東京都目黒中央中)が東京での第1回「経済教育ワークショップ」と同様に 「牛丼屋シミュレーション」を参加者に実際にやらせて、そこから何が学べるか、またそれをどう使うかという問題提起を行なった。三枝氏によると、“選択”と “希少性”がこのゲームのキーワードになっている。これに対して、河原和之氏(東大阪市教育センター)は、一般に生徒が感じる印象と狙いが違う場合が多いが、 このゲームはそれが回避されていると評価されたうえで、ゲームの後半は単純作業に終始し知的興奮に欠けると指摘された。そして、河原氏のアドバイスとして、たとえば、 生徒にカードを作成させるような工夫を取り入れるのも一つの方向性を与えるとコメントされた。

最後の「全体討論」では、大竹文雄氏(大阪大学)が中学生向けの教材「仕事と給料について考えよう」を紹介された。それを踏まえて、経済教育の内容や 経済教育ネットワークの役割について、参加者から活発な意見が交わされた。それらを集約すると、以下の4点になる。

①経済教育の重要なミッションは、生徒たちに「生きる力」を教えること。
②将来の選択は現在の選択に依存していることを理解させること。
③具体的な経済知識がなければ、抽象的な概念の理解は無理であること。
④経済教育ネットワークの役割は、優れた授業の実践例を紹介し活用してもらう機会を提供すること。


(文責:西村 理)

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