2007年度(暫定)年次大会



■日時:2007年9月15日(土)10:30-17:00
■場所:日本大学経済学部2号館


まず、大竹文雄大阪大学経済学部教授から開会の挨拶があった後、佐和隆光立命館大学教授より「経済を学ぶということ」というテーマで基調講演があった。 そこでは、基本的に経済学で教え学ぶべきことは、市場経済の仕組みであり、経済問題の考え方であることが強調され、その点で日本の経済教育は小中高校に 限らず、大学でも社会でも問題があることが指摘された。講演後、質疑応答が活発に行われ、現状の教育問題の根深さと変革への方法などが議論された。

午後の最初のセッションでは、猪瀬武則弘前大学教育学部教授が「公共財ゲーム:マンションの耐震改修」(中川雅之日本大学経済学部教授が原案作成)の 教材を使って模擬授業を試み、参加者を10のグループ(世帯とみなす)に分けて実験を行った。結果として修繕費を負担せずに改修サービスの便益だけを 得ようとする「ただ乗り世帯」の数は約半数で、実験を繰り返してもあまり変わることはなかった。これをどう解釈するかについての議論がその後行われた。 またマンションの耐震改修というテーマそのものを「公共財」という名のもとで取り上げることの妥当性も議論になった。さらに、コメンテーターの 高橋勝也都立拝島高教諭と田中繁広北区立神谷中学校教諭からは、このようなゲームの教材を評価するとともに、教員側の理解や生徒の興味の点で 解決すべき問題があることも指摘された。

次のセッションでは、「学校における経済教育をどう支援するか」についてのシンポジウムが行われ、コーディネーターの栗原久信州大学教育学部教授のもとで、 金融関係で学校教育への支援を行っている3つの代表的団体からのパネリスト(赤峰信東証取引所CSR推進部審議役、岡崎竜子日銀金融教育プラザ企画役、 鬼塚眞子日本FP協会会員)が、提供教材と活動内容の紹介およびこれからの課題について発表を行った。会場で配布された資料に示された様に、膨大な量の 教材提供や支援活動がなされてきたことは明らかであるが、それが現場でどれだけ金融教育や経済教育を推進する上で役割を果たしたかについては大きな 課題であることが指摘された。コメンテーターの浅野忠克山村学園短大専任講師および新井明都立西高教諭との議論の結果、今後のさらなる外部団体との 協力の必要性とともに、学校と教員の役割が改めて問われていることも明確になった。

最後の閉会の辞として、まず三枝利多目黒中央中学校教諭が、シンポジウムの議論の結果を受けて、外部から支援を受ける学校の側の課題、例えば研修の 機会と時間を確保する難しさなどを指摘し、それとともに経済教育ネットワークの役割の重要性を強調した。またそれが篠原総一経済教育ネットワーク代表の 結論でもあった。総会は、篠原代表の参加者全員に対する謝辞で閉幕となった。

(文責:宮尾尊弘)




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