時事問題解説

請負労働

非正規雇用の一形態。労働の請負を発注した企業(これを発注元企業といいます)が人材派遣会社との間で交わした契約に基づき派遣会社から職員の派遣を受け、発注元企業は派遣された人たちに会社の業務を処理してもらうという経済効果においては派遣と同じですが、請負労働の場合、次の2点で派遣と異なります。第1に、派遣会社は仕事の完成を目的に、発注元企業が事務所や工場等で行っている業務の一部を請け負います。こうした業務契約を反映して事務所や工場での作業指示は派遣会社の作業責任者が出すため、発注元企業の社員は請負労働者に作業を直接指示・命令することはできません(派遣の場合は指示・命令できます)。第2に、請負労働者にかかわる労務管理責任はすべて、指示・命令権を有する派遣会社が負います(派遣の場合は発注元企業、派遣会社が責任を負います)。

日本では労働者の派遣は限定的に取り扱われてきましたが、2004年3月からは製造業への労働者の派遣が解禁されました。これに伴い、メーカーが工場において他社の従業員を自らの指揮命令権限の下において使用する場合には、人材派遣会社との間で派遣契約を結ぶことが求められました。しかし、派遣契約を締結すると、メーカーには使用者責任や労働安全上の義務が発生するほか、一定期間を超えて派遣社員を雇用すると希望者を直接雇用に切り替えることが求められるなど、労務管理費や人件費の上昇が避けられません。

そうした状況下、製造業に属する企業においては、請負労働と偽って人材派遣会社から労働者の派遣を受け、労働者の使用にかかわるさまざまな責任や義務を回避しようとする行動がみられます。これを偽装請負といいます。偽装請負の場合、請負となっているにもかかわらず、業務を請け負った会社は労働者を供給するにとどまり、工場での仕事の指示・命令は発注元の会社に任せるのが一般的となっています。政府では現在、メーカーに対し偽装請負を解消し、派遣に切り替えることを促しています。

(同志社大学経済学部教授 鹿野喜昭)


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