時事問題解説

グレーゾーン金利

日本の場合、銀行や信用金庫のほか、サラ金と呼ばれる消費者金融会社などの貸金業者が行う貸付に適用される金利については、どういうわけか2つの法律が混在してその上限金利が規制されています。

ひとつは利息制限法による上限金利規制であり、元本10万円未満の利息は年利20%以内、10万円以上100万円未満は年利18%以内、100万円以上は年利15%までと定められています。銀行、信用金庫や信用組合といった金融機関は利息制限法の範囲内で貸付金利を設定しています。しかし、この法律は民法上の解釈で定められた利息制限であり、破っても罰則が課されないため、消費者金融会社などは利益獲得を狙いとして利息制限法以上の利息でお金を貸しています。その際の根拠とされているのが、出資法による上限金利規制と貸金業法において定められた「みなし弁済」規定です。

出資法では年利 29.2%を超える利息で貸金業を営むことが禁止され、違反すると5年以下の懲役または3000万円以下の罰金が科せられます。そのため、消費者金融会社は出資法上の上限金利を厳守して貸付を行っています。この出資法による上限金利と利息制限法により上限金利との間で設定された貸付金利のことを、法律的に白とも黒ともいい難いという意味でグレーゾーン金利といいます。

このグレーゾーン金利での貸付は本来的には無効であり、借り手は利息制限法上の上限金利を超えて利息を支払う必要はありません。しかし、現在の貸金業規制法43条に設けられたみなし弁済規定に基づき、利息制限法を越える貸付金利でお金を借りた人がそのことを納得して自らの意思で利息を支払った場合には違反にならないとされています。このような法令上の取り扱いを根拠として消費者金融会社の多くは、顧客が任意で支払うなど一定の条件を満たしていればとくに問題はないとして、グレーゾーン金利での貸付を行っていたのです。

しかし、そういった慣行は借り手である消費者からみた場合、たまったものではありません。それゆえ、利息制限法上の上限金利を超える利息の支払いは無効であるとして利息の返還を求める訴訟が幾度となく起こされてきました。そうしたなか、2006年1月の最高裁判決においては貸金業規制法43条の「任意に支払った場合のみなし弁済」を事実上無効にする、あるいはこれまでのようなやり方で問題はないとして実行されてきた利息制限法の上限金利を超える貸付は無効という判断が示されました。

最高裁判決によりグレーゾーン金利の適用要件が厳格化されたことや近年、多重債務者が増加傾向にあることなどを受け、その後、上限金利の見直しに関する議論が活発化することになりました。貸金業規制法および出資法の所管官庁である金融庁も、最高裁判決を受け、貸金業規制法上のみなし弁済制度を廃止するとともに、出資法上の上限金利を利息制限法上の上限金利である20%にまで引き下げる方向で貸金業規正法の改正を国会に提案し、2006年12月の特別国会において可決・成立しました。なお、グレーゾーン金利の廃止に際しては経過措置が設けられ、みなし弁済規定の廃止や出資法上の上限金利の引き下げは改正法の公布から概ね3年を目途として施行されることになっています。

(同志社大学経済学部教授 鹿野嘉昭)


▲ページトップに戻る



ニュースレター

経済教育プログラム

時事問題の解説

関連リンク