時事問題解説

準備預金制度

銀行等の金融機関は一般に、中央銀行に開設した当座預金勘定を通じて顧客取引や市場取引の結果発生した金融機関相互間の資金貸借の決済などを行っています。この中央銀行当座預金に関して預金等の債務の一定割合(これを準備率という)の積み立て義務を課す制度のことを準備預金制度といいます。中央銀行当座預金は通常、無利息の預け金であるため、金融機関においてはなるべく少ない金額にとどめようとします。そうしたなか、準備率の操作を通じて準備預金保有コストを能動的に操作し、物価や景気動向に対し一定の影響を及ぼそうとする政策手段のことを準備率操作といいます。

日本の場合、 1957年に準備預金制度が導入され、一定金額以上の資金量を有する金融機関に対しては預金等の債務の一定割合を日本銀行に預け入れることが義務づけられています。預金準備の対象となる債務は、預金、金融債、信託元本、居住者外貨預金、非居住者円預金からなり、積み立てに際しての具体的な基準は政令で定められています。準備率は日本銀行が設定・変更することになっています。

準備預金制度は、欧米主要国においても広く導入されています。もっとも、最近では、準備預金制度は預金を取り扱う金融機関にのみ課されるため金融機関相互間の競争上不公平であるという批判もあって、各国中央銀行とも準備率操作を金融政策手段として利用する頻度は傾向的に低下しています。

(同志社大学経済学部教授 鹿野嘉昭)


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