時事問題解説

ジニ係数

社会における所得の不平等あるいは所得格差の度合いを測る指標。イタリアの数理統計学者ジニによって1936年に考案されたことにちなんで、ジニ係数と呼ばれています。ジニ係数は「その国や集団の構成員の所得格差が、平均所得を基準としてみた場合、どの程度の水準にあるのか」を表し、その値が大きければ大きいほど、所得格差は大きい、すなわち不平等度合いが高いことになります。ジニ係数は通常、0と1の間の値をとり、所得格差が存在しない完全に平等な国や集団の場合には0になります。一方、一人で全所得を独占するという完全不平等な国や集団では、限りなく1に近づきます。自由主義経済諸国の場合、ジニ係数は通常、0.3~0.4前後の値になるとされています。

日本の場合、厚生労働省の「所得再配分調査」、総務省の「全国消費実態調査」や「家計調査」などを用いて、ジニ係数が計算されています。日本のジニ係数は、計算に利用された統計での調査対象世帯の相違(所得の少ない世帯や高齢者世帯が相対的に多いか少ないかなど)や所得から税金や社会保険料を除くか否かという所得の捉え方の違いを反映して微妙に異なっていますが、現在のところ、0.28前後の水準にあるようです。その一方で、長期的にみた場合、ジニ係数は1980年代以降、緩やかながらも上昇傾向にあり、不平等度合いが近年、拡大していることが示唆されます。その理由として、福祉の切り捨てに伴う低所得者層の拡大や非正規労働の増加などが挙げられることがありますが、そうした上昇分の多くはむしろ、所得が相対的に少ない高齢者世帯の増加という人口構成の変化に伴うものと理解されています。

(同志社大学経済学部教授 鹿野嘉昭)


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