時事問題解説

非正規雇用

会社で働く人のうち、アルバイト、パートや契約・派遣社員など、正社員以外の資格で雇用されている人々のことをいいます。正社員は、期間の定めのない雇用契約に基づき働いています。これに対し、アルバイト等の場合は、期間を定めた短期の契約にしたがって雇用されたり、人材派遣会社から派遣されたりしています。こうした雇用形態の相違を強調するべく、アルバイト等のことを非正規雇用と呼んでいます。非正規雇用者が正社員として採用される途は開かれていますが、そうした事例は実際には少ないようです。

アルバイト、パートや契約社員の場合、期間契約労働者として会社と直接、雇用契約を締結します。しかし、日本の場合、正社員と比べて労働時間が短い、賃金も安いというのが一般的であるほか、正社員に提供される福利厚生の対象にならないことが多いようです。派遣の場合、人材派遣会社と契約を交わして同社から職員を受け入れ、そうした派遣社員に会社の業務を処理してもらうことになります。非正規雇用の場合、正社員の雇用と比較して、?賃金および福利厚生費が安くつく、?会社の経営状況に対応して雇用を弾力的に見直すことができる、といった特色があります。

日本の企業の多くは近年、人件費の圧縮による業績の回復や雇用の弾力化の推進などを狙いとして、正社員の採用を抑制する一方で非正規雇用を増加させています。その結果、非正規雇用は現在、就業者全体のおよそ3割を占めるに至っています。その一方で、将来を約束されない派遣社員やアルバイトなどに正社員並みの創意工夫、生産性向上に向けた努力を求めることは難しいため、非正規社員がこのまま増え続ければ技術の蓄積やノウハウの伝承に問題が生じるのではないかという指摘が聞かれます。また、非正規雇用者のなかには、就職活動を行った時期がいわゆる就職氷河期にあったことから正社員になれず、そういった就業形態を止むを得ず選択したという人も多いとされています。

日本では現在、価値観の多様化もあって、自らの欲求にしたがった柔軟な働き方を求めるニーズが高まっています。そうした状況下、個々人が自らの意思に基づき正規雇用、非正規雇用を選択できるようにすることや、非正規雇用を個々人の能力が有効に発揮できる就業形態として整備していくことが重要な政策課題となっています。そのためにも、正社員と非正規雇用者との処遇面での格差を縮小し、働きに応じた公正な処遇の実現に向けた努力が求められているということができます。

(同志社大学経済学部教授 鹿野喜昭)


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