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4月、卯月。
新年度開始です。昨年は、コロナによる一斉休校中で、入学式が中止になった学校も多かったと思います。残念ながら、まだpost-coronaとはなりませんが、with-coronaでも、知恵をだしながら、新しい気持ちで教育活動を開始したいものです。
そういえば、本日はエイプリール・フール。昨年は「アベノマスク」配付が発表になった日でした。今年のサプライズはどんなものがあるのか。あの日々を忘れないことも、新年度開始の日の大事なことかもしれません。
そんな今月も、ネットワークの活動報告と授業に役立つ情報をお伝えします。
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【今月の内容】
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【 1 】最新活動報告
 企画中のイベントや21年3月の活動を報告します。
【 2 】定例部会のご案内・情報紹介
 部会の案内、関連団体の活動、ネットワークに関連する情報などを紹介します。
【 3 】授業のヒント…評価に向き合えば、授業が変わる!
【 4 】授業で役立つ本…今月は二冊を紹介。
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【 1 】イベントの案内と最新活動報告
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■「先生のための夏休み経済教室」を開催します。
 テーマ:「ポスト・コロナの経済教育のすすめ方」
 日時:2021年8月13日(金)、8月16日(月)
 場所:東京証券取引所からWebによるライブ配信
 内容:
  8月13日(金) 中学校向け
① 講演「新教科書の読み方・授業での生かし方」
                          同志社大学教授 野間 敏克
② 実践提案「ポスト・コロナ時代のネタの集め方・生かし方」
                      立命館大学他非常勤講師 河原 和之

  8月16日(月) 高等学校向け
① 講演「経済教育に行動経済学をどう生かすか」
          大阪大学 感染症総合教育研究拠点 特任教授 大竹 文雄
② 講演「社会や経済は複雑すぎて、経験や直感だけで理解できる代物ではない」
                 慶應義塾大学教授 坂井 豊貴
・募集要項、内容の詳細は決まり次第、ネットワークのHP、および東京証券取引所のHP
に掲載いたします。

■「春の経済教室」を開催しました。
 日時:2021年3月27日(土)14時00分~16時00分
 場所:オンライン開催
 内容の概略:54名参加
(1)講演「経済を教える-現実と教科書のギャップ-」(篠原総一ネットワーク代表)
・篠原代表は、教科書が生徒の理解を歪めていないかという問題意識から、経済の変化に教科書が追いついてゆけないこと、教科書は20年前、30年前の経済の仕組みについて書かれていて、生徒はそれを学んでいる現状を埋めなければいけないと提起します。
・経済の変化に関しては、グローバル化、デジタル化、人口減少などが要因で、具体的には、ネット市場、プラットフォーム型消費市場、マッチング市場、電子マネーなどの交換の仕組みの変化、働き方、生産、貿易、金融、政府などがあり、それがコロナ禍で一挙に加速していると指摘します。

・それに対して、教科書が頼りにする新古典派経済学では、理論の前提となる仮定があり、それが現実には変化していて、新しい動向を十分には説明できないという乖離があることを知っておいて欲しいと述べられます。
・具体的な例を、貿易に関して説明され、教科書ではメッセージがばらばらに出てくるだけで、ストーリーをもって書かれていないこと、さらに、貿易理論のなかで最初に登場するリカード比較生産費説は、土地、労働、機械などの生産要素はすべて国境を越えることがないという前提で作られていること、その前提があった時代には、各国が互いに最終財の貿易をしておけば、国境を超えることのない他国の生産要素を有効に利用しあうことができたと指摘されます。
・現在の新しい貿易は、リカードの前提を越えて進展していると同時に、メリットだけでなくデメリットもあることを、先生方は理解して、教えて欲しいと、話をまとめられました。

(2)講演「金融に関する教科書と現実のギャップ」(同志社大学教授 野間敏克先生)
・野間先生は、中学公民と高校「政治・経済」の金融に関する教科書記述の紹介をふまえて、現実の金融政策と教科書のギャップがどこにあるかを紹介します。
・具体的には、①金融政策の景気安定効果、②金融政策の実施方法、③教科書にある、資金、通貨、貸し出し金利、コールレートなどの意味と操作対象、④操作がどのような経路で景気や物価に影響するのか、⑤金融政策の悪い面、副作用の5点にわたって説明をされました。
・日本銀行の金融政策手段に関しては、その中心はオペレーションであり、オペ対象は国債の売買であること、その際に重要なのが日銀当座預金であることが紹介された。また、これまで教科書で登場してきた準備率操作、公定歩合操作が使われなくなったことも紹介されました。
・金融政策の波及経路に関しては、伝統的な段階的アプローチとされていた、中間目標を設定して単線的に考える考え方から、様々な要因、波及経路を含めて考える誘導型アプローチに変化してきていることが紹介されました。

・まとめとして、①の金融政策の効果に関しては、かつては効果があったが90年代以降の緩和政策の効果は疑問であること、②の金融政策の実施方法は、国債買い入れのオペレーションであること、③の何を操作の対象としているかは、コールレートとマネタリーベースが基本であること、金利と量のどちららが主になるかは変化すること、④の政策の波及経路に関しては、かつては企業投資が重視されていたけれど、様々な波及経路を総合的に考えていること、⑤の金融政策の副作用に関しては、財政ファイナンス、バブルやリスクの拡大の可能性があること、とまとめられました。

(3)討論と総括
・篠原講演、野間講演の後に、コメンテータとして塙枝里子先生(東京都立農業高等学校)と大塚雅之先生(大阪府立三国丘高等学校)の二人から、感想と質問があり、それぞれ回答がありました。また、会場からの質問や進行役からの質問などがあり、同じく回答がありました。
・最後に、講演者、コメンテータからのまとめの発言があり、終了しました。
教室の内容の詳細は、以下をご覧ください。
https://econ-edu.net/wp-content/uploads/2021/04/2021HaruKeizaiWebinarReport.pdf
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【 2 】定例部会のご案内・情報紹介
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<定例部会のお知らせです。(開催順)>
■東京部会(No.123)・大阪部会(No.74) 合同部会を開催します。
東京部会(No.123)と大阪部会(No.74)はオンライン会議にて行います。
日時:2021年4月24日(土) 15時00分~17時00分
申し込みは以下からお願いします。
 https://econ-edu.net/wp-content/uploads/2021/02/tokyo123flyer.pdf
■札幌部会(No.26)を開催します。
札幌部会(No.26)はオンライン会議にて行います。
日時:2021年6月12日(土) 15時00分~17時00分
 申し込みは以下からお願いします。
 https://econ-edu.net/wp-content/uploads/2021/02/Sapporo026flyer.pdf
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【 3 】授業のヒント 「評価に向き合えば、授業が変わる!」
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                 執筆者 千葉県立津田沼高等学校 杉田 孝之
(1)評価研究のきっかけは突然に
ついに私も定年まで残りあと数年となった。
そんな私が、定年までの課題を、評価と授業の質的研究とした。
きっかけは二点である。新学習指導要領で導入される三観点評価への対応を考えなければならない外的事情もあったが、残された時間の最後の最後まで、自らの授業を改善させ、生徒にとって学びがいがある時間を提供してゆきたいと思ったからである。そのためには私自身が評価に向き合う必要があると考えたのである。
もう一つは、ある学会のプロジェクトで、モデル授業を開発し、この授業の単元に関するルーブリックも作成せよとの課題を受け取ったことである。私は単元全体のルーブリックを作成したが、ルーブリックの書きぶりが今一歩はっきりせず、これではダメだ、もっときちんと評価と向き合わなければと思ったことである。
その過程で、参考文献に記した現在は富山県氷見市で活動されている吉田英文氏の研究との出会いと学び合いがあったことも大きい。

(2)学校現場は評価ばかりに時間をつぎ込めない
評価を自らの授業設計に導入し、授業改善の資とするために、まずは、学期に1回程度のルーブリックを作成することを目標とした。
毎回作成しないという目標を立てたのは理由がある。
現場は常に時間に追われており、評価研究ばかりでは他に影響が出る。例えば、読書や活字に向き合う時間の確保である。確保した時間での読書や、新聞を毎日眺めながら、生徒にとって学びがいがある授業設計をしなければならない。

 ルーブリック、パフォーマンス評価などの評価はあくまでも生徒の学習意欲を上げるための道具であり、その道具を使って授業改善がはかることが最大の目的だ。
教科教育の先進校である附属高ではなく、普通の公立高校で、平均的な教員ならば誰でもルーブリックを作成できるような環境が望ましいが、その環境作りは簡単なものではないからである。
つまり、評価研究ばかりに限られた研究時間をつぎ込まない姿勢が必要なのである。
結局、2020年度は、1学期に1回、2学期に2回、計3回(一年必修の「現代社会」の経済概念、働き方改革の単元、三年理系選択「現代社会」のいのちの授業の時間)のルーブリック作成にとどまったが、さしあたりは、それでも十分と考えている。

(3)ルーブリックづくりの難しさ
ルーブリックを作成して気づいた一番大きなことは、私自身がルーブリックの作法すら理解していなかったことが分かったということである。
大変お恥ずかしい話で恐縮だが、今まで高等学校の授業実践で評価を語ること、研究会で議論することにほとんど意義がないと考えていたつけが回ったのである。
 周知のことと思うが、ルーブリックとは、多様な生徒の作品を採点する指針、評価基準と定義される。
ルーブリックは、数段階の「尺度」とこの尺度に示された評点、標語に対応するパフォーマンスの特徴を示した「記述語」からなりたっている。
 新学習指導要領における三観点の評価でも、ルーブリックを作成する際、この記述語の設定が難しい。特に難しいのは、学びに向かう人間性の記述語である。
例えば、知識・技能では、十分満足とする「尺度」を測る記述語として「…を複数挙げ、説明している」等、量的にルーブリックの記述語を作成することは比較的簡単にできる。
思考・判断・表現についても、「…を活用して、複数の事例を挙げて、根拠を述べながら判断している」等、量的な記述語であれば、比較的簡単に記述できる。

しかしながら、量的評価ばかりでは、質的評価としての完成度はまだ低いと言わざるを得ない。学びに向かう人間性を評価するために、作品やパフォーマンスなどの特徴をいかした記述語はどうあるべきかの研究が欠かせないし、十分とは言えないからである。
さらに新学習指導要領の目的に合致させるためにも、評価用語である「多面的・多角的」の言葉の定義を、生徒に伝える必要もある。
ルーブリックを作成する過程で気づいたのだが、「現代社会」などで、「多角的」に関しては、異なる立場から分析させられるが、問題は「多面的」である。どのような「…面」を想定し、考えさせるのかが、意外にも難しかった。

(4)変化はまず学習指導面に現れた
ルーブリックを活用して実践する授業では、単元の最初にルーブリックを予め生徒に提示し、生徒にどのパフォーマンスに対し、ルーブリックを作成したのかを伝達する必要がある。
つまり、単元の終了後に、作品(レポート)を評価するので、それを予め理解した上で、単元全体の授業に参加しろと指導するのである。
ルーブリックを用いた評価は、単元全体の評価で活用しても問題ないが、作品や発表などのパフォーマンスの評価のみでもOKであり、むしろルーブリック初心者にはそれが望ましいのではなかろうか。 
 
(5)レポートの量と質が変わる
 ルーブリックを作成することで、私自身が評価規準(学習目標)、学習内容の設定、この2点をうまくストーリー立てて指導するための総括(成果と課題)がしやすくなったと実感している。
それを反映して、生徒も、いわば学習目標を忖度しながらレポートを書くので、レポートの量が格段に増えた。
なかでも、経済概念を活用して自らの生活が変化した、視野を広げられた等とコメントし、具体的な変化をも記述する生徒が、昨年度のルーブリックを作成せずに求めた同単元のレポートより格段に増えたのである。
つまり、生徒も評価規準(目標)と評価基準(スケール=尺度)がはっきりして、予め評価が提示されるので、学習内容と向き合いやすかったので、量と質の面での、この成果がえられたのではと考えられる。

(6)量から質への課題
 これだけだとサクセスストーリーで「授業が変わった、生徒も変わった」であるが、ルーブリックでの評価には危険性も伴うと考えている。
 第1に、過度にルーブリックに対し生徒を忖度させると、特に学びの主体である生徒の自由な学びが、ルーブリックの範囲内でしか、身につかない可能性がある。
第2に、評価の三観点の「学びに向かう人間性」などは、まさに授業者に対し、過度に忖度する主体性を育むリスクを持っているのではないかと危惧する面もある。
第3に、作品やパフォーマンス評価にしろ、生徒を評価する営みは、推薦入試などの評定を通して、生徒の将来に直接影響を与える影響がないとは言えない。

これらの危惧にもかかわらず、先にも触れたが、むしろ評価する側である私自身が、評価基準/規準の設定や問いの設定など、評価と向き合い、ルーブリックを作成したことによって、さらに授業が改善しつつあることを実感していることは事実である。
普通の公立高校でもルーブリック作成が日常化し、学習目標や学習内容、評価基準の量的、質的な記述語が提示されれば、生徒から授業者側が想定しなかった新たな「問い」や質の高い学びが生まれる可能性も考えられる。
そのためにも、これからもルーブリックを作成し記述語の完成度をさらに高め、生徒一人ひとりの学びに目が行き届く、授業改善を追求してゆきたいと考えている。

 参考:吉田英文(2009)「社会科におけるパフォーマンス評価と形成的支援-ルーブリック作成過程の分析を中心に-」日本社会科教育学会第59回全国研究大会発表資料
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【 4 】授業に役立つ本 
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 今月は、最近出版された経済関係の本を二冊(三冊)紹介します。
■幸田博人、川北英隆編著『金融リテラシー入門』(基礎編・応用編)金融財政事情研究会
①どんな本か
・2019年に京都大学経済学部で開講された「金融リテラシー」という講義(半期14回)の内容をまとめた本です。
・京都大学で「金融リテラシー」の講義が行われたのははじめてのこととのことであり、この講義には250人を超える学生の履修登録があったとのことです。
・この本では、基礎編がそのうちの前半、応用編で後半が扱われています。
・この講義は、オムニバス方式で、編著者である京都大学経営管理大学院の教授である幸田氏と川北氏以外に、金融庁、金融広報中央委員会、東京証券取引所(経済教室でお世話になっている増田剛氏が担当されています)、野村資本市場研究所、年金積立金管理運用独立行政法人など多くの関係者が一コマずつ講義をしていて、それがまとめられています。

②役立つところ
・金融に関しては、新学習指導要領では、中学公民で「経済活動を支える金融などのはたらき」を扱うことになっています。高校「公共」では「金融を通した経済活動の活発化」、「政治・経済」では「金融に関する技術変革と企業経営に関する金融の役割」にそれぞれ触れることが指示されています。社会科公民科では、パブリックファイナンス、コーポレイトファイナンスを主に扱えということです。
・本書で取り上げられているのは、個人の資産形成や運用、金融商品に関する知識で、それは主にパーソナルファイナンス領域に区分される部分であり、新学習指導要領では家庭科で「経済計画」「金融商品・資産形成」として扱われることになっています。その意味では、私たちの経済教育に直接関連する部分はあまり多くないかも知れません。
・とはいえ、金融リテラシーの教育は、公民科でも必要であり、直接授業で使わなくとも私たちが知っておいて良い内容と考えられます。
・オムニバス講義なので、各関係者がどのようにそれぞれの問題を大学生向けに語ろうとしているのか、そのレベルや範囲を知っておくことが大事かと思われます。

③感想
・この本のおもしろかった箇所は、講義本体の部分以上に、基礎編、応用編のそれぞれの巻頭に書かれているコラム部分でした。基礎編で8名、応用編で8名、計16名のエッセイは、正直、玉石混交だと思いました。これは紹介者の感想にすぎないので、皆さんは、それぞれの書き手がどのような立場で、語っているのか、それを吟味して、評価することをオススメします。
・コラムのなかで紹介者が感心したのは、日経新聞の論説委員の藤田氏の「米国の金融リテラシーから考える日本」と、野村総研の吉永氏の「日本人の金融リテラシー問題の本質」という二つのエッセイです。特に、後者での、「日本人の自虐的な金融リテラシー観…が、米国との比較において語られるのを聞くたびに、根拠のない都市伝説と同じものではないか」という箇所は、もっとその部分を展開してほしいと思ってしまいました。
・この本、二冊購入するとそれなりの投資になります。地域の図書館などで読んで、必要と思われたら購入されるのが、金融リテラシーの応用になるかもしれません。(新井)

■徳田賢二『値段がわかれば社会がわかる』ちくまプリマー新書
①どんな本か
・著者がねらいで書いているように「経済学入門と銘うった本のなかではじめてと言ってもいい『値段を軸に動く社会のしくみ』という視点を重視した経済学の本」です。
・対象は高校生ですが、「身近な消費生活を中心に」経済を学ぶ中学生の方が対象としてふさわしいかもしれません。
・著者は、金融機関に勤めた後大学で長く教鞭をとってきた人です。本書は、大学の附属高校の先生や生徒に原稿段階でチェックをうけているので、その意味ではわかりやすく書かれた経済の入門書になっています。
・内容は次のようになっています。章の名前は本の通りではありません。
 第1章 消費者にとっての値段の意義、役割(購入の出発としての値段)
 第2章 市場メカニズムを学ぶ(需給曲線の意味)
 第3章 生産費用と価格(生産者にとっての費用)
 第4章 値段が瞬時に決まるしくみ(市場の実際、オークションのしくみ)
 第5章 小売店が決める値段の戦略(マーケッティング、ゲーム理論)
 第6章 消費者にとっての値段(効用、行動経済学)
 おまけの章
・つまり、生産→出荷→市場→小売店→消費者、という流れで構成されている本です。

②役立つところ
・第4章までは、教科書でも触れられている部分が多いのですが、第5章、第6章の箇所が新しい経済学を踏まえた商品の価格に関連する箇所です。ここを使って、授業が展開できるでしょう。
・経済学と銘をうっていますが、経営学、マーケティング、心理学、データ分析、AIまで登場するので、幅広く経済の仕組みを値段という窓口から学ぶ事ができる本です。
・中学教科書で登場する、お店の経営者になってみようという学習活動を行うときに、価格を決めたり、販売方法を工夫したりする場合の根拠となる理論が紹介されています。そんな、生徒のアクティビティの指導に役立つ本になるでしょう。

③感想
・この本の第2章の価格メカニズムの説明は、紹介者からみて納得ゆくものではありませんでした。需給曲線の説明、均衡価格の説明ですが、高校や中学の教科書の説明の問題点をそのまま踏襲したものになっていると感じます。
・春の経済教室の篠原先生の講義を踏まえると、ここは、現実を理解するための手がかりになる説明が不足、もしくは不十分ではないかと思われます。他の部分が、わかりやすく、かつ現代の理論も踏まえて書かれているので、もったいないと思いました。
・授業で活用するだけでなく、ネットワークが目指そうとしている経済教育と比較対照する本として手に取ってみるとよい本かと思います。(新井)、
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【 5 】編集後記「みみずのたはこと」
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 4月から、また中学生を教えることになります。昨年「先生暇なんでしょ?」という言葉に乗って、「70歳、中学生に経済を教える」ことになりました。それがもう一年延長です。
某先生曰く「定年退職サギ」。何回目かの「サギ」がまた加わります。でも、どんな出会いがあるのでしょうか。ちょっと不安で楽しみな春です。(新井)
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