reader reader先生

3月、弥生。
年度末で、学校は総括の時期です。総括といえば卒業式。昨年は、コロナによる一斉休校で中止になったり、変則的なかたちでの行事を強いられたりしましたが、今年は従来通りの出発の式(commencement)ができることを期待したいものです。
そんな今月も、ネットワークの活動報告と授業に役立つ情報をお伝えします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【今月の内容】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【 1 】最新活動報告
 企画中のイベントや21年1月末から2月の活動を報告します。
【 2 】定例部会のご案内・情報紹介
 部会の案内、関連団体の活動、ネットワークに関連する情報などを紹介します。
【 3 】授業のヒント…小学校の教室から中高の教室へのメッセージ
【 4 】授業で役立つ本…特集「私が薦める三冊」その2
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【 1 】イベントの案内と最新活動報告
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■「先生のための春休み経済教室」を開催します。(再掲)
 テーマ:「教科書と現実のギャップを埋める-教科書がカバーできていない最新の情報化・金融の動きをどう理解するか-」
 日時:2021年3月28日(土)
 場所:Web会議システム上
 内容:篠原総一経済教育ネットワーク代表の講演「現代経済における新しい動向と教科書記述をどう埋めるか」
野間敏克同志社大学教授による講演「金融に関する教科書記述と現実のギャップ」
の二つの講演と、参加者による質疑・討論を予定しています。
 内容の詳細と申し込みは以下からお願いします。
 https://econ-edu.net/wp-content/uploads/2021/01/2021.3HarukeizaiWebinar.pdf

■「先生のための夏休み経済教室」を開催します。
 テーマ:「ポスト・コロナの経済教育のすすめ方」
 日時:2021年8月14日(金)中学校向け、8月17日(月)高等学校向け
 場所:東京証券取引所からWebによるライブ配信
 内容:中学校向け、高等学校向けにそれぞれ、講演、講義、実践提案を行います。内容の詳細が決まり次第HP等に案内いたします。

■札幌部会(第25回)を開催しました。
日時:2021年1月30日(土) 15時00分~17時00分
場所:Web会議システム上
内容の概略:参加者17名
(1)川瀬雅之先生(札幌市立北翔養護学校)から、北海道の空港民営化を巡る「『投資計画』教材開発の取組み④」として、これまでのゲーミングではなく、課題研究型に組み替えた授業プランの構想が示されました。
 授業内容の詳細や評価方法は次回提案するとのことです。

(2)大学入学共通テストの分析報告が新井(目白大学非常勤)から行われました。報告の詳細については、2月のメルマガ「授業のヒント」(http://test.belle-music.site/2021/01/31/3242/)に掲載されていますので、それを参照してください。

(3)志田光瑞先生(札幌市立清田高等学校)から、「北海道における高等学校公民科「公共」に関するアンケート調査報告」がありました。
北海道の各高校への、「公共」の設置状況と今後の課題を学科別、学級数別に問うたアンケート調査に基づく報告です。
「公共」と「地理総合」の内容のかぶりをどうするか、2単位なのに内容過多ではないか、中学校で先取りできる部分があるかなど、高校と中学の視点から意見交換が行われました。

(4)鈴木深氏、岡部ちはる氏(東京証券取引所)から、2021年度の夏休み経済教室および、2020年末の冬休み経済セミナー(オンライン開催)の結果が報告されました。
 部会内容の詳細は以下をご覧ください。
 https://econ-edu.net/wp-content/uploads/2021/02/Sapporo025report.pdf

■大阪部会(第73)回・東京部会(第122回)合同部会を開催しました。
日時: 2021年2月20日(土)15時00分~17時00分
場所: Web会議システム上
内容の概略:参加者29名
(1)夏の経済教室に関する報告が、鈴木深氏、岡部ちはる氏(東京証券取引所)からありました。
岡部氏からは「冬の経済セミナー」の報告が、鈴木氏からは、「夏休み先生のための経済教室」に関しての概容と日程候補の説明があり、今後共同して内容の詳細をつめてゆくことになりました。

(2)丹松美代志先生(大阪学びの会代表)から「評価について」の報告がありました。
国立教育政策研究所の資料をもとにした報告で、新学習指導要領で求められている「学びに向かう力、人間性等」の評価に関する取組み方が提起されました。
評価に関しては複雑化しても、形式化しても問題であり、現場でできるような評価をどのように工夫するか、それがカリキュラムマネジメントと並んでの課題であるとの提起のあと、評価に関するすぐれた実践例として、咲くやこの花中学の川村先生の実践が紹介されました。
検討では、大学入試との関係、高校での評価と取組むなかで授業が変わったとの報告や中学校での事例などが紹介されました。

(3)河原和之先生(立命館大学等)から、「中学生に経済概念を教えるワークシート」の報告がおこなわれました。
テーマは、①機会費用(エクスプレスチケット) ②市場、価格(エベレストの入山料金) ③競争(競争はいけないか) ④貨幣(自作マネーはだれも受取らない) ⑤公共財、財政(110番に電話したら) の五つです。
いずれも、導入で取組みやすいネタ、クイズ、ロールプレイなどを入れ、応用では概念を整理してそれが生活の中でどう生きているかを探らせ、活用として社会問題に挑戦させるというスタイルで構成されています。
検討では、取り上げられている事例に関して、経済学者からのアドバイス、チェックを受けると良いとの示唆がありました。

(4)大塚雅之先生(大阪府立三国丘高等学校)より「課題解決策を考えさせる2つの授業実践」 の報告がありました。
① 金融に関する実践は、新科目「公共」を視野にいれたパ ーソナルファイナンスに関する事例で、高校3年生「政治・経済」の最後の授業が紹介されました。
この実践は、メルマガ1月号に掲載された篠原代表の論考https://econ-edu.net/wp-content/uploads/2021/01/2021.01Prof.ShinoharaHint.pdf とそのなかに紹介されている大竹文雄先生のエッセイを活用したものです。

②プライバシー権と経済の授業は、高校2年生「現代社会」、新しい人権の箇所の実践で、1次でプライバシーに関する教科書の記述の確認、2次で各国のプライバシー政策、3次でプライバシーVS利便性を考えるという構成の実践です。
3次は、大手IT企業のサービス利用のメリットとデメリットの考察から、プライバシーの保護と情報活用による利便性の両立の難しさを理解し、そのうえで、課題について解決策を議論、考察、構想させる、という構成の授業です。

質疑、討論は、②のプライバシー問題に関して、生徒の現状の報告などがありました。また、篠原代表からは、教科書の記述は現代の課題につながっていない部分が多く、情報で言えば、AIと情報が集中した時にどんなメリットとデメリットがあるかエコノミストが整理して、見取り図を作るようなことができれば現場の先生は教えやすくなるはずで、それがネットワークの役割になるのではという示唆がありました。
部会内容の詳細は以下をご覧ください。
https://econ-edu.net/wp-content/uploads/2021/02/tokyo122Osaka73report.pdf
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【 2 】定例部会のご案内・情報紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
<定例部会のお知らせです。(開催順)>
■東京部会(No.123)・大阪部会(No.74) 合同部会を開催します。
東京部会(No.123)と大阪部会(No.74)はオンライン会議にて行います。
日時:2021年4月17日(土) 15時00分~17時00分
申し込みは以下からお願いします。
 https://econ-edu.net/wp-content/uploads/2021/02/tokyo123flyer.pdf

■札幌部会(No.26)を開催します。
札幌部会(No.26)はオンライン会議にて行います。
日時:2021年6月12日(土) 15時00分~17時00分
申し込みは以下からお願いします。
 https://econ-edu.net/wp-content/uploads/2021/02/Sapporo026flyer.pdf
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【 3 】授業のヒント 「小学校の教室から中高の教室へのメッセージ」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
         執筆者      大阪市立東三国小学校 安野 雄一
(1)はじめに
 初任校は私立の中高一貫校、その後は大阪市立中学校、大阪市立小学校へと流れつき、大阪教育大学附属平野小学校での勤務を経て、現在に至ります。
小・中・高の学校種、国・公・私立の学校を経験してきて、各学校種で授業づくりなどについて、「ここはちがう」ということは多少ありました。
そのほとんどは当然のことながら、子どもたちの発達段階によるものだと考えられます。しかし、「ここは不易だ」と感じる部分も多くありました。
今回は、どの学校種でも共通して言える、日々の授業づくりなどで「できそうなこと」についてご紹介させていただきたいと思います。

(2)出口を見据えて,未来の子どもの姿を思い描く
「未来、子どもたちがどのような人になってほしいか」「どんな力をつけていってほしいか」。そこを思い描くところからが授業づくりのスタートです。未来と一口に言っても、想定するスパンによって、その一時間の授業の位置づけは変わってくると思われます。それぞれのスパンで、子どもたちがどのような力をつけていたらよいかということを思い描くことが大事です。
私自身は「様々な状況下において、価値判断・意思決定したことをもとに、よりよい未来を切り拓いていく力」を、目の前にいる子どもたちに身に付けてもらえたらと思い、日々の授業づくりをしています。
これは、中学校や高等学校に勤務していた時も土台としてもっていました。
その中で、小学校と中学校・高等学校との大きな違いは、「出口への責任」という部分が大きいと考えられます。「入試」です。次の学校種への進学に向けて、子どもたちが乗り越えていかなければならない試練です。
最近の「入試」の傾向を捉えてみると、「知識・技能」に重きが置かれていたところから、世の流れは「思考力・判断力・表現力」をどう評価するかというところにシフトしていっているように感じられます。以前は「記述式だけれども、これは知識・技能の力を測っているよね」という問題が多かったのですが、ここからの脱却が図られているのだと思います。
身に付けた「知識・技能」を使って、どのように「思考・判断・表現」するのか、その力をどのように身に付けられるような授業づくりをしていくのかということが重要だと考えられます。

(3)単元を単位に考え、各分野の関連をこころにとめる
 一つ一つの単元の内容について、計画カリキュラムを立てる段階で、学習指導要領や教科書などをもとに、子どもたちが習得しておくべき見方・考え方、学習内容の詳細について整理し、大枠を捉えておくとよいとでしょう。
その上で、単元を貫いて価値判断・意思決定していくように単元を設計すると、徐々に多面的・多角的に俯瞰して対象を見つめ、自分なりに価値判断・意思決定をしていく素地の育成に繋がるものと考えられます。
様々な見方・考え方、学習内容を習得しながら単元学習を進めていき、単元末で、様々な視点、面から対象を俯瞰して見つめ直し、価値判断し、よりよい未来を創っていくためにどうしていくべきかと、思考を進めていくようにします。
これは、単元末までに習得してきた「知識・技能」をもとに、「思考・判断・表現」する学びへと繋げていく単元設計をベースにしていくとよいのではないかという提案です。
また、これは、中学校や高等学校で教鞭をとられている先生方や生徒にとっても気になる所である、「入試」の変容にも対応できる内容ではないかと考えられます。
 ここまでは、各単元の設計について述べてきました。その社会科学習における各単元での学びは、よくよく考えてみるとほぼ必ず「政治的分野」・「経済的分野」の事象との関係が認められると言えるでしょう。
歴史的分野の学習では、物々交換をしていた時代から、貨幣に代わるものが生まれ、貨幣が生みだされ使われるようになってきたそのこと自体が「経済的分野」と関連があります。政治でも、その時々の地域や国全体の状況を踏まえて、様々な経済に関する政策が行われています。
地理的分野の学習でも、農業や工業などの生産活動やその流通、国や地域の財政、情報など、「経済的分野」と深いつながりのある学習内容が目白押しです。
そのことを意識しながら、その政策や諸活動の一つ一つの社会全体における「価値」にまで思考を巡らせていき、単元末で総合的に俯瞰して価値判断・意思決定するようにしていけば、自分なりの見方・考え方、思考を組み上げていく経験を積むことができるでしょう。
単元を貫いて価値判断し続ける項目の設定が困難な場合は、その一時間で取り扱う事象について、単発で価値判断するだけでも十分だと思います。

(4)アクティブな思考を育てる評価と情報収集の方法
 子どもたちがどのようなことに興味をもっているのか、また、どんな学び方をしたいのかを捉えるために、「ふりかえりシート」などへの記述や対話による評価を有効に使うとよいと考えます。
これにより、「学びの必然性」に寄り添った形に、計画カリキュラムを修正しながら、単元の学習を進めていくようにすると、子どもたちの思考はよりアクティブになると考えられます。
その際、時事ネタの提示が重要になるケースが多くあります。状況に応じた資料の提示をするためには、日ごろからの教材研究がかなり重要になってきます。
 小学校に勤務する私自身は、日々届く新聞や雑誌をスキャンしてデータとして取り込み、PCで「地域経済」「財政」「国際情勢」「工業」「農業」「流通」「情報」などのキーワード別のフォルダに分けて整理し、保存しています。ですので、子どもたちのニーズに合った資料を選択し、提示しながら学びを進めていくことができます。
これは中学校や高等学校に勤務されてらっしゃる先生方も使えるかと思います。
これらの時事ネタは、中高の先生方にとって大きな「入試」対策にもなるのではないでしょうか。「時事問題をもとに、価値判断・意思決定をし、未来に向けて大切なことを考える」… 社会科学習にとって、とても重要なことであると考えます。

(5)さいごに
 小学校・中学校・高等学校の各学校種で勤務してきましたが、どの学校種においても、「未来を創っていく子どもたちを育んでいく」という土台は変わらないと思います。子どもたちが未来を切り拓いていく際に、「経済的分野」について知り、思考することは、切っても切り離せないものだと言い切れます。
「経済的分野」を意識しながら、一時間一時間の社会科学習の中で見方・考え方の枠を広げつつ価値判断し続け、最終的に対象を俯瞰して全体像を捉えなおして価値判断する。そして、よりよい未来について思考を進めていく。
社会科の授業づくりの在り方の一つとして提案をさせていただきましたが、みなさんはどのようにお考えでしょうか。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【 4 】授業に役立つ本 「私の薦める3冊」その2
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 今月号の役立つ本では、2月に引き続き、これまで授業のヒントに寄稿された先生方から、授業づくりに役だった本を推薦していただきました。題して「私の薦める3冊」その2。敬称略。到着順です。

■行壽 浩司 (福井県美浜町立美浜中学校)
①佐藤雅彦他 『行動経済学まんが ヘンテコノミクス』(マガジンハウス)
行動経済学を漫画で学べる一冊。中学生の朝読書の時間によく借りられて読まれています。大人が読んでも「なるほど!」と思えるような内容となっており、身近な事例から行動経済学が学べます。本書で取り上げられている菊池寛の「形」の事例などは国語の教材にもなっており、それを行動経済学の視点から解釈し直しています。

②マイケル・サンデル 『それをお金で買いますか』(早川書房)
「ハーバード白熱教室」で有名なマイケル・サンデルの一冊。「ハーバード白熱教室」同様に、身近な事例を用いながら、行き過ぎた市場主義がもたらす弊害について考えるきっかけを与えてくれます。授業の合間に考える時間を設定する際に使える「ネタ」が多い。

③アマンダ・リプリー 『世界教育戦争』(中央公論新社)
PISAの調査結果を皮切りに、思考力のスコアが高い国の学校教育、低い国の学校教育を調査、記述している一冊。内容も生徒たちの学校教育の様子をナラティブ(物語的)に語っており、次々と読み進めることができます。福井県の初任者研修の必読文献となっています。詰め込み教育の是非などについて考えるきっかけとなり、このような本をもっと読んでみたい、と感じた一冊。

■下村 和平 (京都府立山城高等学校)
①林 敏彦 『需要と供給の世界』(改訂版)(日本評論社)
価格機構を教える際のネタに私はこの本をよく使っています。例えば、「空気はなぜタダなのか?」「旅行会社はなぜ月旅行を商品として販売しないのか」「混雑税」など。以前の共通一次の過去問に対する林先生のコメントも興味深い。ミクロに関する単元を政経で話すのに参考になる名著だと思います。

②西村 理 『経済学入門』(放送大学教育振興会)
経済教育ネットワークでお世話になっている西村先生が書かれた本。本書は先生が「まえがき」に述べられているように、「経済学のエッセンスをやさしく伝えるように具体的なたとえ話を用いて」書かれています。勿論難しい部分もありますが、手元に置いておきたい一冊です。

③佐伯啓思 『現代文明論講義』(ちくま新書)
佐伯啓思氏による京大での講義をベースにした本。かつて「ハーバード白熱教室」というNHK番組があったが、佐伯氏は、その京大版をやろうとしたようです。様々な学部、1年生対象の90分講義。テーマは現代の世界、とりわけ日本を覆う「ニヒリズム」。時事問題を題材にして学生と教員とが討論する。高校生にはやや高度な内容だが、「探究」の授業の参考になろう。こんな授業ができれば、答をすぐに求めがちな生徒に「考えるトレーニング」になると思う。

■大塚 雅之(大阪府立三国高等学校)
①浦部はいむ 『高校生を、もう一度』(イースト・プレス)
定時制高校を舞台としたマンガです。作者は大阪の定時制高校出身者であり、経験者にしか描けないストーリーばかりです。子どもに中卒であることを批判された母親が学びなおしを決めて通学するストーリーなど泣ける要素も多くあります。どんな困難な状況に置かれた人にとっても、学校は学びを提供するところであり続けるべきと思わせてくれる作品です。

②NHKスペシャル取材班 『やばいデジタル』(講談社現代新書) 
昨年のNHKスペシャル「デジタルVSリアル」のうち第1回「フェイクに奪われる私」
第2回「さよならプライバシー」をまとめたものです。私たちの検索履歴などの個人情報はわずか2.7GBであり、それらの個人情報を分析すればどんな人物かといった内容だけでなく、将来どのような行動をとるかまで当てられてしまうとというショッキングな内容がたくさん含まれています。改めて、利便性と民主主義・プライバシーの保護の両立は難しいのだなと思わせてくれる本です。

③木庭 顕 『誰のために法は生まれた』(朝日出版社)
最近、後輩の先生に紹介してもらって読んだ本です。元東大教授の著者が高校生相手に「近松物語」などの古典を鑑賞させた後に法は誰のためにあるかを考えさせるものです。高校生相手の対話形式で読みやすいけれど、内容自体は難しい。「法とはグルになった集団を解体して、追い詰められたたった一人を守るもの」「見捨てられた一人のためにのみ、連帯(政治・デモクラシー)は成り立つ」といった記述が印象的です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【 5 】編集後記「みみずのたはこと」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 特集のオススメの本。推薦本のなかで未読の本が何冊かあり、早速手にしました。イモヅル式読書法です。さらにそのなかの一冊をもとにネットワークメンバーを中心とした読書会に参加するなど、知のつながりが広がりました。
鷗外は、自らを「雑駁なるヂレッタンチスム」と自己批判した文章を残していますが(『澁江抽斎』)、それでもいいじゃないか、それこそがネットワークではないだろうかと思う日々です。(新井)

Email Marketing Powered by MailPoet