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四年に一度の世界注目のイベント、アメリカ大統領選挙が目前です。政治面だけ
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国内では、GO TOキャンペーンによって、すこしずつ人の移動がはじまりました
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が、まだコロナとの共存がどのようになるか予断をゆるしません。
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これまで政治は政治、経済は経済と区別されて教えられてきましたが、選挙も
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コロナも政治経済の両観点から捉える必要を感じる昨今です。
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そんな今月も、ネットワークの活動報告と授業に役立つ情報をお伝えします。
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部会の案内、関連団体の活動、ネットワークに関連する情報などを紹介します。
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【 3 】授業のヒント 「雑談こそいのち ある日の授業から」
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【 4 】授業で役立つ本…『入門・日本経済(第6版)』
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■小巻泰之先生(大阪経済大学)の「Social Distancingの効果:経済面への影響」
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日時:2020年10月3日(土) 15時00分~17時00分
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(1)小巻泰之先生(大阪経済大学)から「Social Distancingの効果:経済面への影響」
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・都市のロックダウン、学校の閉鎖、マスク着用の強制などのNPI(公衆衛生対策)
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がどの程度有効で、経済にどんな影響を与えたのかを検証しようとした研究論文の
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・内容は、現状と課題の整理、先行研究の紹介から始ま り、1918年スペイン風邪との
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比較をした後、Social Distance などNPIの影響をみるためのデータ分析に進み、最後
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に今後の経済の行方についても触れられるというものです。
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・参加者からの質問の後、篠原代表からはこのような分析をいかに教室での授業に活か
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せるかという問題提起があり、河原和之先生(立命館大学他)から略年表の活用など
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(2)安野雄一先生(大阪市立東三国小学校)から「価値判断・意思決定力を育む社会科 ×
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総合学習~まちで 働く人々と経済を結びつけて考える一方略~」と題する実践報告が
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・総合学習の時間を使った22回にわたる授業で、地元商店街のパン屋さんとケーキ屋
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さんの協力を得て、生徒達が商品開発をする過程を通じて学習を深めていく構成です。
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・特に、①現状把握・情報整理、②想像・思考、③創造、④評価をスパイラル的に繰り
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返すことで、生徒達の価値判断・意思決定のレベルの向上が目指されていることが
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特徴で、毎回のポートフォリオ評価だけでなく、他者評価も加えることで、様々な
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・参加者からはこの実践に対する高い評価が示された後、授業の進め方や教材の選定
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(3)李洪俊先生(大阪市立大和川中学校)から、先生がここ数年間継続されている全国
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・2020年度については、学習指導要領の「学びに向かう力・人間性等」に注目し、それ
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を授業でどう養うのか、それをどう評価するのかという問題意識から入試問題が分析
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されて、内容の紹介と李先生のコメントが報告されました。
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・かなり高いレベルの問題が出題されていて、それを授業改善にどう使えるのか、現場
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・丹松美代志先生(大阪学びの会代表)からも報告資料が提出されていましたが、次回
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・最後に、中沖栄氏(清水書院)から「証券普及プロジェクトの学校向け教材~体験し
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て学ぼう!金融・経済・起業~」の紹介と、協力依頼がありました。
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日時:2020年10月24日(土) 15時00分~17時00分
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場所:慶應義塾大学三田キャンパス西校舎512教室+Web会議システム上
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(1)新井から、これまでの札幌部会、大阪部会の内容報告が行われました。
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(2)以下の先生方による授業提案と実践報告が行われました。
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①塙枝里子先生(都立農業高等学校)による「コロナの経済学」の授業プランの報告
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・これは、篠原代表による4月の「エコノミストの走り書き」メモと、9月に農業高校
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で行われた加藤一誠先生(慶應義塾大学)による「アフターコロナで経済はどう変
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わるか」の講義をベースにした、「コロナの経済学」の二次にわたる授業提案です。
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・加藤先生の講義は、前半で、コロナ禍での新しい生活様式のなかでのインバウンド
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に焦点をあて、その経済的効果、政府の緊急事態宣言による影響の説明があり、
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後半で、今後の生活の変化と経済の変化の予想に触れた内容であったことが紹介さ
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・これを踏まえて、授業案の第一次では、コロナ前とコロナ後のインバウンド消費に
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着目して、国民経済の大きさと経済成長を理解するという授業プランが、また、
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第二次では、コロナ禍と今後の政府の経済政策について、効率と公正の見方・考え
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方から考察する授業プランの素案が紹介され、検討が行われました。
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・検討では、多様な問題が登場しているので、論点を整理して、さらに授業案として
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②金子幹夫先生(神奈川県立三浦初声高等学校)の「秋からの経済学習前夜の迷い」
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・報告された「世論と政治参加」の授業は、米の減反を巡る新聞社説を6つのパートに
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切り分け、その順番を当てさせ、その上でその記事が教科書のどこに書かれている
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・農業科の生徒に「食」の問題を通して、考え方の練習として新聞を読むという体験を
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させたかったこと、これから経済の授業で扱う比較優位に関して、農業を続けようと
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する生徒からの疑問にいかにこたえたら良いかを考えたかったという授業のねらいも
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・検討では、単元との関連や、並べ替えを指導するコツはなどの疑問や質問が出され、
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・また、比較優位の教え方に関しては、教科書では完全特化の数値例モデルが扱われ
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ているが、条件を緩めれば不完全特化も成立するので、生徒の疑問にも答えられると
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③新井(筑波大学附属中学校非常勤)から「70歳、中学生に経済を教える」の続編の
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・教科書の文章の正誤判定問題、需給曲線のシフト問題、景気変動に関するグラフの
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読み取り、10万円の給付金の使い道と原資、その経済的効果の意見表明の四つの定期
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試験の問題の紹介と、テスト結果の分析が紹介されました。
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①中沖栄氏(清水書院)から、新教材『金融クエスト』(証券知識普及プロジェクト)
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の内容紹介と教材への意見、パイロット授業の要請がありました。
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②新井から、新教材「金融・情報リテラシー教育」のなかの「信用ってなんだろう?」
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・これは、LINEみらい財団と金融リテラシー教育研究会および静岡大学教育学部が
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開発した教材で、ネットワークメンバーが協力していることもあり今回の紹介と
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・はじめての二元方式の部会で、久しぶりにFace to faceで議論できる対面での会議
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http://test.belle-music.site/wp-content/uploads/2020/11/tokyo120report.pdf
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日時:2020年11月14日(土) 15時00分~17時00分
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日時:2020年12月5日(土) 15時00分~17時00分
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日時:2020年12月5日(土) 15時00分~17時00分
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■新教材「金融情報リテラシー教育」(LINEみらい財団・金融リテラシー教育研究会・
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・金融リテラシー教育研究会にネットワークメンバーが協力しています。
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・下記の発表ページにある教材(基礎編、応用編)をダウンロードして使うことが
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【 3 】授業のヒント 「雑談こそいのち ある日の授業から」
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9月の某日、某高校の3年「政治・経済」の授業。単元は財政。
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高校3年9月は指定校推薦の校内選考がとりあえず終了。AO入試や国公立の小論文
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入試が必要と意識し出す生徒は、同時に面接対策も意識し出す頃。
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共通テストでグラフが出るらしいとの噂に恐れている生徒、今年はコロナ関連の問題
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がでるのではと勝手に不安がっている生徒も教室にちらほら。
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一方で、政経を受験に必要としない生徒は「もう関係ないよ」とばかり内職が多くなる
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時期。教員にとっては授業がしにくくなる魔の時期のはじまりである。
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筆者は、普段は黒板の板書と聴覚障害を持つ生徒への要約筆記(聴覚障害を持つ生徒
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へのポイントの板書)をしながら、教科書を使うオーソドックスな授業を行っている。
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ところが、今回は初めてパワーポイントで3種類のグラフを投影して、そこに線を引い
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たり、質問をしたりしながら、ICT教育らしき授業をやったこともあり、なんと生徒は
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ただし、わかったのは、パワポで示す資料は1時間では3~4枚が限界。これ以上
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資料を示しても、生徒は自分の世界(睡眠の世界)に入っていくだけ。また、要点を
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必ずメモさせることが大切だということ。そうでないと、聞くだけになり、「電動紙芝居」
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になってしまう。これってICT教育の弱いところだ。
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この授業で生徒に示したグラフ資料は、「令和2年度一般会計」の当初予算と第二次
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補正予算の歳出と歳入を円グラフで示したものと、「国債の発行額と一般会計額の推移(1975年~2020年)の三つである。これらのグラフから、読み取れることを答えさせ
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教員は、生徒はグラフを読むのが苦手なので、その練習をしながら財政を一気に終えよ
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うとして強引に授業をはじめる。全国どこにでもある授業風景である。
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生徒に投げた最初の問いは、「令和2年度の当初一般会計と二次補正を比較しながら、
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相違点を5つ見つけなさい。政経で受ける予定の人は8つくらい見付けてね。皆さんが
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知っている知識を総動員してくださいね」というもの。
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グラフを「読み取く」なかで、一般会計総額が約102兆円から160兆円に拡大(約6割
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そこで、「プライマリーバランス赤字」を説明したりするうちに、2次補正の歳出の項目
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に「コロナ関連対策予備費」として7.2%が計上されていることに気づく生徒も出てきた。
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「よいとこに気が付いたな」と思い、そこから、教員のちょっと横道にそれた雑談が
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私:アベノマスクはみんな2枚ももらいましたが、メディアの報道を見る限り、あまり
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評価が高くありませんでしたね。でも、もし、あのマスクをユニクロの AIRism
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でもらったら、国民は喜んだんじゃないかな。」(数名の生徒にやにや…)
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私:「でも、なんでユニクロ?安倍さん、ユニクロと何かあるの?などと変なことを
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疑われてしまったりして、叩かれるかもしれませんね。じゃあ、こんな方法はどうで
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私:「首相が、『皆さん、国内にマスクが不足しています。マスクは感染予防に効果
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的だと言われていますので、国民にマスクを政府が配布したいのです。涼しく良い
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マスクをできるだけ早く、安価に誰か生産してもらえませんでしょうか?政府が国民
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に今回配るので買いますよ!』『費用は国民の皆さんには申しわけありませんが、赤字
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国債を発行させてもらいますので、ご理解ください』ってね。こう言ったら国民の反応
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私:「だって、マスクが不足した4月や5月頃、皆さんも自分で作ったでしょ。僕も
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作りましたよ。そのうち、作り方を示す人がサイトを作ったり、いろんな業種が作った
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りしたじゃないですか。京都市内でも、和装業界が着物を作る「絹の余り」で作って配布
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してくれた会社だってあったじゃないですか。はじめは、ボランティアのようなかたち
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で したが、そのうち、様々な業種がマスクを作り出しましたよね。」(生徒うなずく)
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私:「そのうち、国民の側(需要者)から『形が良いマスクがほしい』『涼しいものが
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ほしい』『カラフルな色がほしい』など要求が出てきて、各企業がマスク産業に参入
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しましたね。つくれないなと思った企業はそこから撤退し、良いものが市場に残りつつ
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ありますよね。これって、資本主義の基本的な競争原理じゃないですか?」
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私:「また、消費者が求める商品を企業がそれに求めて生産していくというのは、いわ
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ゆる『消費者主権』が目の前で展開されているんじゃないでしょうかね。これって、
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授業でならった言葉が皆さんの目の前で展開されていますよね。」(生徒半分納得)
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この授業、最初は、パワーポイントを使って普段白黒の授業プリントをカラーで示し
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ながらやってみようかという軽い気持ちで、資料を読む練習程度に考えていたのだが、
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生徒の「コロナ対策費」という面白い気づきからやや暴走してしまった。
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その日にやろうとしていたことが全てできたわけではなかったが、この脱線で、本質
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ちょっとした脱線、暴走だったのだが、こうした話、案外生徒は聞いているものだ
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と実感。卒業生に会うと、「先生の授業の中身はほとんど覚えていないけれど、雑談、
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脱線はおぼえていますよ」という言葉を聞くことがある。うれしいような悲しいような
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別に意図して雑談をするわけではないが、今回のように生徒の気づきやちょっとした
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発言がきっかけで脱線することは悪くないのではと思うが、いかがだろうか。
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ただし授業と全く関係のない雑談では意味がないことは言うまでもない。でも、授業
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そんな雑談を引っ張り出せるような「問い」とは何だろうと考えながら、これからの
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浅子和美・飯塚信夫・篠原総一編『入門・日本経済(第6版)』有斐閣
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・タイトル通り日本経済の全体像を概観したテキストです。
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・1997年初版発行以来、時代の変化とともに改訂をおこなっていて、今回は5度目
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の改訂になり、東日本大震災からアベノミクスまでの間の日本経済の変容を評価
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・全体は序章と二部11章からなっています。章のタイトルを紹介すると以下のよう
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第2章 日本経済の歩み2:バブル経済、長期不況、日本再生への道
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第3章 日本経済の歩み3:東日本大震災とアベノミクス
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第4章 企業:グローバル化、IT化と企業システムの変化
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・はしがきには、「経済学の予備知識を持ち合わせていない読者にも、経済学の本格
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的な分析ができるように工夫した」とあります。その通りの内容で、現状と課題が
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・目次の構成を見て分かるように、中高の新しい学習指導要領の、日本経済の現状、
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課題の箇所のテーマの多くの部分をカバーしています。それぞれの学習課題の箇所で、
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序章の第1節では「現代経済の仕組み」がコンパクトにまとめられていて、まずここ
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次に、第2節の日本経済の姿でその大きさをフローとストックから確認して、さらに、
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第3節で少子高齢化、格差の拡大、政府の失敗など日本経済の課題を確認することで、
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経済学習で生徒に伝えなければいけない骨組みを確認することができます。
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・第3章では、リーマンショック以降のほぼ10年間の日本経済の歩みを概観することが
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できます。特に、この間に推進されたアベノミクスがコンパクトにまとめられていて
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その功罪を考える手がかりを与えてくれています。ここは細かすぎたり、立場が最初
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から明らかだったりする、日本経済を論じる類書にくらべて、現場の教員にとって
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・その他にも、金融や財政の章、労働や福祉の章など、授業準備をする場合に教科書の
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記述の背景にある制度や現状、課題をより詳しく押さえることができる箇所が多く
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・コラムも参考になります。例えば、金融の章の「キャッシュレス決済の拡大がマネー
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の量に与える影響」というコラムでは、スマホ決済の普及率の国際比較でなぜ日本は
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低いのかとか、ビットコインはマネーかという、生徒から出そうな疑問にこたえられ
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・紹介者はこの本の第4版を持っていたのですが、5版は購入していませんでした。今回
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第6版を手にとってみて、日々の変化や年々の変化だけでなく、4から5年ごとの変化を
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見ることが経済の全体像をつかむには有効なんだということを実感しています。もし
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第7版が出るとすると、そのテーマはコロナとその後の日本経済ということになりそう
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・先月紹介した、アセモグルらの『入門経済学』のような理論から入るテキストと併用
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することで、裏と表(どちらが裏とか表ということではありませんが)の両面から、
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・この本に注文を付けるなら、情報化のような最新の動向のフォローがもうすこし欲し
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いところです。また、貿易だけでなく日本経済に大きな影響を与えている外国為替の
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問題も入れ込んでもらえると授業準備には有り難いところです。
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・『入門経済学』でも書きましたが、まず練習問題から取組んで、そこから読み出すと
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いう読み方もありなのですが、それをやるには問題数がちょっと少ない章もあり、節
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に対応して一つは練習問題を設定するなどの工夫をするともっと使い勝手がよくなる
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・とはいえ、テキストをもとに自分で問いを立てて読み進めるというのが一番オーソド
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ックスでオススメな読み方、使い方になるはずです。(新井)
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やっと対面授業がはじまり、アクティビティやシミュレーションができるようになりま
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した。その時の時間管理にキッチンタイマーを使いはじめました。そんなのとうの昔か
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らやってるぞという先生も多いかと思います。使い出して授業だけでなく、自分の時間
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50分をワンセットで、仕事をやる。なぜ50分かは先生だとすぐわかりますね。この
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メルマガもその方式で何セットかをかけて作成しました。はたして、それだけの時間に
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見合うものになっているかかどうか。「総合的・俯瞰的」に判断していたくと有り難く
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