reader reader先生
あけましておめでとうございます。
パンデミック、戦争、円安、物価高、政治と宗教…、昨年来の世界、日本の出来事は経済教育にも再考を迫るインパクトを与えるものではないかと思われます。
多くの困難が予想されるこれからの時代を生きる生徒たちに、本当に伝えるべき経済の知識や考え方は何か、今年もエコノミスト、現場の先生方とともに、部会や経済教室などでともに考え、提案できればと考えています。
そんな今月も、ネットワークの活動報告と、授業に役立つ情報をお伝えします。
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【今月の内容】
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【 1 】最新活動報告
 22年12月に開催された「冬の経済教室」の報告です。
【 2 】定例部会のご案内・情報紹介
 部会の案内、関連団体の活動、ネットワークに関連する情報などを紹介します。
【 3 】授業のヒント…共通テスト試行問題から授業改善を考える
【 4 】授業で役立つ本…今月も授業のヒントになる本を二冊紹介します。
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【 1 】最新活動報告
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■「冬休み経済教室」を開催しました。
 テーマ:「エコノミストとつくる社会福祉の授業」
 日時:2022年12月27日(火)13時30分~17時00分
 場所:慶應義塾大学三田キャンパス北館大会議室+オンライン(zoom形式)
 内容:参加者:会場34名(関係者含)、zoom57名(申込数)
 主な内容 
(1)主催者および共催者挨拶、趣旨説明が進行役の金子幹夫先生(神奈川県立三浦初声高等学校)と鈴木深氏(東京証券取引所)からありました。

(2)中島隆信先生(慶應義塾大学商学部教授)の講演「経済学から見た社会福祉」が行われました。
中島先生は、まず、経済学を学ぶことによって、社会現象を科学的にとらえること、仮説を立てるのには考え方が必要であること、社会科学における正解の意味を知ることの三つが可能になるとの話から始められました。
しかし、経済学は公理系の学問で、そこで得られた知見がそのまま社会で通用するとは限らず、それが端的にでてくるのが、本日のテーマである社会福祉の分野であると続けられます。
次に、社会福祉を経済学で扱うことの難しさの例として、事前コストと事後コストの問題、受益者と負担者の乖離の問題、社会収支と事業収支の逆転がおこっていること、消費と投資の混同がおこること、差別と配慮の線引きの難しさの5つをあげられました。
さらに、福祉の問題の難しさはこれだけでなく、命の優先順位の問題、出生前診断の問題、高齢者医療の問題、福祉の最適基準はどこかという問題などをどう扱うかを考える必要があり、これらは簡単に答えの出ない問題であると説明されました。
 このうち、最適基準の難しさの実例として生活保護の問題で、その解決策として提案されている、負の所得税とベーシックインカムを紹介されて、両方とも経済学的には結果的に同じ事を主張していることを解説されました。
まとめとして、数式や専門用語は必要以上に使わないこと、経済学は考え方であることなど、経済学の講義で心がけていることあげられ、最後に、福澤先生の『学問のすすめ』の一節を紹介して講演を終了しました。

(3)休憩後、パネルディスカッション「エコノミストと社会福祉の授業をつくる」が行われました。
最初は、行壽浩司先生(福井県美浜町立美浜中学校)から「中学校における社会福祉の授業例」の発表がありました。
障がいは自分たちの外部にあるのではなく、だれもがなり得るという前提でインクルーシブを考える必要があること、その実感を持たせるためにユニバーサルデザインの商品開発を行わせるという授業提案です。
次に、杉田孝之先生(千葉県立津田沼高等学校)から「共生社会の働き方・差別を考える授業例」の紹介がありました。
私たちも障がい者になり得る可能性があり、この視点をもとに経済的な観点から障がい者福祉のあり方を考えさせる授業をめざしたもので、谷川彰英氏が提唱する教材選択の5条件を活用した授業案です。
授業案は二つ提示され、授業案Aが「障がい者の働き方を考える」授業例で、障がい者雇用をしている企業の事例が共生社会の実現に通じているかを、データをもとに考えさせるという授業です。
授業案Bは、「障がい者差別を考える」授業例で、ベッカー型差別の事例を挙げながら障がい者差別を考えさせる授業です。
二人の授業提案を受けて、栗原久先生(東洋大学文学部教授)より「社会(公民)科における「社会福祉」の扱われ方」の報告がありました。
栗原先生は、学習指導要領には社会福祉の言葉はないけれど、福祉の学習は小学校から行われてきたこと、これまでの社会福祉学習を、社会福祉「理念」学習、社会福祉「史」学習、社会福祉「制度」学習、社会福祉「財政」学習、社会福祉「手続き」学習、社会福祉「技術」学習、社会福祉「道徳」学習、社会福祉「経済」学習に分類して整理されました。
社会福祉を学ぶ「経済」学習は、社会的事象を筋道立てて理解するための文法として学ぶ経済学習の立場から学ぶことに意味があるのではないかとまとめられました。
三人の報告を受けて、中島先生を含めて、授業作りの難しさ、合理的配慮や障がい者の就業に関する問題、授業における教師の意見表明の問題などの質疑や討論が行われ、最後に進行役の金子先生のまとめで、終了しました。
 
 講演内容、パネルディスカッションの詳細についてはまとまり次第HPに掲載します。また、当日配布できなかった資料、中島先生、栗原先生の講演のスライドに関しても同じくHPに掲載いたします。
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【 2 】定例部会のご案内・情報紹介
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<定例部会のご案内です>(開催順)
■大阪部会(No.82)を開催します。
日時:2023年1月28日(土) 15時00分~17時00分
場所: 同志社大学 大阪サテライト+オンライン(Zoom形式)
 申し込みは以下からお願いします。
 https://econ-edu.net/wp-content/uploads/2022/11/Osaka82flyerHybridZoom.pdf

■東京部会
日時:2023年2月2日(木) 19時00分~21時00分
場所: 慶應義塾大学三田キャンパス校舎+オンライン(Zoom形式)
 申し込みは以下からお願いします。
https://econ-edu.net/wp-content/uploads/2022/11/tokyo132flyerZoomHybrid.pdf
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【 3 】授業のヒント 共通テスト試行問題から授業改善を考える
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「データを読み解き、それを生かす授業を」
                      大阪府立三国丘高等学校 大塚雅之
1 新学習指導要領用の共通テスト試作問題が公表された
先日、大学入試センターから新課程における共通テスト試作問題が公表されました。
令和7年度試験の問題作成の方向性,試作問題等 | 独立行政法人 大学入試センター
https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/shiken_jouhou/r7ikou/r7mondai.html

今回はこの問題を分析した上で、これをどのように授業にいかすべきかのヒントを提言したいと思います。
試作問題のうち、経済教育に関わるのは、「公共、政治・経済」、「公共、倫理」、「歴史総合、地理総合、公共」の3つです。
このうち、「公共、政治・経済」、「公共、倫理」では、「公共」の共通問題が8問出題され、残りは「政治・経済」、「倫理」に関する問題でした。
「歴史総合、地理総合、公共」は、3つの科目のうち2つを選択していく形式です。ここで出題されている「公共」の問題は16問、そのうち8問が先ほどの「公共、政治・経済」、「公共、倫理」との共通問題でした。
これらの問題のうち、経済教育に関して注目すべき2題に関して記したいと思います。

2 相関係数が登場した
最初にとりあげるのは、「公共」 第2問の問2「子育て支援に関する問題」です。
①どんな問題か
OECD各国の子育て支援の状況について、二つの散布図を読み取る問題です。
散布図の一つは、縦軸に合計特殊出生率、横軸に「現金給付」対GDPをとったもの(図1)、もう一つは、縦軸に合計特殊出生率、横軸に「現物給付」対GDPをとったもの(図2)が提示されそれを読み解く問題です。
②注目するべきところ
 まず、図中に相関係数が記されています。選択肢にも「強い相関があるため」と記されています。また、別の選択肢の中には「因果関係は示されていないため…別の資料を準備した方がよい。」と記されています。
このことからも相関関係と因果関係を前提知識として知っていることが求められている問題です。これは、今までのセンター試験や共通テストでは見られなかったものです。
 正解の選択肢は、「現物給付割合が日本より少なくても合計特殊出生率が1.60を超えている国がある」ことを指摘しているものとなっています。これは相関係数のデータにもとづいて議論することを想定して、そのような議論があっても良いと作問側が考えている問題と言えます。

③授業にいかすには
この問題をもとに授業改善を行うとすれば、やはりデータの見方をきちんと授業で触れていくことが必要です。
もちろん、相関関係と因果関係は「情報」の授業や「探究的な学習の時間」では扱うかもしれません。しかし、「公共」の授業でもデータを読み取らせながら、どのようなことが言えるのか、もしくは言えないのか、因果関係や相関関係も意識しながら考えさせる場面を作る必要があると思いました。また、生徒に議論させる際にもデータをもとに行わせるようにしていくべきだと思いました。

3 ここでもデータの読み取りが
二番目は、「政治・経済」の「産業別労働生産性の問題」です。
今回の政治・経済の問題の多くは探究を意識した問題設定となっていました。中でも「公共、政治・経済」の第5問の問2の問題を紹介したいと思います。
①問題の内容
状況として、生徒が先生のアドバイスのもとで、産業別の実質付加価値(表1)と産業別就業者数(表2)の推移を示すデータを集めて、考察と議論を行うというものです。
生徒と先生がデータについて話し合うセリフの中に空欄を入れておき、表1と表2を読み取ることができているかを問うています。
この問題は、表1、表2から産業構造の高度化を読み取らせるにとどまらず、表1と表2を関連付けることによって、産業別の一人当たりの付加価値つまり「労働生産性」を計算させることまで要求している問題です。
②注目すべきところ
注目すべきと感じたところが二つあります。
一つは、先ほどの問題同様、強いメッセージ性があるところです。
「日本は労働生産性が低い」、「実質賃金が伸びてない」という指摘がテレビや新聞では良く主張されます。しかし、この問題で提示されているデータを見ると産業別で見た場合、製造業はそれなりに伸びていることが分かります。これは何事も簡単に分かった気持ちになってはいけない、分けて比べることで「分かる」のだと言うメッセージを発しているのではないかと思いました。
生徒に探究的な学習をさせる際にも、「できるだけ分けて考えなさい」というスタイルをとることの重要性に気付かせてくれる問題ではないでしょうか。
もう一つは、探究の指導の仕方です。
生徒に調べさせてから、先生が教え込むのではなく、労働生産性などの指標について、データを読みとりや、アドバイスをすることで、考えさせることの大切さです。
この問題中の先生の最後のセリフは「こうした(産業別の労働生産性の)違いがなぜ引き起こされるのかについても、考えてみると良いですよ。」と、最後の最後まで教えるのではなく、考えさせる姿勢を貫いています。
③授業にいかすには
この問題のように、「政治・経済」の授業を探究的にするためには、まずは生徒が探究したくなるような問いを立てる、そして、適度にアドバイスを与えながらデータをもとに自分で考えさせることが必要であるということです。ただし、現実の授業は、この問題のようにきれいには進みませんが。
他にも、最後の問題中の先生のセリフに着目し、ICTやAIなどをうまく取り入れている企業の事例を産業別に調べさせる。それを皆で発表しあい比較させるといったことをすれば、楽しい授業になるのではないでしょうか。

4 おわりに
今回は共通テスト試作問題から、問題のメッセージとそれを受けての授業改善のヒントについて記させてもらいました。
今回の試作問題、全体的には学習指導要領の趣旨にあった問題だと思います。ただし、あくまで試作だと思いますので、現場ではその声に応えながら、ちょっとずつ新課程にあわせて対策を考えていくことが必要になるのではないでしょうか。
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【 4 】授業に役立つ本 
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 今月も、授業づくりのヒントになる本二冊を紹介します。
■中川雅之『財政学への招待』(新世社)
①どんな本か
 ネットワークメンバーの中川雅之先生(日本大学経済学部教授)の新しい財政学のテキストです。
 制度の説明を最低限にして、経済学の考え方で政府の経済における役割に焦点を当てた本になっています。また、行動経済学の成果を取り入れ、危機時の政府の対応に注目している点で、類書にはない特徴を持つ本です。

②本の内容は
 全体は4部、9章の構成です。
 第1部は、「財政学とは?」で、「なぜ財政学を学ぶのか?」(1章)で政府の存在理由から、政府の経済活動を説きおこしています。
 第2部は、「政府の仕事」で、第2章から第6章まで5章があてられています。
 公共財の供給(2章)、所得再分配(3章)、社会保険(4章)、景気安定化政策(5章)、危機管理(6章)で、政府の仕事がそれぞれ取り扱われています。
 第3部は、「政府の財源調達」で、税(7章)、公債(8章)が扱われています。
 第4部は、「政府間関係」で、地方財政(9章)が説明されています。
 各章には必要に応じて、「行動経済学からの示唆」「避けなければならないシナリオ、求められる対応」の小項目がたてられ、それぞれ関係する行動経済学の知見、問題への処方箋が書かれています。

③どこが役に立つか
 役立つところは三つあるでしょう。
 一つは、財政や公共経済の原理をきちんと学べることです。特に、現在の主流派経済学の考え方が丁寧に説明されているので、ここを読むことで経済学の原理がどのように財政、公共経済で使われているのかが理解できると思います。ただし、理解するには数式やグラフがあるので丁寧に読む必要があります。
 二番目は、行動経済学の応用が見通せることです。行動経済学の事例は生徒にとっても関心が高いので、すでに中高の授業で取り入れられたり紹介されたりしていますが、面白ネタとしてとどまってしまっていることがほとんどです。
一方、この本では、例えば公共財の供給で、フリーライド(マンション耐震化ゲーム)、所得再分配で最後通牒ゲーム、社会保険でコミットメント、デフォルト、ナッジなどそれぞれの箇所で伝統経済学に対して行動経済学のどれを使うと現実や人間行動の説明ができるのかが具体的に示唆されています。ここは役立つところです。
三番目は、問題に対する避けなければならないシナリオ、求められる対応が具体的に書かれているところです。特に、求められる対応については、授業で「考えてみよう」という課題を出した場合の生徒の論述への解答を準備する時に活用ができると思われます。
ほかにも、四択問題の練習問題が用意され、本文の読解力が試されています。簡単な四択でもこんな方法をとると内容理解が確認できるという点で、授業評価などに活用できるでしょう。

④感想
 役立つ箇所でも書きましたが、一粒で三度おいしい本というのが感想です。
 全体を通して活用するもよし、それぞれ関心を持っている箇所を重点的に活用するのもよしでしょう。
 全体を通読することで、教科書に登場する用語の背景にある理論、考え方がつかめ、用語だけを羅列する授業を一歩踏み出すことができる本だと思いました。
 また、財政学、公共経済学は集合的意思決定を扱っているので、主権者教育の経済学的バックボーンにもなります。
 ネットワークで紹介されている中川先生が作られた「マンション耐震化ゲーム」を改めて教室で実践されるのもよしです。
 財政学を「政府はなぜ存在するか」からはじめて、「求められる対応」に落とし込んでゆくプロセスは、行政での経験を持たれている中川先生の真骨頂がでているなと感じました。

■井上智洋『メタバースと経済の未来』(文春新書) 
①どんな本か
 目下話題のメタバースに関して、AIやベーシックインカムに関して論陣をはってきた若手の経済学者がこれからの社会の変容とからめて、今後を予想する本です。
 最新というよりも最先端の社会の動向を知り、その経済的な影響を知りたい先生のための手頃な本です。

②本の内容は
 全体は7章に分かれています。
 1章は、「メタバースとは何か?」で、メタバースに関する最近の動向と具体例が紹介されます。
 2章は、「この世界はスマート社会とメタバース社会に分岐する」で、AIによってコントロールされる社会とバーチャルリアリティによる社会が同時進行で発展するという予測が書かれています。
 3章から5章までは、「純粋デジタル経済圏の誕生」(3章)でメタバース経済の特色を、「メタバースとお金の未来」(4章)をメタバース社会でのお金の変化、「資本主義はどう変わるか」(5章)で、資本主義という仕組みがどう変わるかなど、経済に関する論議が紹介されます。
 6章は、「人類が身体を捨て去る日」で、再び文明論的な未来予測が語られます。
 最後の7章で、「日本をメタバース先進国にするにはどうしたらよいか?」を論じ、ベースはあるのでアニマルスピリッツと資金の投入で米中などメタバース研究の先進地域に追いつくことが求められると結論づけます。
 
③どこが役立つか
 「ねむ」、「ホライズン・ワールド」、「ソードアウトオンライン」、「フォートナイト」などの言葉に何だろうと興味を持った先生は本書を手に取ってみるとよいでしょう。今の生徒たちがどんな世界にすんでいるかがわかると思います。
 デジタル社会になってどう経済が変化するかという問題に関心のある先生には、3章から5章の経済学を使った説明がある程度の見通しを与えてくれるでしょう。この種の未来予測はきちんとした理論を背景にしていないケースが多いのですが、この本では経済学の基本を押さえた説明がしてあり、それがどこまで正しいかは吟味の余地ありとしても、類書にはない特色といえるでしょう。
 また、今先端部分で注目を浴びている現象は急速に関心を浴び、急落し、そこで生き延びるとそれからは当たり前のものになるという「ハイプ・サイクル」の指摘は、これからの社会変化を考える上でヒントになる指摘でしょう。
 そこから、メタバースの未来を生徒に予測させてもよいかもしれません。

④感想
 正直、あたまがクラクラしました。
 それでもこの本を紹介しようと思ったのは、紹介者の孫の生活ぶりをみているからかもしれません。「フォートナイト」というのはバトルゲームですが、小3の孫は夢中です。彼の世代の将来を予測するとき、古典的な教育論だけでは太刀打ちできないだろうと、少々暗澹たる気持ちになることもあります。
 進化するものに対してどこまで抵抗できるかという問題意識もあります。
 それにしても、映画『マトリックス』のような世界が現実化する、それの勝者を目指していかないと日本経済の将来がないというご宣託は、個人としては勘弁です。
 本書のp.241に紹介されている脳と機械を通信させる研究のためのヘッドキャップの写真は、オウム真理教のヘッドギアにそっくりで、恐怖感を持ちました。(新井)
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【 5 】編集後記「みみずのたはこと」
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 年賀状を整理して、最近交流をもった人たちとのやりとりがごく少ないことに改めて気づきました。卒業生で言えば第一次リタイア寸前の生徒はほんの数枚です。理由は名簿を作らなくなったこと、デジタル時代がはじまったからということは明白です。
漱石の書簡集などを手に取れば、昔の人は本当によく手紙を書いていることがわかります。編者も日頃のやりとりはメールになってしまっていますが、これは残らない。デジタル時代は記録や記憶が消滅する時代なのかもしれないと感じています。
でも、残すべき価値のある書簡、記録などはあるのかな?(新井)
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