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学校は年度の世界なので、新年になったからと言って何かが清算されるわけではないのですが、やはり年が改まると気持ちは引き締まります。
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コロナ禍も三年目になり、withコロナの時代が続きそうです。これから入試のシーズンが始まりますが、受検生がコロナに負けず健闘することを期待したいところです。
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経済教育ネットワークでは、昨年12月に、1年ぶりに対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド方式での部会を開催しました。同じ方式で、今月は、「冬休み経済教室」と大阪部会を開催します。
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そんな今月も、活動報告と、授業に役立つ情報をお伝えします。
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「冬休み経済教室」のご案内と21年12月の活動を報告します。
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部会の案内、関連団体の活動、経済教育ネットワークに関連する情報などを紹介します。
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【 3 】授業のヒント…定期テストをきっかけに思考力を深める工夫
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【 4 】授業で役立つ本…古典を読む(シュンペーター)
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■先生のための「冬休み経済教室」 -授業に使える行動経済学- を開催します。
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・日時:2022年1月8日(土) 14時00分~16時00分
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・場所: 慶應義塾大学三田キャンパ南校舎443教室+オンライン(Zoom形式)のハイブリッド方式で行います。
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講演「行動経済学を使った授業の作り方」 新井 明(目白大学非常勤講師)
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① 身近な例から学ぶ中学校の経済学習での行動経済学の使い方
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③ ジェンダー・バイアスに関する学習での行動経済学の使い方
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まとめとふりかえり 中川 雅之(日本大学経済学部教授)
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日時:2021年12月18日(土) 15時00分~17時00分
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場所: 慶應義塾大学三田キャンパス南校舎443教室+オンライン(Zoom形式)
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(1)新井(目白大学非常勤講師)より「家庭科と公民科の金融教育」の報告がありました。
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11月の札幌部会で報告された同一テーマの修正版で、新学習指導要領の実施を前に、高等学校での家庭科の金融教育と公民科の金融教育の差異と連携をテーマとした報告です。
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報告では、新学習指導要領での家庭科における金融の扱いを整理し、現実にどれだけ取り組めるか、また、家庭科における金融の扱いの視点と公民科の金融の扱いの視点の差異を整理して、今後の分業と連携に関する提言が提示されました。
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また、パーソナルファイナンスの視点とパブリックファイナンスの視点のベースとなるコアとしての金融理解の重要性と、金融商品の例に投資信託が入ったことによる外部団体などからの働きかけは過剰反応ではないかとの指摘もされました。
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検討では、金融現象を一体化して理解するための教材やどこまで公民科や家庭科で金融を教えるべきかの議論がありました。
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(2)塙枝里子先生(都立農業高等学校)から「労働市場におけるジェンダー格差と行動経済学の使い方」の報告がありました。
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これは、「冬休み経済教室」で報告する三つの授業プランのなかの一つで、塙先生が選択「政治・経済」で実践をした報告です。
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授業は、男女の賃金格差や管理職数の資料から、経済的なジェンダー格差が存在することを発見させて、そこから格差の理由、格差を解消する方法を考えさせるという流れです。そこに、統計的差別、ヒューリスティック、ジェンダー・バイアスという行動経済学の概念や知見をクイズなどで紹介し、それらの概念を使って、問題を考察させるという構成です。
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検討では、データの扱い方、ジェンダー格差の是正を行動経済学だけで考えるのではなく法的措置などひろく対応を視野に入れるべきではないかなどの質問や疑問が出されました。
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(3)授業と評価の一体化、思考力を深める授業を吟味するものとしての定期テストの紹介が4人の先生からされました。
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最初は、塙枝里子先生からで、知識確認にはマーク方式の選択問題、思考問題は記述形式の経済エッセイを読ませて内容理解させる問題、論述形式では対立する論題に対して自分の意見を根拠に基づいて論ずる問題が紹介されました。
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二番目に、杉浦光紀先生(都立井草高等学校)から、「人新生の『資本論』」の著者のインタビュー記事をもとにした問題が提示されました。
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記事をもとに、内容理解を確認する問題とともに、SDGsの17の目標のうちの4つを選んでその関連を記述させる問題や、資料文の内容に関しての賛否を問う問題が提示されました。
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三番目は、中原啓太郎先生(中央大学附属横浜中・高等学校)から、センター試験(共通テスト)をベースとした定期考査の問題が紹介されました。
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最後に、芦名信明先生(埼玉県立飯能高等学校)から、定期テストと生徒の反応の紹介がありました。
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知識確認の問題とともに、ボーナス問題として、生徒が授業で得た内容を自由に記述させる問題が紹介されました。ボーナス問題とは、書き方の例示を出し、採点基準も示したうえで、事前に準備した内容を書かせるというテストです。ほかに、「ひまつぶし」という、新書の一部を抜粋したものも紹介されました。
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これらの具体例の紹介を踏まえて、大倉泰裕先生(千葉県立松戸向陽高等学校)から、授業で教えたことを出題するのは知識問題になるので、教えたことを活用できるような具体的な問題(ネタ)を定期考査で出題することを心がけて欲しいとのコメントがありました。
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最後に、全体の総括として、教えるべき新しいテーマが登場しても、その部分だけに注目して飛びつくのは避けたいこと、「何を」「どのように」「どこまで」教えるのかをきちんと見極めた上での取組みが必要になること、そのための教材提案などを経済教育ネットワークで行う必要があるとのまとめが語られました。
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大阪部会(No.78)はハイブリッド形式にて行います。
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日時:2022年1月29日(土) 15時00分~17時00分
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場所: 同志社大学大阪サテライト+オンライン(Zoom形式)
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■東京部会(No.128)は札幌部会(No.29)と合同で開催します。
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日時:2022年2月26日(土) 15時00分~17時00分
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場所:慶應義塾大学三田キャンパス+オンライン(Zoom形式)
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【 3 】授業のヒント 「定期テストをきっかけに思考力を深める工夫」
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部会報告にもありますが、12月の東京部会では、4人の先生の定期考査が紹介されました。
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一つは、経済の授業が始まったことを反映して、市場メカニズムの理解を問う問題が複数の先生から出題されていたことです。
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旧センター試験や私大の試験では毎年のように出題される事項なので、良くも悪くも高校の場合は必須の学習事項になっています。中学校でも同様かもしれません。
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もう一つは、思考力を問う工夫された問題が出されていたことです。
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これも共通テストの傾向を踏まえて、長い文章を読ませて、それをもとに問題を出すというスタイルが特徴でした。
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こちらの傾向に対しては、大倉先生から国語との差異に注意して欲しいという注文が付いていました。
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まず、前者の需要曲線、供給曲線の問題、学習について検討してみます。
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もったいないなと思うのは、原理的な理解を問うところでそれが終わってしまっているところです。
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例えば、技術革新でコストが下がった時に曲線がどちらにシフトするか?という問題や、景気が悪化し国民の所得が下がった時に曲線がどちらにシフトするか?という質問が出されています。
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また、「肉まん」を製造する新技術が普及して同じ品質の「肉まん」をより安く作れるようになった時や、冬の寒い日が続き多くの人が「肉まん」を食べたくなった時の需給曲線の移動を問う問題もあります。
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どちらもありそうな設定ですが、需給曲線の形式的なシフトを問うというレベルでの問いで終わってしまっています。また、リアルさという点でもいま一歩と言ってよいかもしれません。
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これを一歩深めるには、例えば、次のような問題を加えたらどうでしょうか。
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「長引く新型コロナウイルスの影響で外食産業の需要が落ち込む一方、主食米の生産を絞る政府の転作誘導も思うように進んでいない」(『朝日新聞』21年5月28日朝刊)という記事が新聞に載っていた。このような時に米の値段がどうなるか、グラフを使って説明しなさい。
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この問題は、筆者の中学生向けのテスト問題です。これが良い問題かどうかは読者の判断に任せますが、次のようなねらいをこめて作成しました。
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①新聞記事を引用することで、価格の変動をリアルに考えさせる。また、日頃、ニュースなどに注意することがテスト対策にも通じるというインセンティブを与える。
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②価格以外の条件が変わったときに、どのように曲線がシフトするか、教科書に登場する理論を実際の事例で考えさせる。
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③新聞には、「コメ、続く値下がり 4月取引価格、前年比6.6%下落 コロナで外食用の消費減/転作進まず」とあり、正解に相当する記述があるが、グラフを書かせることで、正解にたどり着くまでの思考過程を見る。
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この問いはテストで出題したものですが、実際の授業では、一通りの説明が終わったら、グループでこの種の問題に挑戦させて、どうなるかを討論させることができればもっと良いと思います。さらに、もしコメが統制価格だったらこんな場合にどのような影響が企業や家計にでるだろうかを考えさせるなどの展開もできるでしょう。
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この種の問題を使って、日頃の授業のなかで生徒に自由に考えさせてみる。日常と理論の往復をすること、形式的な練習問題ではなく、実際の事例で、様々な価格問題への注目が広がり、思考が深まることを期待したいところです。
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部会の報告では三人の先生から資料問題(一人は参考文)が出題されていました。
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資料文は、「人新生の資本論」を書いた斎藤康平氏のインタビュー記事、岡﨑久彦氏の「戦略的思考とは何か」、大竹文雄氏編著の「こんなに使える経済学」が使われています。
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それぞれ、長文を読ませるという意味では、生徒の読解力を確認して、それを問うことにより思考を深めようとしています。
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ここも、もったいないと思う箇所がいくつかあります。
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一つは、文章が長すぎる点です。テスト時間に長文を読むのは悪くはないのですが、思考を深めるという点からみると、エッセンスに近い文章でもよいのではという印象です。というのは、資料文の読み取りに時間を取られて、その資料文がテーマとしている問題に関する問いを考える余裕を無くしてしまう可能性がないとはいえないということが危惧されます。
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二つ目は、「問い」が適切かどうかです。授業の改善のポイントに「問い」をいかに立てるかということが指摘されています。「問い」を重ねることにより、本質的な構造が見えてくるような授業を目指したいということでしょう。
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資料問題の問いはその意味で、資料の価値を決める最大の要因となります。その点での吟味が必要となるでしょう。
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三つ目は、一つの資料だけで、是非や賛否を問うている設問があることです。
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はじめてテスト会場で見る資料だとして、それが論争的なテーマであるとしたら、複数資料が欲しいところです。資料がなくとも、対立軸を示しての意見論述が必要であると感じました。
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その点で、経済の問いではなかったのですが、「強制投票制度」を扱った問題では、三つの資料をもとにした意見論述問題でした。最低二つの資料やヒントが、論述を伴う問題だけでなく授業でも必要と言えるのではないでしょうか。
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この種の長文問題は、事前に生徒に概略や資料文を紹介しておいて、試験会場で設問は初めて見るというやり方も一考かと思います。また、テスト後の振り返りも、テスト以上に必要と言えるでしょう。
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注文が多くなりましたが、改善されているなと感じたものは、評価基準の明確化が進んでいる点です。
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論述問題では、今回問題を紹介してくれた先生方が、論述の書き方や採点基準を明確にして、生徒に提示していました。
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観点別評価が高校でも導入されますが、思考力・判断力・表現力や学びに向かう力など、これまで数値化して表現してこなかった高校現場ですが、部会で提出されたテスト問題では、評価を生徒が見えるように提示しています。
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評価基準の明確化は、テストに取組む生徒にとっても、また、採点する教員にとっても、重要な要素になっています。特に、教員にとって最初は大変ですが、適当に帳尻あわせをするのではなく、一度、しっかりと取組まれると、後が楽になるはずです。
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評価に関しては、若い先生方の努力と工夫から学ぶことが多いのは喜ばしいことと思いました。(新井)
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【 4 】授業に役立つ本 「古典を読む(シュンペーター)」
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今月は、授業に役立つ古典としてシュンペーターの本2冊を取り上げます。
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一言で言えば、「座りが悪い」のでそれをなんとかしておきたいというのが最大の理由です。
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高校の多くの教科書では、技術革新の言葉とシュンペーターが登場しています。その部分だけを切り離せば特に授業で困ることは少ないのですが、経済学や経済思想の流れのなかでシュンペーターを位置付けようとすると、どこに位置付けるか、悩ましい問題となります。
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先日筆者に、「教科書ではアメリカの経済学者シュペンターとなっているがそれでよいのか、という質問が使っている先生からあったが、それでよいのか」という問い合わせが編集者からあったことも、一度シュンペーターをどう位置付けるかを考えてみたいと思ったきっかけにもなっています。
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さらに、教科書には登場しているけれど、教員が、原典を読んでいない有名本の一つにシュンペーターの本があり、筆者も部分で目を通してはいるけれど、きちんとは読んでいないなあという自戒もあります。
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技術革新のシュンペーターといえばこの本という代表作です。岩波文庫で上下二冊。読み始めるにはちょっと勇気が必要な密度の濃い本です。
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文庫本には、冒頭に英文の日本語版出版(1937年)に際しての序文があります。これを読むと内容の概略と訳者の東畑精一氏と中山伊知郎氏の関係(ボン大学での教え子)がわかります。また、この本がワルラスとマルクスの理論に基づいていることも書かれています。
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このうち第1章は、この本の前に書かれた『理論経済学の本質と主要内容』のエッセンスがまとめられています。
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第2章が、メインとなる経済発展の担い手になる企業家とその役割が分析されています。
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第3章は、企業家が活動をするための資本がどこから調達されるかが書かれます。答えは、銀行による信用創造です。
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第4章は、企業者利潤の源泉に焦点が当てられ、創業者利潤が企業家にとっての利潤となり、それが追随者の参入によって失われて行く過程が紹介されます。
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第5章は、利子の発生とその根拠が説かれる部分です。
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最後の第6章は、景気循環の理由がここまでの各論を総合して分析されることで全体を閉じます。
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ここでは、多くの教科書で「技術革新」と簡単に書かれている箇所が、本当は5つの「新結合」の総体を指すことが指摘されています。
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5つの新結合とは、新しい財貨の生産、新しい生産方法の導入、新しい販路の開拓、原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得、新しい組織の実現であり、その担い手、それらの要素を結合させるのが企業者(entrepreneur)であることが指摘されます。つまり、私たちが技術革新と言っているのは、5つのうちの生産方法の部分だけということがわかります。
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資料集のなかには、5つの要素の箇所を引用しているものもありますが、やはり章全体を読んで、シュンペーターの論旨をつかまえたうえで、企業者や起業について語るべきでしょう。
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第2章では、「発展はいかにして金融されるか」という節もあり、学習指導要領で書かれている「金融を通した経済の活性化」(高等学校「政治・経済」の内容の取り扱いの箇所)に関連する説明があり、起業と金融の原理的理解をすることができます。
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その他の章は、関心のある先生向けで、授業に役立つとはちょっと思えません。
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経済の本ですが、グラフも数式も全くありません。その意味では、哲学書を読むような気持ちで読む本かと感じます。昔の経済の本はこんなスタイルだったのだという意味で、数学の苦手な紹介者にとっては有り難い本です。
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初版が書かれたのが1911年。90年近く前の本(翻訳は1926年の第2版)ですが、今読んでも古くないのに驚きます。
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でも、新結合の説明の箇所で、「郵便馬車をいくら連続的に加えても、それによってけっして鉄道をうることはできないであろう」(翻訳上巻p180)という箇所では、ちょっと笑ってしまいました。また、現代ならどんな表現になるかなと考えさせられました。
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また、企業家の箇所では、新古典派が前提とする経済人を批判する現代の行動経済学に通じる記述もあり、古典は現代に通じるという感想を持ちました。
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シュンペーターは、マルクスが死んだ1883年生まれです。同じ年にケインズも生まれていて、両者はマルクス主義には反対した経済学者ですが、特にシュンペーターはマルクスの生まれ変わりなのかもしれないなどと、感じてしまいました。
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座りの悪さを無理矢理に位置付けてしまうと、ケインズが需要サイドの経済学を提示したのに対して、シュンペーターは供給サイドから経済を見る視点を提示していると整理することができるかもしれません。でも、そんな強引な整理は両者の偉大さを無視する暴論だし、エコノミストからは怒られてしまうかも知れません。
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■『資本主義・社会主義・民主主義』東洋経済新報社(ほかに日経BP社版の翻訳もあり)
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シュンペーター晩年の著書で、タイトル通り、資本主義のゆくえを占い、民主主義のメリットと限界を指摘した本です。
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東洋経済の翻訳で約600ページの大作です。昔は三分冊でしたが今は一冊の合本となっています。手に取るには覚悟が必要ですが、文章は平易で読みやすい本となっています。
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「資本主義は成功によって滅ぼされる」という文章が有名な本ですが、その解釈は多様で、シュンペーターというのは一筋縄ではいかない人物であることがわかる本でもあります。
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第1部は、「マルクス学説」というタイトルで、マルクスの業績、影響を、予言者、社会学者、経済学者、教育者と四つの視点から取り上げています。
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第2部は、「資本主義は生き延びうるか」という部分です。先に挙げた「滅ぼされる」という命題を論証するところです。資本主義の生産力、その原動力となる企業家による創造的破壊による新結合など『経済発展の理論』の内容が論じられています。
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第3部は、「社会主義は作用しうるか」という部分で、結論は経済システムとしては作用しうるというものです。ただし、ここでいう社会主義は社会民主主義、もうすこしひろげると福祉国家的な指令経済社会を意味しています。
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第4部は、「社会主義と民主主義」というタイトルで、社会主義における民主主義の在り方への批判からはじまり、民主主義の古典的学説まで遡って、それが機能するための条件を探っています。
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第5部は、「社会主義政党の歴史的概観」という部分で、ドイツやフランス、イギリスなどの諸国で社会主義政党がどのような歴史的な展開をしてきたのかを概観するとともに、執筆当時の各地の社会主義政党の性格や行動分析をしています。
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最後に付録、「その後の戦後展開への注釈」が、1949年までの政治経済面での現状分析として付け加えられています。
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第2部の「資本主義は生き延びるか」と、第4部「社会主義と民主主義」の部分が、授業には直接ではないとしても、役立つ部分でしょう。
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前者は、シュンペーターの資本主義論のエッセンスがコンパクトに書かれていているという意味では、『経済発展の理論』を読むより、シュンペーター理論をつかむには良いかもしれません。
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また、資本主義の市場理解では、需給曲線の均衡理解よりも、独占的競争の現実を理解する方が大切という指摘なども、市場の学習に際してこころしたい部分です。
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後者は、政治と経済を一体のものとして教えたいと思うときに、参考になると思われます。特に、現在のように民主主義の限界や課題が提起されていることを考えると、民主主義がどのような条件のもとで作用しうるかを考察した箇所や、民主主義な方法で異教徒を迫害すると決定したらという思考実験の箇所などは、「公共」での思考実験の応用として使えるのではと思います。
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社会主義に関する部分は、ソ連が崩壊して社会主義の経済システムは否定的にしか扱われませんが、シュンペーター流の社会主義の定義や内容を読んでみると、現代の中国の動向などの理解に参考になる部分があり、これからの経済体制の在り方を考える手がかりになる箇所が探し出されるでしょう。
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有名で、経済思想を扱う本では必ず取り上げられている本ですが、大部だったこともあり、躊躇していたのですが、「資本主義」という言葉が目に付くようになったこの冬、思い切って読んで見て正解と思っています。
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新書レベルの概説本やハウツー本は、内容を手っ取り早くつかむには最適です。一方、原本は著者の思考にそって内容を理解することが求められるので、時間がないと取り組めませんが、そのような時間をつくることが大事なことなのだと改めて感じます。
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この本は、資本主義vs.社会主義が先鋭化していた時代の本なので、社会主義への言及が多いのが特徴です。個人的には、マルクスの評価や社会主義政党の歴史を扱った部分が面白いと思ったりしていますが、今の若い先生たちにとっては、シュンペータ-が社会主義にどうしてこんなに気を遣っているのかは、感覚的にわからないかもしれません。
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シュンペーターに関する紹介本、研究本は汗牛充棟です。
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そのなかで、二冊選ぶとしたら、一冊は、伊東光晴・根井雅弘『シュンペーター』岩波新書、もう一冊は、吉川洋『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ』ダイヤモンド社でしょう。
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前者は、シュンペーターの経歴、現代的意味を簡潔に、かつ情熱的に述べた部分(伊東氏執筆部分)と、理論を冷静に述べた部分(根井氏執筆部分)からなっている新書です。とりあえずの理解はこれで得られるはずです。
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後者は、リーマンショック後の経済状況を踏まえた政策提言から書かれた本です。ケインズとシュンペーターという対照的な二人を統合する視点が特徴です。
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ともに、現在は新刊では入手できませんが、古書なら簡単に手に入るはずです。根井氏も吉川氏も、この本以外にもシュンペーターに関する本や文章をたくさん書いています。それから、入っても良いかもしれません。(新井)
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東京の都立高校の男女別定員を段階的に廃止することが決まりました。日経新聞のコラム『春秋』が昨年末にこれをとりあげ、旧制中学を母体とするある学校の卒業生たちのエピソードを紹介していました。実は、編者もその学校の卒業生で、後夜祭のフォークダンスを男どうしで(3対1の比率のため)踊った世代です。
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ちなみに、妻は編者と同じような長野県の旧制中学を母体とする学校の卒業生で、当時は、定員がなくとも、女子は圧倒的少数派だったそうです。ところが、昨春女子の新入生が半数を超えたと、最近送られてきた同窓会報が報じていました。
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日経新聞のコラムでは、「変わる風景を歓迎したい」と書かれていましたが、我が母校を含め、ジェンダー・バイアスが解消された学校や社会がどんな風景になるか、編者にとっても楽しみです。(新井)
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