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5月、皐月、本来ならGWの最中です。
新型コロナウイルス対応のための学校休校も二ヶ月になり、GW明けには再開でき
るかさらなる延期かを判断しなければいけない段階になっています。
大学では非接触型のオンライン講義で前期は乗り切る方針で取組み始めています
が、中高はなかなかその環境が整わず、どのように対応してゆくべきか戸惑って
いる先生方も多いかと思います。
ネットワークの活動もzoomによるオンライン会議を開催するなど、新たな事態を
踏まえた取組みをはじめています。
そんな今月もネットワークの活動を報告するとともに、授業に役立つ情報を提供
いたします。
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【今月の内容】
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【 1 】最新活動報告
 20年4月の活動を報告します。また、寄稿いただいた論文を紹介します。
【 2 】定例部会のご案内・情報紹介
 部会の案内、ネットワークに関連する情報などを紹介します。
【 3 】授業のヒント 「生徒のいない教室でどう授業を創るのか」
【 4 】緊急特集:「今学校でおきていること、取組んでいること」
【 5 】授業で役立つ本「今月は二冊」
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【イベントの案内】 「夏休み先生のための経済教室」中止に関するお知らせ
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「夏休み先生のための経済教室」、コロナ対応ために8月までは会場に多人数が
集まっての集会そのもの中止が要請されました。
それをうけて、本年度の「夏休み先生のための経済教室」は中止とさせていただ
きます。関係者との協議をすすめて、本年度の後半にむけて、新たな企画を検討
してゆきます。
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【 1 】最新活動報告
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■荒渡良先生(同志社大学)から「Covid19の流行による不況にどう対処するか」
の論考が寄せられました。
http://test.belle-music.site/wp-content/uploads/2020/04/Covid19Prof.Arawatari.pdf
荒渡先生は、現在カナダに滞在中ですが、大阪部会(ネット開催)に参加されま
した。
この論考では、今後予想される不況とその性質を、経済活動の停滞の理由、不況
が起こる原因、今回予想される不況の特徴とそれへの対処方法と体系的に説明さ
れています。
お読みいただき、先生方の理解を深めるとともに、授業づくりの参考にしてくだ
さい。

■東京部会(No.115)を開催しました。
(1)日時:4月18日(土)14時00分~16時45分
(2)場所:ネット会議
(3)主な内容:参加9名。
① 2月以降のネットワークの動きの報告がありました。
② 河原和之先生(立命館大学他)から「盧舎那仏建立詔と墾田永年私財法が同
じ年に発令されたわけ~歴史を経済の視点で考える」という、中学2年生歴史学
習向けの教材の紹介と検討が行われました。
新型コロナウイルス流行を踏まえて、疫病が蔓延し、地震災害が連発した奈良
時代の政策対応を取り上げるという、これまでにない経済の視点を取り入れた
歴史授業案です。
③ 篠原代表から「新型コロナウイルス感染拡大から経済教育のネタを探す」と
いう報告がありました。
これはエコノミストとして今回のパンデミックをどう捉えるのかの一端をまと
めたもので、経済への影響、これまでのパニックとの違い、政府の対策、社会
的影響などの観点から教材化のヒントを提供するものです。
④ はじめての試みで環境設定とセキュリティ問題から限定されたメンバーで
の開催となりましが、部会としての新しい取組みとなりました。
 詳細は以下をご覧ください。
 https://econ-edu.net/wp-content/uploads/2020/04/tokyo115report-1.pdf

■大阪部会(No.68)を開催しました。
(1)日時:4月25日(土)14時00分~16時00分
(2)場所:ネット会議
(3)主な内容:参加18名。
① 東京部会の報告がありました。
② 大塚雅之先生(府立三国丘高等学校)から「公民分野の「情報社会」に関す
る単元開発」の報告がありました。
この報告は、センター試験後の新テストの試行問題の思考力・判断力・表現力
の要素を分析し、それを問う独自問題を作成し、そこから逆算して単元開発を
したもので、「巨大IT企業問題」をテーマとした4次構成の授業案です。
授業方法としてのジグソー法、熟議のためのワークシートなどが紹介され、検
討が行われました。
③ 奥田修一郞先生(大阪教育大学他)から「労働問題学習での単元「AI時代の
働き方の手がかりをさぐる」の設定」の報告がありました。
この報告は、AI時代の労働の在り方を考えさせる3時間構成の授業案です。
多くの資料を読み込んだ本格的な授業案で、実践での検証が期待されるものです。
③ 河原和之先生(立命館大学他)から「盧舎那仏建立詔と墾田永年私財法が同
じ年に発令されたわけ~歴史を経済の視点で考える」の報告がありました。
東京部会で検討されたものの修正版です。
④ 今回も限定されたメンバーでの開催でしたが、多くの人が参加し、事前に送
付された資料をもとに活発な討論が行われました。
詳細は以下をご覧ください。
https://econ-edu.net/wp-content/uploads/2020/04/Osaka68report.pdf
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【 2 】定例部会のご案内・情報紹介
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<定例部会のお知らせです。(開催順)>
■東京部会を開催します。
・東京部会(No.116)はネット会議にて行います。
・日時:2020年5月9日(土) 14時00分~16時00分
・場所:Web会議システム上
・参加申し込みは以下からお願いします。
http://test.belle-music.site/wp-content/uploads/2020/04/tokyo116flyerR.pdf
■大阪部会を開催します。
・大阪部会(No.69)はネット会議にて行います。
・日時:2020年5月23日(土) 14時00分~16時00分
・場所: Web会議システム上 
・参加申し込みは以下からお願いします。
https://econ-edu.net/wp-content/uploads/2020/04/Osaka69flyer.pdf
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【 3 】授業のヒント 「生徒のいない教室でどう授業を創るのか」
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(1)はじめに ~私たちの前にある道~
 2020年春、社会が大きく変わってしまいました。二ヶ月前には「在宅勤務」、
「オンライン授業」が話題の中心になるとは思いもしませんでした。本稿では、
2020年春,多くの教師が一番困っているであろう「オンライン授業」と経済教
育とをセットで皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
前提としてはパソコン中級者の先生(私も同じ)を想定しています。
このような中、私たちの前には大きく四つの道が用意されています。
第一の道は、パワーポイントのようなソフトに学習内容を掲載して私たち教師の
声をのせて配信するという道です。昔のラジオ講座のようなイメージでしょうか。
第二の道は、カメラで授業を実際に撮影し、録画したものを配信するという道で
す。これは放送大学のイメージです。
第三の道は、リアルタイムで、端末を介して多くの生徒と授業を進めるという双
方向の道です。
第四の道は、学校のホームページなどに課題や解説を提示して各生徒に学習して
もらうという道です。
このなかで筆者は第一の道であるパワーポイントに教師の音声をのせての経済学
習を試みることにしました。対象は高校3年生の「政治・経済」を想定しています。

(2)教材案「マスクはどこに?」
顔も見たことのない生徒が対象です。教室で呼吸を感じることもありません。
まさに手探りです。不安の中、次のような授業案を考えました。
a)今起こっていることを確認する
 パワーポイント第一枚目のスライドにマスクの絵を大きく映し出します。その
絵を見ながら二人の教師による次のような会話をパワーポイントにのせるのです。
A先生「なかなかコンビニエンスストアではマスクが売り出されませんね。」
B先生「そうですね。いつも品切れですと書かれていますね。」
A先生「国内にはたくさんのメーカーがあるのだから,そろそろ生産されてもい
い頃なのに・・・」
B先生「作れば儲かるのにね。」
A先生のナレーション
「さて・・・みなさんは,マスクがいつまでたってもお店に入荷しないのはどうし
てだと思いますか?ワークシートに思いついたことを書いてみましょう。」
(同時にパワーポイントにも同じ文字を映す)
B先生「A先生、この写真を見てください。」
 (パワーポイントに新聞記事に掲載された写真を映す。その写真はマスクを
生産している現場が撮影されている)
A先生「マスクを生産している工場の写真のようですね。作っているじゃない
ですか。」
A先生のナレーション
「さて・・・マスクは生産されているようですが・・・どうして皆さんの町のコンビ
ニエンスストアに運ばれてこないのでしょうか?記事を読み、その中から理由
をみつけてみましょう」
(同時にパワーポイントに記事のテキストを映し出す)
A先生「みんなは理由がわかったかな?その理由をワークシートに書いてみよう」
ここまでは、私たちを取りまく身近な問題を取り上げた新聞記事を読みながら学
習を進めました。

b)問いを細分化する
 次は、「どうしてマスクがいつまで経っても売られないのか?」という問いを
たてます。この種の大きい問いは、いきなり考えさせるのではなく、まずは、細
分化することがポイントです。
教室ならば生徒に発言させ、その結果を分類するのですがオンラインではなかな
かうまくいきそうにもありません。次のような展開を考えました。
A先生のナレーション 「どうしていつまで経ってもマスクが売られないのか?
その理由を思いつくまま10個あげてみましょう。」
 (パワーポイントに指示文を示す。イラストや写真も一緒に載せて彩りよい
スライドにするよう心掛けます)
 これはワークシートに書かせます。ここでは時間をとります。
B先生「きっといろいろな理由が挙げられていると思います。せっかくですから
分類してみませんか?」
A先生「そうですね。分類してみましょう。どのようにわけますか?」
B先生「みんながあげてくれた問題を、
①作り手に原因がある場合
②運ぶ仕組みに問題がある場合
③売るところに問題がある場合
④ウィルスに問題がある場合 
⑤貿易に問題がある場合 
⑥政府の対応に問題がある場合
⑦その他に問題がある場合に仕分けしてみたらどうでしょう。」
といって、生徒があげた10個の理由のうしろに①~⑦までの番号をつけさせる
のです。
 (ここまでの指示も丁寧にスライドに書き込みます)
 仕分けをしたらその結果をレーダーチャートに作成するように指示します。

c)大きな問いへ
 そして、b)で提起した最初の問いを考えさせます。
A先生「皆さんが作成したレーダーチャートからどのようなことが読み取れます
か?」
 と生徒が自分で作成した資料の意味を読み取らせます。
B先生「マスクが皆さんの手元に届けられるような社会にするために、どのよう
な工夫が必要だと思いますか?」と質問して、用意したワークシートに
考えたことを記述させます。
ここまでが第一段階で、次の時間には、最後のB先生が発した問いに対する生
徒の回答をさらに吟味してゆくという流れになります。

(3)オンライン授業の教材づくりに挑戦するには
 パワーポイントで教材をつくる、また声を吹き込むのは難しいと感じてしまう
先生もいるのではないでしょうか。まずは、A先生とB先生のようにペアになっ
て10分程度のスライドを作ってみませんか?
 
ポイントは次の通りです。 
① 10分間のスライドで課題を三つくらいだす
② 課題は新聞記事の写真をきっかけにすると生徒の心の中での問いに近づくこと
  ができるのではないか?
③ 話題は「今の問題」(今回はマスクにしました)がいいと思います。
④ 新聞記事の写真、テキストデータから問いを二つほど提示。
⑤ 問題を細分化する作業を入れる
⑥ その中から問いの意味するところを感じさせる
⑦ どのような工夫をすることで問題が解決にむかうのかを考える
⑧ ふり返り とワークシートの提出(メール機能?)で合計約40分の学習。
⑨ あれもこれも教えようと欲張らない

(4)おわりに
 まさか・・・バレンタインデーの頃、このような新年度が待っているとは想像も
しませんでした。今回の提案は急遽考えた授業案です。新入生の「現代社会」
だったらどうなるだろうとか、この問いでいいのかなど、たくさんの問題点があ
りそうです。皆様のご意見をお寄せください。そしてWEB上で皆さんと学び会う
ことができたらとてもうれしく思います。             
(神奈川県立三浦初声高等学校 金子幹夫)
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【 4 】緊急特集 「今学校でおきていること、取組んでいること」
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新型コロナ感染拡大対応で学校休業が続いています。
今回は、次のような内容に関して、ネットワークの先生方に休業中の様子、取
組みを報告いただきました。(掲載は到着順です)
①休業中の学校の様子 
②休業が続いたときの学校の取組み 
③休業中に個人で取組んだこと 
④この間に考えたこと、ネットワークメンバーに伝えたいこと、などをお書き
ください。

1 大塚雅之先生(大阪府立三国丘高等学校)
①とりあえず四月中の課題を出しました。演習問題の解説動画を作成中。大阪府
は連休明けに授業再開としていたのですが、延長の可能性がみえてきています。
②学校としてGoogle等のサービスを利用して教材や動画をあげたりすることを検
討中。教育委員会も動画をあげたりしようとしています。ただし、これまで多
くの投資のもと映像授業をしてきている教育産業とどのように差別化をはかる
のか疑問に感じています。やはり、学校のウリは生徒と生徒、教員と生徒の双
方向のやりとりであり、それをオンラインでも実現していけるようにするべき
ではないかと思っています。
③時間があるので、今後の授業の内容を考えたり、自分の関心のある分野の論文
を収集して読んでいます。自分の好きなことができて、あまりストレスのない
生活を送っています。
④今回のコロナをきっかけに教育のオンライン化が進んでいくと感じています。
どのような取り組みが有効かについて情報共有していければと思っています。

2 杉田孝之先生(千葉県立津田沼高等学校)
①学年ごとに少人数で、輪番で週1回勤務。学年ごとにファイルをつくり生徒や
保護者からの連絡やその対応について情報共有した。始業式直後から「課題」を
各教科で準備、作成、梱包、郵送した。1年生と3年生の「現代社会」を担当
なので、1年生向けには中学公民の教科書を活用し、経済概念のまとめプリント
を作成。さらに選択で、自由課題を作成課題は政府からの政策の検討、コロナ
以外のニュースを見てまとめる等の指示をだした。3年生にも1年生と同様に
政経資料集を活用してプリント課題を作成した。
②ベネッセクラッシーによる各教科配信を始めているが、肝心なときにクラッシー
自体が個人情報の流出やアプリが正常に稼働しない等、不安定で使いこなすの
が困難な状況。でもやる気がある生徒に向けに、私も小論文を書くための情報
収集の方法等を配信予定。とはいえネット活用&運用だけでは限界がある!
③在宅勤務なので、古い書籍、資料等の「断捨離」。ネット、メールとのつきあ
い は「時間を決めて」対応、テレビよりラジオ!起床、就寝時間の固定、散
歩を夕方する!評価の論文、質的研究、政治学の文献を読んでいます。
④多忙で日頃できないことをしてください。読書以外にできることも検討してみ
ていかがでしょうか。とにかくネットやメール、スマホとは、良い距離感を!

3 中山義基先生(京都府立洛東高等学校)
①5月6日までの休校中の課題を4月20日に全生徒に郵送した。Classiというベ
ネッセ提供のシステムを使い、健康チェックをさせている。21日からは「全滅」
と ならぬよう全教職員が3班に分かれての交替勤務となり、出勤日以外は在宅
勤 務となっている。
②まだ何も聞いていないが、課題の郵送と交替勤務という現状維持と思われる。
今後も課題を郵送することを前提に、プリント上で授業を試みている。話すこと、
調べてほしいこと、ポイント等全て手書きしており、時間がかかる。
③研究は、ハラリの三部作を読み、過去、現在、未来の世界を、現状をふまえて
「創造的」に考察している。
④はたして今年は授業ができるのか、入試はどうなるのか、先が見えず不安であ
る。 異動前は可能だったことが異動後は不可能であるなど、不便さを感じる
ことが多い。与えられた環境の下、いかに魅力ある授業をするかが課題である。
皆様 (私もですが)、ご自愛ください。

4 佐藤央隆先生(名古屋市立はとり中学校)
①指導計画で予定していた内容の学習プリントを配布し、家庭学習として課した。
卒業式は、保護者参加、来賓者不参加で実施した。修了式は、学年別に時差登
校させて実施し、新たな課題を配布した。
②家庭訪問を実施したり、学年登校日を設定したりした。本校・本市によるICT
等を活用した学習指導・相談は実施しておらず、文部科学省の「子供の学び応援
サイト」やNHKの「NHK for School」等の適宜活用をすすめている。また、
教職員の在宅勤務(2班編制)についても、ICT等を活用したテレワークは実施
していない。
③学校の再開後を見据え、生徒の心のケアにどのように取り組み、学校での学びを
どのように保障していくかを具体的に検討・準備している。また、本年度の外部
連携学習の指導計画を作成している。
④新型コロナウイルス感染症に関する経済対策について、その効果だけでなく、
負担の在り方についても考察していきたい。

5 山﨑辰也先生(北海道北見北斗高等学校)
 北海道の人口密度は元々高くないのですが、三密を防ぐという意味合いから、
ほとんど誰も来ない場所にフィールドワークへ出かけました。今回はその中の
1つをご紹介します。
写真(略)は、北見にある政治犯の井上伝蔵の葬儀が行われた場(旧聖徳寺)
です。井上伝蔵は秩父事件を起こした人物の1人で、明治政府の課す重税に対
して自由民権を訴えて反旗を上げた中心人物です。秩父事件が鎮圧された後、
政府からただの火付け強盗犯とされた井上伝蔵は、埼玉から北見に渡り偽名を
使って潜伏していました。家族には死ぬ間際に初めて正体を明かすのですが、
このときの写真やエピソードは教科書などでも取扱われます。
 こういうのを見ると、政府(文科省含む)の言うことが善で、反する言動
を取ることは本当に悪なのか考えさせられます。もっと言うならば、政府の言
うことを同僚や生徒に無条件で善と押し付けることは果たして善い行為なのか、
生き方自体を考えさせられます。

6 中原啓太郎先生(中央大学附属横浜中学・高等学校)
①4月6日、中・高入学式を短縮で実施。7日、始業式延期。教員は生徒への発送物
封入、宿題等web上での連絡準備、Microsoft Teams講習受講。
②17日よりTeams上で毎日9:00—9:30にSHRを実施。出席確認・健康調査・連絡等。
授業形態は試行錯誤の段階。5月7日までの課題は提示済で、Teamsを使った課題
のポイント説明、生徒との質疑応答対応、学年生徒での共有等、なかなか使える
ツール。一部教員は、動画で課題解説授業をアップ。GW以降も移動制限の可能性
が高く、その準備中。
③中3・高1のレポートで「自由権」と「社会権」について問う。2月以降制約され
る機会が多いが、その制約は自分にとって、社会にとって許容される制約である
か。憲法は何のためにあるのか。生徒は当事者となって、感じ考えることがある
と思うが、現実が厳しいこともあり、この課題で良いものかと逡巡した。公民科
は「自由に生きるため」「良く生きるため」の科目だと信じたい。
④「何が大切か」を考える時間であった。

7 杉浦光紀先生(東京都立井草高等学校)
①入学式がちょうど「緊急事態宣言の日」となり、会えなかった新入生のため、
入学許可通知や各教科からの課題、学年や事務室からのお知らせを郵送した。
②休校となり、教材の配信、WEBテストなどを試みている先生は多い。5月7,8日
も休校となった都立高では、この体制がこの先も続くのかもしれない。しかし、
課題を提供しても応答してこない生徒が一定数いるという話をよく耳にする。
休業が継続した場合、Wifi環境や学習サービス利用の有無のみならず、意欲の
格差(インセンティブ・デバイド)による学習の差がより顕著になるのではな
いか。さらに、全員のアクセスが確保できないと、ネットの課題は、評価材料
にもしにくい。生徒に「密接」して声がかけられる教室の意義を逆に考えさせ
られた。
③個人的には、もっと勉強したかったが、これまで時間がとれなかった分野の本
を読み、授業開発(教材研究)をしている。
④授業が再開した暁には、生徒への還元に努めたい。

8 塙枝里子先生(東京都立農業高等学校)
勤務校では,4月6日に2,3年生に対して放送による始業式。教科担当がクラスへ
回って説明をしながら課題を配布し,3月の臨時休業以来,久々の「学校」。夕
刻に翌7日に予定されていた入学式の急遽中止が発表となり,1学年担任団は2回
線しかない外部電話で連絡。私は学校HPの担当だが,更新に時間がかかる。1年
生への課題は郵送対応。8日以降は経営メンバーと農作物の手入れなど勤務が必
要な教諭以外は原則自宅勤務へ。といっても,リモートワークできる教諭はごく
一部で,HPで農作物の成長の様子などを配信するに留まる。
勤務校には東京都の一部導入が進むClassi,スタディサプリなどの手段が何もなく,
twitterやLINE公式学校アプリなどを経営メンバーに提案中。休業延長の場合も課
題は郵送対応の予定。
最大の課題は教員と生徒のインターネット環境整備(デジタル・デバイド),生
徒との連絡手段の確保。そして,個人的には家族のお世話も課題です!
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【 5 】授業に役立つ本「今月は二冊」
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先月からはじまった「授業に役立つ本」今月は一冊ではなく、新型コロナウイル
スに関する授業を展開するためのヒントとなる二冊を紹介します。
◆今月の一冊目
(1)ユヴァル・ノア・ハラリ『21Lessons』河出書房新社

(2)内容の概略
・『サピエンス前史』で人類の歴史を扱い、『ホモデウス』人類の未来を扱って
話題になったイスラエル生まれの歴史学者が、現代及び近未来を対象として21の
テーマで、現代の私たちが直面している問題を扱っています。
・21のテーマは大きく五つに分類されています。
Ⅰはテクノロジーの難題のタイトルで、幻滅・雇用・自由・平等の4つが扱われ
ます。
Ⅱは政治の難題で、コミュニティ・文明・ナショナリズム・宗教・移民の5つが、
Ⅲは絶望と希望で、テロ・戦争・謙虚さ・神・世俗主義の5つが、
Ⅳは真実で、無知・正義・ポストトゥルース・SFの4つが、
そして最後のⅤはレリジエンス(対応)で、教育・意味・瞑想の3つが扱われ合
計21となっています。
・直接経済に関するテーマが登場しているわけではありませんが、ハラリが現在
の直接の危機としている、核戦争、生態系、テクノロジーの三つはいずれも何ら
かの形で経済と関係があるとみることができるでしょう。また、自由を扱った箇
所では自由主義のセットメニューとして経済問題が登場します。

(3)授業で使えるところ
・多くのテーマが、高校の「現代社会」「公共」の内容とオーバーラップしてい
ます。格差、情報、環境、労働などの学習でそのままハラリの問題提起を生徒と
一緒に考えることができるでしょう。
・もちろん、「政治・経済」でも「倫理」でも扱える素材が沢山でてきます。
(例えば自動運転の問題など)
・中学校でも、同様に扱うことができるでしょう。

(4)感想
・マクロ的、人類史的に今の世界がどこに進もうとしているのかの大きな展望を
得ることが出来る本でしょう。社会科や公民科がこまかなテーマ主義におちいっ
て見えなくなってしまった視野を回復するヒントがある本だと感じます。
・今回のパンデミックに際して、アメリカのトランプ政権がWTOへの拠出を停止
したことに対して、ハラリは100万ドル(約1億円)をWHOに寄付したそうです。
思索するだけでなく、行動する思想家です。
・3月31日の日経新聞に「全体主義的監視か 市民の権利か」のタイトルで寄稿
しています。また、NHKのEテレ特集のインタビュー(4月26日放映)にも登場し
て、現在のパンデミックとそれへの対応を語っています。

◆今月の二冊目
(1)大竹文雄『行動経済学の使い方』岩波新書

(2)内容の概略
・大竹先生の近著です。タイトルどおり、行動経済学の知見がいかに活用できる
かを具体的に提示した本です。
・全体は8章に分かれています。
 第1章 行動経済学の基礎理論
 行動経済学の特徴を、プロスペクト理論、現在バイアス、社会的選好、ヒュー
リスティックの四つにまとめています。
 第2章 ナッジとは何か
 本書の中核となるナッジに関する概観です。以下は、その応用例になります。
 第3章 仕事のなかの行動経済学
 第4章 先延ばし行動
 第5章 社会的選好を利用する
 第6章 本当に働き方を変えるためのナッジ
 第7章 医療・健康活動への応用
 第8章 公共政策への応用

(3)どこが使えるか
・ネットワークでも昨年(2019年3月)の「経済教室」で行動経済学をテーマと
しました。行動経済学の事例は生徒にとって意外性があり、ネタの宝庫です。
クイズ方式でもよし、ナッジの事例を探そうというような形で問いかけても良
いでしょう。
・労働や福祉、税の問題、新たに課題となっている防災教育などでも事例や考察
のテーマとして使える箇所がたくさんあります。
・生活指導面でも、「わかっているけれどできない事例」をあげさせて、その対
応を考えさせることができるでしょう。

(4)感想
・大竹先生は現在、新型コロナに関する専門家会議の臨時メンバーとのことです。
ナッジを使って「あなたが三密状態を避けることが、周りの人の命をたすける」
というメッセージを発することが有効との見解を発表されています。
・ハラルの本がマクロの対応に対して、大竹先生のこの本はミクロの対応です。
両者があいまって、コロナショックを乗り越え、その後の社会を展望すること
ができるのではと感じます。(新井)
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【 6 】編集後記「みみずのたはこと」
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本号はこれまでと違って寄稿あり、授業案あり、アンケートありで大変長くなり
ました。学校休業という異常事態のなかでのメルマガということで、じっくり吟
味していただければ有り難く思います。
強いられた休業ですが、その間に新しい試みやこれまで取り組めなかったもの
を一つでもやってみると精神的に少しは前向きになれるかもしれません。異常事
態では、人間の本性がでるという指摘も読みました。カミュ『ペスト』を再読し
てそんな言葉が胸に響きます。どうぞ皆様もご健勝にお過ごしください。(新井)
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