reader reader先生
 何かいいことがありそうな10月を迎えました。
 そのいいことのひとつを紹介します。夏休み経済教室で皆様と検討してきました「シン経済教育」に関する資料を、経済教育ネットワークホームページに掲載しました。
「シン経済教育の趣旨」、「シン経済教育の授業案」、「シン経済教育の実践」をご覧ください。こちらです。
  
 それでは、メールマガジン10月号のスタートです。
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【今月の内容】 今月は次の4つの内容をお届けします。
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【 1 】最新活動報告・・・2026年9月の活動報告です
【 2 】定例部会のご案内・情報紹介
【 3 】授業のヒント…【プレイバックパート2「夏休み経済教室2026」】
【 4 】授業で役立つ本…授業づくりのヒントになる本を2冊紹介します。
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【1】最新活動報告・・・2026年9月の活動報告です
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■ 東京部会(No.151)を開催しました
  日時:2026年9月26日(土)15:00~17:00 
  場所:慶応義塾大学三田キャンパス東館5F
内容の概要:
① 佐藤英司先生(福島大学経営経済学類)より「市場競争と消費者保護---シン経済教育 (第 4 講・第 5 講)の実践」の報告がありました。
② 吉村慈子氏(東京証券取引所)より夏休み経済教室開催報告がありました。
③ 新井明先生(筑波大学附属中学)より「夏休み経済教室の総括と、今後の『シン経済  教育のあり方』を考える」の報告がありました。
詳しい内容は 近日中に「経済教育ネットワークホームページ」に掲載する予定です。
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【2】定例部会のご案内・情報紹介
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■ 東京部会(No.152)を開催します。
  日時:2026年11月7日(土)15:00~17:00 
  場所:慶応義塾大学三田キャンパス東館4Fオープンラボ
     ハイブリッド形式でオンライン会議(Zoom)も併用します。
  申込方法:
   https://econ-edu.net/application/event-application/
                   よりフォームにてお申し込みください。
■札幌部会(No.35)を開催します。
  日時:2026年11月21日(土)13時30分~17時00分(受付開始13:00~)
場所:キャリアバンクセミナールーム
    札幌市中央区北5条西5丁目7 Sapporo55ビル5階(JR札幌駅紀伊国屋のビル)
    (対面のみでの開催です) 
  内容: 「空港と教育のコラボ事業」
    1) 教材開発・研究実践報告
    2) 研究討議「空港と教育」の更なる深化に向けて
  申込方法:
  https://econ-edu.net/application/event-application/
                よりフォームにて お申し込みください。
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【3】授業のヒント
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プレイバックパート2「夏休み経済教室2026」
執筆者 金子幹夫

1.コーヒーの香りが似合う季節になりました
 先月号では、ドリップコーヒーをイメージして経済教育の内容について考察してみました。今月は、この発想で経済教育の前後にある学習内容を捉えたとしたら、どのようになるのでしょうかということを皆さんと考えてみたいと思います。

2.政治的な見方・考え方を捉える手がかり
 本稿執筆のきっかけは、先生のための「夏休み経済教室」で講演いただきました鈴木一人先生(東京大学公共政策大学院)による「国際政治と経済の基本」にあります。
 鈴木先生は「政治の原理は、権力、利益、規範が働いて秩序が形成される」と説明されていました。筆者には、鈴木先生の指摘は、社会(公民)科教師が政治的な見方・考え方を教える時に有効なドリップされた内容に見えたのです。

3.政治的な見方・考え方を抽出すると?
 先月号では、教師が経済を教える時に必要な学習内容をコーヒーの抽出に例えて示しました。膨大な学習内容も、ドリップすると「希少性、分業と交換、つながり、信頼、機会費用、効率と公正」という教えなければいけない柱が見えてくると例えたのです。
 鈴木一人先生は、政治的な見方・考え方を教える柱を抽出して「権力、利益、規範」と表現したのではないかと受け止めたのです。

4.4つの基盤と架け橋
 新しく示した経済教育では、経済的な見方や考え方を解釈するために必要な4つの基盤を示しました。その土台となる部分は「法律・制度・税・社会保障・環境・文化・公共の意思」です。
 この土台は「私たちの暮らしを互いに支え合う社会の仕組み」を学ぶにあたり、政治的分野と経済的分野の学習内容を結びつける架け橋の役割も果たしています。抽出された各用語は、社会(公民)科教師が教える内容を最もシンプルに示したものとして解釈できそうです。

5.政治と経済を学ぶための品質保証
 あらためて、経済的分野及び政治的分野の学習内容として抽出された用語を並べてみてみます。
 政治の原理は「権力、利益、規範」が働いて秩序が形成されるというものでした。経済学習において抽出されたものは「希少性、分業と交換、つながり、信頼、機会費用、効率と公正」でした。
 どちらも、世の中の仕組みを、ものすごくシンプルに表現したものです。教師が、この用語全体を眺めたときに、どのように解釈することができるのでしょうか?

6.いろいろな眼
 社会(公民)科を教える教師が、ドリップされた用語を見て、社会の仕組みを示す文を作成することで、生徒に何を学ぶのかを明確に表すことができると思うのです。
 教師が、1つひとつの単元を詳しく見る「虫の眼」に加えて、社会(公民)科全体を語る「鳥の眼」を意識することで、生徒の知識は混乱しなくてすむはずです。さて、どのように文を作ることができるのでしょうか?

7.キーワードをつなげて作文すると?
 例えば、次のように表現することができそうです。
 まず、社会を適切に治める規範と権力のあり方(政治)を学ぶ。
 その社会の中で、利益を求めるプレイヤーの動向を見てみよう。
 各プレイヤーは希少性を背景に、利益を求めて競争する。
 競争に勝つために効率的に分業と交換を行い、そこにつながりが生まれる。
 つながりを維持するには、規範に裏打ちされた信頼が必要だ。
 しかし、力の偏りやルール破りによって不公正はなくならない。
 だからこそ、再び社会を適切に治める規範と権力のあり方へと立ち戻るのだ。
つながりを維持するために規範を背景にした信頼が必要だ。
 ところが、力の偏りやルール破りによって不公正はなくならない。
 だから社会を適切に治める規範と権力のあり方が問われるのだ。
 と作文してみました。政治的分野と経済的分野の学習内容をドリップして再構成する試みです。

8.ハンドドリップは強い
 この作文における用語の並べ方やつなぎ方が適切かどうかはわかりません。適切な並べ方やつなぎ方はいくつかあると思います。教師が、生徒を見て、その生徒が腑に落ちるまでストーリーの再構成を続けるわけです。
 この作業にはAIを使わない方がいいです。生きている教師が目の前の生徒を推測し、生きた言葉の組合せを考えるべきです。最近の缶コーヒーは美味しいですが、人の手で豆を挽いて抽出したコーヒーには勝てません。

9.全体を振り返ると
 プレイバックパート2は、先生のための「夏休み経済教室」の第一日目と第二日目を合わせて捉え直してみるという振り返りの一例を示してみました。
 参加した皆様だけでなく、残念ながら出席できなかった皆様にも伝わるように心がけて書いたつもりです。引き続き皆さんと共に考えていきたいと思います。
 当日の資料と共に記録はHPに掲載されています。(大阪会場8月12日、13日、 東京会場8月18日、19日) 今月はここまでです。
     (金子幹夫)
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【4】授業で役立つ本 
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今月紹介する本は
服部孝洋『為替介入とは何か 200兆円規模「外為特会」が生まれた謎』集英社新書2026年
 と
奥村信幸『信頼できるニュースって何? つくり方から考える』岩波ジュニア新書2026年
                                 の2冊です。
■ 服部孝洋『為替介入とは何か 200兆円規模「外為特会」が生まれた謎』集英社新書2026年
① なぜこの本を選んだのか?
 「先生、為替介入って何ですか?」という生徒からの質問に、「待ってました! その質問」というように自信を持って対応できるための一冊になると思い選びました。本書は、金融だけでなく財政に関する理解も深めることができる一冊だと思います。

② どのような内容か?
1.服部孝洋先生について
 服部先生は東京大学金融教育研究センター特任准教授です。著書に『はじめての日本国債』(集英社新書)などがあります。金融に関して、生活者目線からの発信を行っています。

2.なぜ為替介入を行うのか?
「円安に対応するために、巨額な為替介入をした」というニュースをどのように解釈すればよいのでしょうか? 為替介入を行う権限を持っているのは財務省で、意思決定者は財務大臣です。何の目的のために? 具体的にどのようにして介入するのでしょうか?(第1章)
                          
3.負債を持つ一方で資産を持つことにもなります
 財務省が実施する為替介入の大部分はドル・円の為替レートへの介入だそうです。そして、そのほとんどが、行き過ぎた円高への対応です。円高対応ですから、日本政府は短期的に円を借りて、ドルを買うということになります。
 この買ったドルで米国債を購入します。為替介入の結果得られた外貨資産は、外国為替資金特別会計(外為特会)という財布に入り、財務省が管理するのです。  (第1章)
                        
4.為替介入の目的は?
 ところで為替介入の目的は何でしょう? 適正レートから乖離した為替レートを適切なレートに戻すために行うと、とりあえずは説明できます。
 それでは為替介入そのものに効果はあるのでしょうか? 経済学者の多くは、効果はあるけれども一時的なものだと判断しているようです。財務省が数量面で為替市場を圧倒することには限界があるのですね。  (第1章)

5.上から下に向けての政策判断
 為替介入を行う権限を持っているの財務省の事務方ツートップは事務次官と財務官です。為替介入を所管する為替市場課です。略して為市課(ためしか)と呼ぶそうです。
 政策判断は、通常下から上に向かいますが、為替介入の場合には上から下に向かうそうです。なぜでしょう? (第2章) 

6.財務省、金融庁、日本銀行が役割を分担している
 それでは、財務省が行う為替介入の実態はどうなっているのでしょうか? 「覆面介入」「単独介入」「協調介入」「口先介入」「委託介入」について教えてくれます。財務省、金融庁、日銀それぞれにどのような役割があるのかを知ることができます。

7.為替介入で得た資産はどうなる?
 財務省は、為替介入の結果、多くの資産を得ました。残高は約200兆円です。1990年代と2000年代に巨額な円売り介入をしたためです。
 この資産は、主として米国債で保有しています。なぜ米国債で保有するのでしょうか?
その理由を読み取ってみてください。 (第4章)

8.特別のお財布に入れておくということ
 この200兆円の資産には、特別のお財布として「特別会計」が用意されています。これは一般会計とは異なります。
 本書で一般会計と特別会計との関係について読み取ってみてください。「財政の硬直化」という考え方を用いてわかりやすく教えてくれます。 (第5章)

9.予算って1年単位のはずですが・・・
 特別な会計ですから、ルールも特別です。一般に、国や地方自治体(学校も含みます)の「予算」には会計年度独立の原則があります。ところが為替介入により得たお金に会計年度独立の原則を当てはめると、いろいろな問題が発生します。
 そこで「原則の例外措置」をつくったのですが、その時の背景が書かれています。この例外措置に関しては、ある概念が紹介されています。どのような概念なのでしょうか?                                  (第5章)  

10. 200兆円を管理するリスク
 この介入により得た約200兆円のお金を管理するのはたいへんです。為替リスクもあれば金利リスクもあります。どのようなリスクがあるのかを具体的に知ることができます。
 先生のための夏休み経済教室でも取り上げました金利と価格が逆の動きについて、わかりやすく教えてくれます。 (第6章)

11.政府の財源としての外為特会
 この200兆円のお金は、政府の財源です。一般会計歳出・歳入の円グラフの、どの部分に外為特会の剰余金は含まれるのでしょうか? その場所を読み取ってみてください。
 この剰余金が発生するために必要な条件は何でしょう? よく新聞にも掲載されている、ある数値に注目します。  (第8章)   
     
12.それ・・・日銀の直接引き受けにならないの?
 財務省は、為替介入に必要な円を調達するときに「政府短期証券」(FB)を発行します。この債権は「国債」とはみなしていない不思議な仕組みが紹介されています。
 財務省は、FBを発行すると、それを日銀に購入してもらいます。この行為は直接引き受けにならないの? と思うのですが、そうではないということを明快に教えてくれます。(第9章)
                               
13.どうして為替市場に取引所がないのか?
 ここで素朴な疑問です。どうして為替相場は取引所取引にならないのでしょうか? この問いに、魚市場やコンビニエンスストアの例えを使って、わかりやすく教えてくれます。
 「私たちが今100円持っていて、1ドルを受け取ったとします・・・」といった具体的な書きぶりは、読み手として助かります。 (第10章)

14.夏休み経済教室の会場について  
 取引所といえば、東京証券取引所や大阪取引所が思い浮かびます。この2つの取引所は何が違うのでしょうか?
 実は、大阪取引所は先物取引の主たる舞台なのです。先物取引は金融産業において日本が世界に最も誇れるイノベーションの一つとして紹介されています。
 先生のための夏休み経済教室が開催された日本取引所グループ誕生の歴史を知ることができます。 (第12章)

15.本書の全体像
 以上が、本書の内容です。最後に目次を示して全体像を眺めることにします。
 第1章  為替介入と外為特会とはなにか
 第2章  為替介入を知るためには財務省の体制を知るべき
 第3章  為替介入の実態
 第4章  財務省は外貨建て資産をどのように運用しているのか
 第5章  予算と特別会計
 第6章  外為特会とリスク管理
 第7章  財源としての外為会計
 第8章  外為特会によるドル貸し出し
 第9章  為替介入と資金調達
 第10章 為替市場とデリバティブ(金融派生商品)
 第11章 フォワード(為替スワップ)とカバー付き金利平価
 第12章 通貨先物と海外の投機筋のポジション

③ どこが役に立つのか?
 「先生、為替介入って何ですか?」という質問に回答するための枠組みを形成することができます。その枠組み形成に必要な外為特会についての知識を整理することができます。頻繁に報道される日米の金利について、これまでよりも敏感に見るようになるはずです。
 そして、為替介入をきっかけに、日本の財政についても深く知ることができます。「予算のプロセス」を紹介しているところは、教材を創るときに役立つ具体例でいっぱいです。
 為替介入をきっかけに、経済の仕組みについて、私たちが知っている知識と結びつけて教えてくれるところが本書の持つ大きな強みだと思います。 

④ 感 想
 紹介者(本コーナー執筆者)が教師になる前、二十歳そこそこの頃のことでした。新聞に掲載された写真を見て「この毎日テレビで見かける某有名な政治家と一緒に写っている方は誰だろう?」と思い調べたことがあります。それが行天豊雄さんでした。
 何も知らなかったので、どこの選挙区から当選した方なのか? と調べはじめたのです。その過程で、(政治家ではなく)財務官という仕事があることを知りました。本書は、 どのような人がどのような仕事を分担しているのかを理解できる一冊だと感じました。

■ 奥村信幸『信頼できるニュースって何? つくり方から考える』岩波ジュニア新書2026年
① なぜこの本を選んだのか?
 私たちは「社会の土台」を教えるときに、何を教えればよいのでしょうか。その手がかりを見つけることのできる一冊だと思い本書を選びました。
 タイトルにもあります「信頼」を用語として捉えるのではなく、感覚として受け止めることのできる一冊になると思います。

② どのような内容か?
1.奥村信幸先生について
 奥村先生は、テレビ朝日で報道局ディレクターなどを務めた後、立命館大学産業社会学部教授を経て武蔵大学社会学部教授で研究を続けています。
 立命館時代のインタビュー記事から、「ジャーナリズムは歴史の最初の下書きである」という言葉を引用しながら、ニュースと歴史の根っこは同じものなのだと捉えていることがわかります。

2.ニュースって何?
 ニュースが無条件で信用される時代が長く続いていました。この間、新聞・テレビといった伝統的メディアは、ニュースが信頼されるための条件を説明してきませんでした。
 この、ニュースを無条件に信用する時代は終わったようです。私たちはメディアに向かって感想や要望を伝えなくてはいけない時代が到来したのです。

3.場面設定
 そこで、本書は「信頼できるニュース」をどのように発信していくのかというテーマを考えていきます。舞台は、どこにでもありそうな高等学校です。
 この高校には、新聞が2紙登場します。一つは、生徒会が学校の支援を得て発行する紙の「あおぞら高校新聞(以下、高校新聞)」、もう一つは部活動として作成する「あおぞらタイムズ(以下、タイムズ)」です。予算が足りないため、ウェブ上で発信しています。

4.制服をめぐる二つの新聞報道
 最初の話題は「制服」です。高校から突然「夏季の制服デザインを新しくする」というアナウンスがあったのです。
 高校新聞は事前に情報を学校からもらっていたようで、デザインのイメージ画を掲載していました。学校の支援を受けている新聞の強みです。
 一方の「タイムズ」は、制服の必要性について皆と話し合うべきではないかという視点で記事を企画します。ところが、発行される二日前に生徒指導の先生から、記事の掲載をやめるように言われます。本案件は、どのような問題点を示しているのでしょうか?

5.曖昧なルールを定めるということ
 学校は、校則の曖昧な表現を利用して記事の内容変更を迫ったようです。学校は特別なところで、部活動が作成するメディアの編集権がローカルな法(校則)により一定の制限を受けるという解釈が示されます。
 ここで本書は、アメリカ合衆国憲法修正第一条を取り上げます。当時はニュースや意見を広く知らせる方法が、演説、新聞、本の出版しかありませんでした。表現の自由についての原型がどのように形成されていったのかという歴史を知ることができます。(第1章)

6.先生の話が長いのは・・・? 
 その後「タイムズ」の生徒たちが校長先生に質問します。その結果、校長先生は全校集会で説明することになりました。高校新聞とタイムズから質問を受けると約束したのです。
 全校集会が始まります。校長先生は制服の問題とは関係のない話しを延々と続けます。質問時間は、最後の2分間だけでした。ここで私たちが考えるべき問題が5個提示されます。(第2章)
 
7.外部の人間に対する力学がある?
 物語中の学校だけでなく、世の中において権力を持つ多くの人は、嫌がる質問をする取材を避けたいわけです。
 日本は先進7カ国の中で「報道自由度ランキング」は最下位だということ(本書執筆時点)を「記者クラブ」を題材にして教えてくれます。生徒と、権力を持つ学校との対話は読み手を引きつけます。(第2章)

8.取材をするときに大切なこと
 次に、部活動の新聞紙 「タイムズ」は「知る人ぞ知る地元の名所」という特集を組むことになりました。対象は「右田亭」と「左川商店」という二件のお団子屋さんです。
 取材の過程で、ライバル関係にあるのに片方だけを取材するという問題、根拠なしに「いい店だ」と書いてしまう問題、取材時にお団子をごちそうになってしまうという問題が出てきます。ここで本書は、「取材するというのはどういうことか?」を教えてくれます。

9. 報道という仕事に必要な資格は?
 新聞は、公平・公正なニュースを伝える仕事なのですが、実は正式な資格はありません。なぜでしょう? 資格がないことと信頼を得ることとはどのような関連があるのでしょうか? 「なるほど!」と思わせる説明があります。
 ちなみに、自ら取材やニュースを発信するルールや手順を定め、HPで報道の原則を公開している日本のメディアは2社あるそうです(2026年時点)。どこだと思いますか?(第3章)
               
10.バスケ部エースからの相談
 ある土曜日の午後、「タイムズ」の部室にバスケット部のキャプテンが来ました。
 監督の指示で特別なサプリを飲むように指示されている。指示されたのはレギュラーメンバーが中心である。持久力がアップするらしいそのサプリには何も印刷されていない箱に入っている。どうしたらよいのかわからないので力を貸してほしいという相談でした。
 
11.情報源を守る
 さっそく取材を・・・というわけにはいきません。うかつに監督に取材したら、誰が新聞部に相談したのかという犯人捜しが始まってしまうからです。ここには、情報源を傷つけないという考え方があるのです。
「タイムズ」の部員たちは、複数の証言を得るために、ほかのバスケット部員にきくことにしました。その結果、この話が真実であること、そして監督の力が強いことがわかってきたのです。
 「タイムズ」の果たす役割は何でしょう? 新聞部の部員は「これは生徒の安全を学校がどう考えるかの問題だ」と言います。人権の問題として取材をするというのです。

12. 高校生は入ってはダメ
 物語は急展開します。この件について、「○○高校バスケット部でサプリ無断実験、問われるスポーツ倫理」という記事で新聞、テレビが一斉に後追い報道をはじめるのです。
 学校は記者会見を行うのですが、「タイムズ」の記者は部活動ということで入り口で止められてしまいます。読者は「権力」がどのようなものかを感じ取ることができます。
 
13. 自分でルールを決めることができる力
 本書はこの「権力」を「自分でルールを作り、守らせる強制力をもっているということ」(p.101)だと説明しています。
 学校も権力を持っているのですね。ニュースは、この権力の腐敗や権力の暴走を止める重要な役割を果たさなければならないのです。そしてニュースは、問題の発生を知らせ、議論の場をつくり、リーダーに方針の変更を迫るための根拠を提供するのです。(第4章)
                                 
14.謎のアカウント登場
 本書最後のストーリーは生徒会長選挙です。二人の候補が出ます。投票日まであと12日となった時、謎のアカウントが登場し「重大発表をする」という予告があったのです。
 予告通りに配信された内容を見ますと、そこには、候補者の音声が添付されたレイシスト発言が掲載されていました。
 「タイムズ」の部員が、音声の主とみられる候補者に確認をとろうとします。ところが候補者は新型コロナウィルスに罹患して入院してしまいました。「確認できたことしか書かない」という部員の発言が印象的です。

15.正しい情報を伝える目標の先にあるものは?
 部員たちは正しい情報を伝えたいのですが、それには時間がかかり不安でいっぱいになります。その時、大学の先生がアドバイスをします。
 それは「こんな情報が足りていません。正しい情報が出るまで判断を待ちましょう」と注意を促すことがニュースメディアに求められているというものでした。今の時代に、何がメディアに求められているのかを感じ取ることができます。

16.フェイクニュースという言葉は使わない
 今、「フェイクニュースという言葉はできるだけ使うのを控える」というのが世界的な常識になっているそうです。
 もともとは「正確でない情報」を示す言葉でしたが、一部のリーダーが気に入らないニュースメディアに対して「フェイクニュース」と呼んで批判するようになったからです。一部のリーダーって誰なのでしょう? 本書の中から探してみてください。

17.本書の全体像
 以上が、本書の内容です。最後に目次を示して全体像を眺めることにします。
 ウォームアップの話――ニュースとは何か?
 プロローグ あなたの学校でも起きる問題かも...
 1章 何を着るかも「表現の自由」だ
 2章 質問できない説明会に「知る権利」はない
 3章 その「おいしい」が信頼される条件とは
 4章 不正を告発した選手を守るには
 5章 生徒会長選で飛び交うフェイク情報に立ち向かえ
 エピローグ ニュースの社会的な役割とジャーナリズムについて

③ どこが役に立つのか?
 中学校社会科の政治分野や高校「公共」(政治的分野)の学習を捉え直すのに役立つ一冊です。
「もしも新聞(メディア)が存在しなかったら、国会や内閣などの統治機構はどのように振る舞うのか」という視点は、社会や経済活動を支える枠組みがどのように成り立っているのかを考える良い問いになります。
 本書は、学校という身近な舞台を通して「権力」とメディアの関係を描いており、情報への向き合い方や本物の「信頼」について考える授業づくりに活用できます。
 生徒は、この「信頼」という基盤があってこそ人々がつながりを形成し、豊かな経済活動を営むことができるのだと実感するのではないでしょうか。

④ 感 想
 新しく提案している経済教育には「分業と交換にはつながりが必要になる。つながるためには信頼がなければならない。信頼があったとしてもそれでもなくならないのが不公正」という一文があります。
「それでもなくならない不公正」に対して、私たちはどのような工夫をすることができるのでしょうか? 現代だからこそ必要な工夫としてジャーナリズムの果たす役割があるということを教えたくなる一冊だと思います。
  (金子幹夫)
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【5】編集後記「~自己観照~」
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 映画「踊る大捜査線」シリーズが地上波で放映されていたので、久しぶりに見ました。2回目に見る映画は不思議です。初回に見逃していた部分がたくさん見えてくるのです。しかも細かなところが。「あー、こんな工夫をしていたのか」の連続でした。
 さて、ふり返りますと私たちも授業づくりでいろいろな工夫をしています。「ここ見てほしいな」というところもたくさんあるわけです。生徒たちは、この工夫に気がついてくれるかな? とワクワクしながら授業を進めます。 
 授業に再放送はありません。だからこそ一回の授業を、より一層丁寧にすすめるわけです。再放送がない代わりにふり返りがあります。「そういうことだったのですね」と言わせる場面です。うまくいくこともあれば、そうでない場合もありまして・・・。何か「これだ!」というような再放送のアイディアはないのでしょうか? なーんてことを考えて秋を迎えています。
       (金子幹夫)
 
 
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