reader reader先生

 何かいいことがありそうな9月を迎えました。
 先生のための「夏休み経済教室」が無事に終了しました。皆様に心から御礼申し上げます。この経済教室は、今年で20年目を迎えました(コロナの影響で開催できない年が一年ありましたので回数は19回です)。その20年目に、「シン経済教育」という大きな提案をしました。教師、生徒の視点で経済教育をどのように読み解くのか。新しい経済教育を引き続き皆様と共に考えていきたいと思います。それでは9月号のスタートです。
────────────────────────────────────────
【今月の内容】 今月は次の4つの内容をお届けします。
────────────────────────────────────────
【 1 】最新活動報告・・・2026年8月の活動報告です
【 2 】定例部会のご案内・情報紹介
【 3 】授業のヒント…【プレイバック「夏休み経済教室2026」】
【 4 】授業で役立つ本…授業づくりのヒントになる本を2冊紹介します。
────────────────────────────────────────
【1】最新活動報告・・・2026年8月の活動報告です
────────────────────────────────────────
■ 先生のための「夏休み経済教室」(大阪会場)を開催しました。
日時:2026年8月12日(水)~8月13日(木)9:30~16:00
 場所:大阪取引所4階OSEホール(大阪証券取引所ビル)
内容の概要:
<講演> 8月12日(水)
① 斎藤史貴氏(東証金融リテラシーサポート部課長)よる「BASIC 株式会社と証券市場の  関わり」
② 大竹文雄先生(大阪大学感染症総合教育研究拠点(CiDER)特任教授)による「生成AI時代に必要な能力を経済学で考える:代替か補完か」
③ 鍋島史一先生(教育実践研究オフィスF代表)による「生成AI時代の授業デザイン-授業作りのどこで、どう使う-」
④ 松島斉先生(東京大学国際高等研究所東京カレッジ特任教授)による「制度信託の思想を生かす経済教育」
 当日の内容については
 https://econ-edu.net/wp-content/uploads/2026/08/2026NatsuKeizai0812report.pdf
                            をご覧ください
<授業実践の提案と報告> 8月13日(木)
① 篠原総一先生(経済教育ネットワーク理事長)、佐藤英司先生(福島大学人文社会学  群経済経営学類経済学コース准教授)によるシン経済教育の提案
② 提案を受けてのパネルディスカッション
  篠原総一先生、佐藤英司先生、栗原久先生(実践女子大学研究推進機構研究員)、
  河原和之先生(前立命館大学等非常勤講師)、金子幹夫(明治大学特任教授)。
③ 提案を受けての実践発表と質疑
  杉浦光紀先生(東京都立新宿山吹高等学校主任教諭)
  市川慶太先生(埼玉県さいたま市立白幡中学校教諭)
④ 会場参加者全員による『みんなで話そう』
  これからの経済学習の進め方についてディスカッションしましょう。
当日の内容については
 https://econ-edu.net/wp-content/uploads/2026/08/2026NatsuKeizai0813report.pdf
         をご覧ください。
■ 先生のための「夏休み経済教室」(東京会場)を開催しました。
日時:2026年8月18日(火)~8月19日(水)9:30~16:00
 場所:慶應義塾大学三田キャンパス北館ホール+オンライン同時配信(Zoom)
 内容の概要:
8月18日(火)<講演>
① 斎藤史貴氏(東証金融リテラシーサポート部課長)よる「BASIC 株式会社と証券市場の  関わり」
② 安藤至大先生(日本大学経済学部教授)による「AI時代を生きる中高生を育てる
  先生方に伝えたいこと」
③ 鈴木一人先生(東京大学公共政策大学院教授・国際文化会館地経学研究所長)によ   る「現在の国際政治、経済の情勢を中高生にどう教えるか」
④ 渡邉雅子先生(名古屋大学名誉教授)による「<多元的思考>で激動の世界とAI時代を  生き抜く」
 当日の内容については
 https://econ-edu.net/wp-content/uploads/2026/08/2026NatsuKeizai0818report.pdf
                         をご覧ください  
 8月19日(水)<授業実践の提案と報告>
   大阪会場第2日目(8月13日)と同じ内容です。
 
 当日の内容については
 https://econ-edu.net/wp-content/uploads/2026/08/2026NatsuKeizai0819report.pdf
をご覧ください。
────────────────────────────────────────
【2】定例部会のご案内・情報紹介
────────────────────────────────────────
■ 東京部会(No.151)を開催します
日時:2026年9月26日(土)15:00~17:00 
  場所:慶応義塾大学三田キャンパス東館5F(予定)
  お申し込みはこちらです
https://econ-edu.net/application/event-application/
                    よりフォームにてお申し込みください
────────────────────────────────────────
【3】授業のヒント
────────────────────────────────────────
プレイバック「夏休み経済教室2026」
執筆者 金子幹夫
1.はじめに
 第19回「先生のための夏休み経済教室」が無事に終了しました。今月号は、この経済教室の一部をふり返り、その内容について一緒に考えてみたいと思います。
 経済教室に参加した皆様は、その時の様子を思い出しながらお読みください。残念ながら参加することができなかった皆様にも、当日の様子がわかるような記述を心がけます。

2.「シン」と「現」と「旧」
 今回の「夏休み経済教室」は、初日を「講演会」,第2日目を「授業実践を考える日」としました。本稿は第2日目の授業実践を考える日について取り上げます。この日のテーマは「シン経済教育」でした。
「シン」ですから「現」や「旧」があるわけです。注目したのは「現」です。今年の経済教室は、現在実践されている経済教育の内容に、どのような課題があるのかを皆様と共有しました。そして、この問題を解決するためにどのような工夫をすることができるのかを考え、「シン経済教育」なるものを発信しました。

3.「現」の問題点は?
 それでは、現在の経済教育にどのような問題があるのでしょうか? 経済学者、教師、生徒の視点で整理してみます。
 経済学者は、私たちが持っている教科書に書かれている経済的分野の記述を見ると、とてもわかりやすく書かれていると受け止めるそうです。同時に経済学者は、この記述は生活者の視点から読むことを想像すると、わかりにくいのではないかと思うそうです。
 なぜなのでしょうか。それは教科書が、経済学のテキストと同じ枠組みで書かれており、生活者が理解するための枠組みとは異なるからとのことでした。

4.「シン経済教育」が出来上がるまで(その1)
 生活者の中には、教師と生徒がいます。この両者が用いる教科書が、経済学者の世界で通用する枠組みをもとに書かれているのだとすると、困ったことになります。経済学の世界で共有されている順番で書かれているからです。
 この経済学の世界で共有されている順番による説明が、生活者の心にそのまま届くのであれば問題はありません。しかし、このままですと、経済学者の世界で共有されている認識と、それを受け止める生活者の認識に「ずれ」が生じてしまうかもしれません。

5.「シン経済教育」が出来上がるまで(その2)
 この「ずれ」をそのままにしておくと、生徒にとって「経済は分かるようで、分からない(適切に理解できていない)」学習になってしまうかもしれないのです。
 この困ったことを解消するためには、現行の教科書記述を生活者の視点で描いたものに翻訳する必要があります。そこで、次のように考えました。
 経済学者が生活者の視点を意識して学習内容とその順番を考えます。それを教師が読み、生徒に教えるとしたらどのような問題があるのかを検討します。検討結果を受けて経済学者が再構成します。この作業を繰り返しながら「シン経済教育」が出来上がってきました。

6.見えるものから見えないものに
 この再構成は、教師が「経済を教える」には、どのような工夫ができるのかという視点で繰り返し行われました。
 生徒にとって「見えるものから見えないものにという順番で教えよう」、そして「身近なものから少しずつ遠いものにという順番で教えよう」という精神を貫いて再構成を繰り返しました。

7.「シン経済学」の特徴は?
 そして「シン経済教育」の原案が出来上がったのです。筆者は、この「シン経済学」の特徴は「省略」と「順番」にあると解釈しました。経済学者と生活者(教師・生徒)による認識のズレを理解するために「省略」と「順番」について問題を整理することで、ものすごく教えやすくなると読み取りました。
 この「省略」の問題と「順番」の問題とはどのようなものなのでしょうか? その問題をどのように整理したのでしょうか? 順番に見ていくことにします。

8.教科書は「省略」されている?
 19歳の学生が大学で手にする経済学の入門書は、たいてい500ページ近くあります。一方、17歳前後の高校生が手にする公民科の教科書には、経済的分野の記述が70ページ前後でまとめられています。ここで学ぶのは、経済的な見方や考え方です。
 だいぶページ数に差があります。2025年度の夏休み経済教室で篠原総一先生は、高校生が読んでいる教科書は、大学テキストのダイジェスト版のようだと教えてくれました。
 たしかに、両者の目次構成は似ています。どうやら、教師と生徒が持っている教科書における経済的分野の記述には、何かが「省略」されているという問題があるようです。

9.何が省略されているのか?
 この「省略」の問題を、私たちはどのように受け止めればよいのでしょうか。この省略された部分を補うことを考えるのでしょうか? これはたいへんな作業です。
「シン経済教育」の作成過程では、この省略されている部分も含めて、経済を生活者に教えるために「何か大切なもの」があるのではないかという検討を進めてきました。この「大切なもの」を見つけることで「省略」の問題解決に向けての光が見えてくるのです。
 そこで示しましたのが経済教育全体に必要な概念として4つの基盤と6つのキーワードだったのです。
※ 4つの基盤は「市場経済の基盤」「インフラの基盤」「人間生活の基盤」「経済社会の   基盤」です。
   6つのキーワードは希少性、分業と交換、つながり、信頼、機会費用、効率と公正で   す。
 ※ 4つの基盤と6つのキーワードについての説明は、資料「社会を支える4つの基盤」に   記述されています。後日、経済教育ネットワークのホームページに掲載されます。   しばらくお待ちください。
 筆者のイメージですが、ドリップコーヒーを思い浮かべました。コーヒーの粉をフィルターに入れてお湯をそそぎます。やがて少しずつコーヒーが抽出されていきます。抽出された美味しいところ(大事なところ)が「シン経済教育」の柱だと解釈したのです。
 
10.順番の問題について  
 次は、教える「順番」の問題です。前述の「四つの基盤」には、順番(といいますか階層のようなもの)があります。
 一番下で支えているのが「経済社会の基盤(ルールや制度」、その上にあるのが「人間生活の基盤(教育・医療・福祉)」、その上にあるのが「インフラの基盤(水・電気・交通)」、そしていちばん上にあるのが「市場経済の基盤」です。
 この階層を意識しながら、はじめに教えるのは「経済社会の基盤」です。ルールや制度といった私たちの生活を支える土台について学習します。
 この土台を意識しながら「市場経済の基盤」について学習します。このモノやサービスの生産や交換が行われる仕組みを学習した後に、市場で取引できない暮らしを支えるインフラ基盤について学習します。そして皆が安心して暮らすことのできる生活の土台としての「人間生活の基盤」を取り上げます。
 
11.そしてストーリーとキャラクター
 これに加えてもう一つ。「ストーリーとキャラクター」です。筆者は、本メルマガ(2026年3月号)で、経済教育の教材にこの二つを加えることで理解が深まると提案しました。 この全てを取り入れたのが、夏の経済教室で紹介した第1講から第10講までの授業プランです。

12.「シン経済教育」を教師はどう受け止めるのか?
 ここからは授業実践者の眼で「シン経済教育」を受け止めます。
 皆さんは、授業研究の学習会や講習会等で教材を紹介されたときに、どのようなことを考えますか? 筆者は「目の前の生徒に合わせて、どのように改造できるのか?」をはじめに考えます。
 教室にいる生徒を想像しながら、どのように改造したら腑に落ちるまで理解してくれるのかを考えたいからです。 そこで、この「シン経済教育」は、生徒に合わせてどのくらい改造することができるのかを試してみました。授業実践の試案を紹介します。

13. なんで四つの基盤なの?
 「シン経済教育」は、4つの基盤と6つのキーワードを示しました。このことを知った教師は、どのような教材化が可能なのでしょうか?
「みなさーん、これから経済の学習をします。経済の学習内容を理解するにはコツがあります。それは4つの基盤と6つのキーワードを理解することです」と説明することで理解する(理解したふりをする?)生徒はいそうです。
 しかし、生徒の中には「なんで4つなの? キーワードに7つ目はないの?」といった素朴な疑問を抱く人もいるのではないかと思うのです。大人の視点では効率よくまとめられている学習内容ですが、生徒の肌感覚には少し遠い場合もありそうです。

14.ストーリーとキャラクターを1枚の絵にすると
 それでは、生徒の肌感覚で教えるには、どのような工夫ができるのでしょうか?
 「シン経済教育」第1講は、「あの夜、当たり前が止まったー暮らしはつながっている」というお話からはじまります。第一文は「大型台風が直撃した翌朝、ケンジとアカリの町はまだ停電が続いていた」です。 (※ 中学校版資料より)
 筆者は、このストーリーをAIに読み込ませて「1枚の絵を描いてください」と依頼しました。絵の作成にあたっては、4つの基盤と6つのキーワードに関連することを読み取れるように指示しました。
 何度かAIと問答を繰り返した末にできあがった絵は、教材として使えそうです。そこで次に、1枚の絵をどのように使うことができるのかを考えます。  
  ※ この資料も近日中に経済教育ネットワークホームページに掲載予定です
大阪、東京共に第2日目の「パネルディスカッション」における金子(筆者)資料です。

15. 皆で1枚の絵をじっくりと見る(その1)
 授業では、教師が「この絵を見て気がついたことを1つあげてください」と発問します。ある生徒が答えてくれたとします。そこで教師は「それでは、隣の人、別の何か気づいたことをあげてください」と発問します。隣の生徒は、何か見つけたことを言ってくれます。
 発問は続きます。「その隣の人、これまでに指摘されていないことで、何か見つけたものを教えてください」という発問を繰り返していきます。
 この発問は、クラス全員分できそうです。後半に発言する生徒は、ものすごく細かなところを探し出して指摘してくれそうです。細かなところに、本授業で学んでもらいたいことに関する発見があるのです。

16.皆で1枚の絵をじっくりと見る(その2)
 筆者は、AIに「14」で描いてもらった前日の様子を、まったく同じ状況で描いてくださいという指示を出しました。台風が来る前の日ですから、平和な日常生活の風景が描かれているわけです。
 ここで2枚の絵(台風が来る前と後)を比較するわけです。「当たり前の毎日は、どのような仕組みで成立しているのでしょうか? 2枚の絵を比較して、気付いたことをあげてください」と発問します。
 さきほど1枚目の絵をじっくりと見ていますので、生徒はいろいろなところに気がつくと思います。これも、「前の人が言っていないことを指摘してみましょう」と指示して、多くの生徒に発言してもらいたいところです。

17.生徒に4つの基盤のきっかけを言ってもらう授業
 教師は、生徒の発言を板書します。それは、4つの基盤を意識した配置での板書です。生徒から「なんで私たちの発言をバラバラに書くのですか?」と指摘されたら、「どうしてだと思いますか?」と考えさせるのです。
 生徒には各塊の共通点を見つけてもらいます。その共通点を言葉で表現してもらいたいのです。絵を見て「水や電気などのインフラのことかな」「医療のことかな」「(いろいろな売買ができなくなっているので)市場のことかな」と言って欲しいのです。

18.あとから「4つ」に気付く展開
 生徒は、絵を見て4つの基盤すべてについて言ってもらわなくてもいいと思います。日常生活の絵を見て、当たり前の毎日がどのような仕組みで成立しているのかを生徒に言わせるきっかけをつくるのです。
 生徒が指摘しなかったところは、教師が補足します。結果として出来上がった板書が4つの塊になることを目指します。
 教師は「もしかしたら私たちの暮らしを支え合う社会の仕組みは、4つの基盤でできているのかもしれませんね」という仮説を共有することで、少しずつ学習が進んでいくわけです。
 ここまでの実践を一言で表現しますと、「これを教えたいな」ということを、生徒の発言の中から一緒に見つけてみたい実践、ということになります。

19.記事を根拠に6つのキーワードを考える
 次に筆者は、AIに「大型台風が直撃した翌日の新聞をつくってください」と指示しました。出来上がった新聞記事を生徒と一緒に読んでいきます。
 新聞には、テキストデータだけでなく、写真や資料も掲載されます。その紙面を見ながら、今度は6つのキーワードについて発問していきます。
 例えば「(当たり前の毎日では)どのような分業がなされているのでしょうか?」新聞記事から読み取ってみましょう」、「どのようなところで信頼を読み取ることができますか?」といった発問です。生徒には、新聞記事のどこを根拠にしたのかまで答えさせます。

20.改造について話し合いませんか?
 本稿後半では「シン経済教育」で示しました4つの基盤と6つのキーワードについて、どのような授業づくりが可能なのかという入り口を皆さんと考えてきました。
 生活者視点での、理解しやすい経済教育についての提案です。この提案を教室に持ち込むにあたり、「説明したことで教えることができる教室」もあれば、「説明したことで教えたことにしてはいけない」教室もあることに留意しました。
 皆さんは、目の前の生徒の状況に合わせて、「シン経済教育」をどのように改造しますか? 教材づくりについて話し合いませんか?  今月はここまでです。
                            
────────────────────────────────────────
【4】授業に役立つ本 
────────────────────────────────────────
今月紹介する本は
渡辺尚志『年貢 せめぎ合う江戸時代の領主と百姓』中公新書2026  と
重永 瞬『新しい日本地理 地図・統計・移動から読み解く』講談社現代新書2026年
                                の2冊です。
■ 渡辺尚志『年貢 せめぎ合う江戸時代の領主と百姓』中公新書2026
① なぜこの本を選んだのか?
 政治的分野、経済的分野、歴史的分野の学習において、「税」の知識を整理できるのではないかと思い選びました。
 この知識の整理は、小学校・中学校、そして高等学校の公民科、地歴科の教科書登場する「税」に関する知識の整理にもつながるはずです。

② どのような内容か?
1.渡辺尚志先生は?
 渡辺先生は、日本の歴史学者で一橋大学名誉教授です。日本近世史がご専門で、江戸時代の村と農民の歴史について研究しています。2022年4月から松戸市立博物館長に就任しています。

2.年貢の始まりは?
 歴史学習で出会う「年貢」は、いつ頃から始まったのでしょうか? どうやら11世紀から広がりはじめ、19世紀まで続いたようです。年貢は米だけではありません。麦や大豆で納められることも多かったようです。

3.なぜ百姓は年貢を納めたのでしょうか?
 領主と百姓の間で取り交わされた契約文書の第一条には、領主・百姓共に神仏を大事にすることが、第二条には、領主側に農業生産の条件整備に努める義務があることが記されています。第三条に、百姓には年貢を完納する義務があることが記されます。
 年貢は領主が百姓から一方的に搾り取るものではなく、領主が自らに課せられた責任を果たさないなら、百姓にも年貢を納める義務はないという契約関係があったのです。(第一章)

4.納める年貢の量を決める方法
 戦国時代になると村が前面に出てきます。年貢は個々の百姓に対して個別に賦課されたのではなく、村に賦課されたものです。
 どのくらいの年貢を賦課するのかは、検見(けみ)と呼ばれる作柄調査で決まります。サンプル調査ですね。この調査の結果、百姓のもとには収穫物の約三分の一程度が残ったようです。(第一章)

5.年貢=税とは異なる解釈がある 
 この賦課された年貢ですが、研究者の間では「年貢=税」と即断しているわけではないようです。田畑は誰のものかという議論があるからです。
 それでは、当時の大名や百姓は年貢をどのように捉えていたのでしょうか? どうやら「公儀の土地は大名が預かり、それを百姓が預かる」という共通認識があったようです。
 土地は誰のものか? そして土地の私有はいつころからどのようにして広がっていったのかという問いについて福沢諭吉らの文献を紹介しながら説明してくれます。(第二章)

6.農民の義務、武士の義務
 ここで、先ほどの「年貢=税」かどうかの問題に戻ります。どうやら江戸時代の百姓は
年貢を納めることが、その身分に応じた義務だと考えていたようです。百姓と武士が、それぞれ身分に応じた役割を果たしながら社会の安定を維持していたと捉えるのです。
 それでは武士の義務とはどのようなものでしょう? それは、武力で平和を維持し、農業基盤を整備し、百姓が安心して農業に励める環境を保障する義務です。本書では、江戸時代人は、年貢=地代というよりは年貢=税と認識していたのではないかと解釈します。(第二章)

7.町人にも貧富の差があった?
 ところで幕府の財政は年貢だけで賄えるものなのでしょうか? ここで登場するのが御用金や献上金です。実態としては、ほぼ献金のようなものでした。なぜ町人や百姓が献金のようなものに応じるのでしょうか?
 それは、幕府や藩が平和を維持しているおかげで庶民が安心して暮らせるのだから、御用金を上納してその恩に報いるべきだという論理が働いているのだと教えてくれます。 (第二章)

8.幕府領の視点から見る年貢
 幕府は、収入の大半を年貢に依存していました。この年貢収入の中から、将軍家の生活費と旗本・御家人の給与を支出し、残りを行政費用に充てていました。この財政状況を教科書に記述されている内容と合わせて理解する具体例はあるのでしょうか?
 本書は、年貢収入と年貢率を比較する例を挙げています。1706年と1715年のデータを比較して、年貢収入は増加しているのに年貢率が低下していることを指摘します。この年貢率低下の問題が徳川吉宗の政策課題となり享保の改革につながっていくわけです。
 田沼意次、松平定信、水野忠邦がどのような政策選択をしたのか? その成果はどうだったのかを読み取ることで、歴史の学習に経済的視点を加えることができます。(第三章)

9.大名領の視点から見る年貢
 大名領における年貢は、国税ではなく地方税にあたります。ということは、地方によって税率は異なるのでしょうか?
 徳川家康は、年貢額については、近隣の領主の年貢額を勘案して判断するように指示しています。自らの領内だけ重い年貢を賦課しないようにするためだそうです。結果として年貢率は全国的に一定の幅の中に収まっていたようです。
 なぜ領主は重い年貢を課さなかったのでしょうか? もう一つ深い理解が必要です。(第三章)

10. 年貢が租税に近づいていく?
 この疑問について考える手がかりが1833年当時の史料にあります。年貢の在り方についての性格が見えてきます。
 もともと江戸時代では、百姓が納めた年貢の中から領主が家臣に給金を支給していました。ところが時代の経過と共に、百姓の武士に対する発言力が変わってくるのです。
 給金は、村々から個々の家臣に渡す方式に変わります。年貢の使途は、百姓たちが把握するのです。近代以降の租税協議権に一歩近づいてきたようです。(第三章)

11.村の構成を理解しよう
 江戸時代の年貢は、個人が直接納めるというものではありませんでした。村請制ですね。そして、この村から個々の家臣に給金を渡すのですから、村のことを知っておくと、もっとよく理解できそうです。
 村は、集落、耕地、林野で構成されていました。専任の警察や消防はありません。村人自らが担います。村はひとつの行政組織でもあったわけです。運営のために名主、組頭、百姓代といった村役人が置かれます。そして日常的な村運営は百姓に委ねられたのです。(第四章)

12.なぜ寺子屋ができたのか?
 日常的な村運営が百姓に委ねられますと、武士は城下町に集住するようになります。江戸時代の村は、武士のいない村になるわけです。城下町から村に何か伝えることが出てきたら、それを文書にして伝えます。   
 村には武士がいないのですから百姓たちは、その文を読み解かなければなりません。
そこで文書行政に対応するための寺子屋が増えていったわけです。
 寺子屋は、読み書きだけを教えるのではありません。商品・貨幣経済が発達するわけですからそろばんも教えなければならないのです。寺子屋の歴史や、その果たした役割を本書で読み取ってみてください。経済学習をしていたのかもしれません・・・。
                             (第四章と第六章)
13. 借金についての独特の考え方
 村は、社会的弱者・困窮者に対する保護・救済機能も持っていました。経済的に援助が必要な人に対する政策、貧富の格差を解消するための政策、村が独自で対処できない災害などが発生したときの救済などについて書かれています。
 そして、江戸時代特有の金融慣行についても興味深く読むことができます。期限が来ても借金が返済できないとき、現代社会では考えられない対応をしていたのです。どのような対応だと思いますか? (第四章)

14.農民がのぞんでいる政治とは?
 江戸時代のいろいろな面が見えてきました。領主と百姓は対等ではありませんが、年貢額の決定などでは形式的な面があったとはいえ両者の合意が必要だったようです。それでは、この両者が対立した場合には、どのようなことがおこったのでしょうか?
 ここで登場するキーワードは「一揆」です。一揆のイメージは、反権力的な武装蜂起というイメージではありません。百姓は、領主の支配を全体としては受け容れていました。それでは、何が両者の争点となったのでしょうか?
 争点は、農民を慈しみ憐れむ政治の実現についてです。武士の支配自体を否定する意図はなかったことが詳しく書かれています。 (第五章、第六章)

15.「使い方」を決めるということ
 本書の終盤では地租改正が登場します。年貢を負担していた人々に、どのようにして土地の所有権が認められるようになったのかがわかりやすく書かれています。そして、ここまでは取り上げてこなかった、集めた税の使い道について言及しています。
 最後に、年貢とはいったい何だったのかという記述があります。印象深いのは、江戸時代後期の百姓の負担と、令和7年における国民の租税負担率との比較です。皆さんは、この比較をどのように予測しますか? 答えは本書から読み取ってみてください。(終章)

16.本書の全体像
 以上が、本書の内容です。最後に目次を示して全体像を眺めることにします。
 はじめに
 第一章 古代から豊臣政権期までの年貢
 第二章 江戸時代の年貢
 第三章 領主からみた年貢
 第四章 百姓からみた年貢
 第五章 年貢の賦課から上納まで
 第六章 年貢をめぐる対立
 第七章 年貢の矛盾が深まる
 終章 年貢から地租へ

③ どこが役に立つのか?
 具体的に年貢を易しく説明した本に出会えたことをうれしく思っています。歴史学習と公民的分野の学習を接続する知識がたくさん書かれているからです。年貢と現代の税には、異なるところがたくさんあります。一方で、興味深い共通点をたくさん見つけることができます。歴史、政治、経済学習の全てに関わりのある「税」についての知識を整理することができる点で役立つ一冊になると思います。

④ 感 想
 本書には、百姓は年貢を義務だと解釈していたのではないかという記述があります。この「義務」というのはどのようなものなのかが気になりました。大日本帝国憲法における納税の義務は「Duty」、日本国憲法の納税の義務は「Liable」です(Obligationではないのです)。「義務」の強さが違うようです。どなたか本記事をお読みの方で詳しい方。江戸時代の「義務」を英語で表すとどのような単語が適切なのでしょうか。教えてください。

■ 重永 瞬『新しい日本地理 地図・統計・移動から読み解く』講談社現代新書2026年
① なぜこの本を選んだのか?
 「新しい」という本のタイトルが目にとまりました。これまでに学んだことのない、新しい視点で「地理」を学ぶことができるのではないか、そしてその学びの中から経済教育につながる手がかりを見つけることができるのではないかと思い、本書を選びました。

② どのような内容か?
1.重永 瞬さんは?
 重永瞬さんは、京都大学で地理学を研究しながら、まち歩き団体「まいまい京都」でツアーガイドを務めています。著書『Y字路はなぜ生まれるのか?』(晶文社)で第25回人文地理学会学会賞を受賞しています。

2.本書の中心課題は?
 日本の東西を分けるには? という話題からスタートします。マクドナルドを「マクド」と呼ぶのは関西だけではないという指摘から、読者を地図の世界に案内してくれます。
 本書のテーマは、日本の地域区分です。日本を大きく分けるには? という問いに地図と統計を用いて客観的に見ていこうと試みています。

3.東西分布の考え方
 はじめに目に付いたのがフォッサマグナです。糸魚川-静岡構造線と解釈されることの多いフォッサマグナですが、重永先生は「フォッサマグナは面的に広がる領域」だと指摘します。東西文化の境界ではないようです。

4.いろいろな地域区分
 日本の地域区分に関する考え方は「東西対立分布」だけではありません。民俗学の祖、柳田國男が唱えた「方言集圏論」があげられています。これは「集圏論」の1つで、中心が新しく、周辺が古いとされるものです。
 これに対して、中心が古く、周辺が新しいという逆集圏論という考え方も紹介してくれます。近畿の京阪式アクセントを取り囲むように東京式アクセントが分布し、その外縁に無アクセントが分布するという例が挙げられています。
 集圏論と逆襲圏論は対立するものではなく双方の論理が入り混じりながら文化の広がりが生まれると捉えるようです。いろいろな地域区分があるようです。

5.境界線をひとつあげるとすると?
 そこであらためて、東日本と西日本の境界はどこか? ということになりますが、日本を一本の線で分割し、東京と大阪という単一の核によってまとめられた地域と見なすのはあまりにも乱暴だと指摘します。
 それでも1つ境界をあげるとするならば、日本アルプスの山々をあげるべきではないかと教えてくれます。しかし、日本列島をよく見ますと、大阪や東京だけではないことにすぐ気づきます。そこで、次に、東北や九州と行った地域区分を見ることになるのです。

6.さっせんひろふく・・・
 東京、大阪以外・・・? とききますと、どのような都市が思い浮かびますか? 東京、大阪、名古屋・・・本書であげられているのは札仙広福です。「好きなプロ野球球団勢力図」という魅力的な資料をもとに地方中枢都市の説明をしてくれます。
 日本の地方区分はどのような経緯で成立したのでしょうか? その地方区分というのは本当に実態としてのまとまりがあるのでしょうか? 札仙広福が、どのようにして地方中枢都市の座を獲得したのかを見ることになります。

7.地方中枢都市という存在は幻想?
 3大都市圏以外でプロ野球球団が所在する都市は、札幌、仙台、広島、福岡といった地方中枢都市です。なぜ四国や北信越にプロ野球球団はないのでしょうか? どうしてそこに独立リーグが結成されたのでしょうか? この問いに本書は答えてくれます。
 1970年代になると、日本は「東名阪」、「札仙広福」、「それ以外」という三層構造が現れます。第4次全国総合開発計画(1987年)では、札仙広福は「地方中枢都市」とされます。しかし、この4都市は横並びではなく、経済規模や性格が異なっていたのです。
 重永先生は、この異なりについて、市内総生産、人口データを見ながら説明してくれます。この地域構造は、日本に古くから存在したわけではありません。どうやら行政上の理想(地方ブロック幻想と書かれています)であったようです。

8.東西の次は南北 
 ところで、日本には「北と南の区分」もあります。「トンネルを抜けると雪国であった」という有名な一文をきっかけに「裏日本」という概念について教えてくれます。
 侮蔑的なニュアンスを含む「裏日本」という表現は、1895年の教科書『中学日本地誌』に初めて登場します。気候を説明するために自然地理的視点から用いられたようです。ネガティブなイメージが加わったのは人口推移と関係があります。

9.江戸時代、北陸の人口は多かった
 江戸時代における北陸や山陰の人口は、全国平均より高い増加率を示しています。日本海側は、港と港を結ぶ水運が発達していたのですから納得です。ところが、明治中期になると日本は産業革命期に入り、工業化が進み、人口分布が変化します。
 神戸とインドの間にボンベイ航路が開設され、輸入綿花による紡績業が発展します。製鉄においても、中国から輸入された鉄鋼石や九州・北海道で採掘された石炭で行われるようになり、山陰の製鉄業が衰退するのです。

10.ヨコからタテに変化する交通
 産業の変化に加えて交通をめぐる世界も変化していきます。日清・日露戦争後の1906年には全国の鉄道が国有化されます。路線図を見ますと「裏日本」が周縁的な位置にあることがわかります。
 日本海沿岸をヨコにつないでいた海のネットワークは、日本列島をタテにつなぐ陸のネットワークに転換したのです。1931年に「国境を越える長いトンネル」が開通します。

11. 新しい役割 
 明治以降、日本海に新たな水運ルートが誕生します。敦賀とウラジオストクを結ぶ航路が開かれたのです。海路で40日かかっていた東京-パリ間が17日に短縮されたのです。日本海側の諸都市は東京・大阪と大陸を結ぶタテルートの結節点になるのです。
 1960年頃から、NHKでは「裏日本」を差別的表現として使用しなくなります。この裏という表現は、雪だけで絵説明することは難しいようです。開発を後回しにしたという要因をあげなければいけないようです。

12. 黒潮が結びつけて生み出す広い文化
 『雪国』の次は『伊豆の踊子』です。本書の目的は、日本の地域区分でした。対象となるのは、雪が降らない温暖な地域である太平洋側です。
 紀伊半島と房総半島の共通点、南海日本の共通点と、様々な共通性を指摘しています。ところが、南海日本が1つの地域として見なされることはありません。
 鰹節の年間支出、茶やミカンの生産量、海洋プレートと大陸プレート、バイク利用率といった様々な資料からの解釈を興味深く読むことができます。

13. なぜ長野県にメーカーが多いのでしょうか?
 東西、南北と日本の地域区分について考えてきました。この地域区分を考え続けるにあたって難しい部分の存在に気づきます。それが「中部地方」です。
 中部地方は、明治時代の教科書を編纂するときに、便宜的に設定されたものだそうです。便宜的をどのように解釈することができるのでしょうか?本書では、中部地方に群馬県と栃木県を加えて「中央日本」という地域を設定して考察していきます。
 日本で最も製造業従事者の多い県はどこでしょう? スバルで有名な富士重工業の前身は? トヨタ、スズキに共通する創業時の特徴は? 生徒が知っている身近な話題をきっかけに、その背景を考える授業づくりに役立つ情報でいっぱいです。

14. 人口減少を地域差の視点から見る授業づくり
 ここからは、地域区分に日本が抱えている諸課題を加えて考察していきます。取り上げるトピックは「人口減少」です。出生率の地域差を見ると、授業に使えそうな話題に出会えそうです。
 そこで問題です。問1「出生率が最も高い県はどこでしょう?」。問2「現在の西日本と東日本では、どちらの方が出生率が高いと思いますか?」。問3「戦前において西日本と東日本では、どちらの方が出生率が高いと思いますか?」
 問2と問3について、その理由を授業で考えてみませんか? まだまだ授業づくりのヒントが見つかりそうです。

15.家族形態のいろいろ  
 西日本と東日本の出生率に関連して、日本の伝統的な家族形態である東北日本型と西南日本型が紹介されます。
 この形態を背景にして「なぜ出生率に東西それぞれのパターンが出来上がったのか?」についての仮説が書かれています。あくまでも仮説ですが、家族規範と出生率を関連させ問いを発信することで、生徒からいろいろな発言がありそうです。

16.なぜ「地域」という概念で考えなければいけないのか?
 ここまで考察してきた「地域」という概念は、似たような性質を持った領域である「等質地域」や中心と周辺が結びついた「結節地域」という概念でまとめることができます。
このつながりの概念に時間軸を入れて、昔と今(そして未来)を語るわけです。
 なぜ「地域」というまとまりを構想するのでしょうか。本書は、地域区分は効率的な行政であったり、客観的な地域の把握であったり、地域格差の是正、未来の創出であったりと、何らかの目的をもって行われるものだと説明しています。

17.マイ「地域」の創造
「地域」という概念を用いて日本を見てきますと、とてもよく理解できるところがある一方、捉え方の限界も見えてきます。この限界の克服は可能なのでしょうか?
 本書は「地域区分」という方法そのものから離れてみよう! とか「新しい地域区分を描き出してみよう」という方法を提案してくれます。一人一人の人間が行動する場所は皆異なりますし、その人独自の「地域」が形成されているはずだからです。
 さて・・・私(紹介者)にとっての「地域」とは? そんな想像をしながら本書の全体像をながめてみることにします。

18.本書の全体像
 目次の紹介です。全体像は次のようになっています。
 第1部 日本はどう分けられる?
  第1章 日本は「東」と「西」に分けられるのか?
  第2章 「札仙広福」と地域ブロック幻想
 第2部 何が風土をつくるのか?
  第3章 何が「裏日本」をつくったのか?
  第4章 黒潮がつくった「南海日本」
  第5章 「中央日本」の物流と産業
 第3部 移動が変えるもの、変えないもの
  第6章 出生率はなぜ「西高東低」になったのか?
  第7章 移民から見た日本の「西」と「東」
  第8章 「地域区分」とは何か

③ どこが役に立つのか?
 どこでモノが作られて、どのように、そしてどこに運ばれて、誰に向かって売られるのか? という現実の社会を見ることができます。 経済的分野の教科書には登場しないリアルな人間の動きを想像することができます。
 この大きな流れの中で、生徒に発問したくなる情報が所々に登場します。その問いは、いろいろな単元と結びつけることができそうな「生きた情報」です。躍動感のある授業づくりに役立つと思います。

④ 感 想
 フォッサマグナの記述のところで、かつて訪れた新潟県糸魚川市にあるフォッサマグナミュージアムを思い出しました。館内に入るとヒスイが出迎えてくれます。そして巨大スクリーンに映し出されたフォッサマグナと日本海の形成に出会うのです。このミュージアムをデザインした学芸員の先生は、見る人の立場を考え抜いて、展示の順番を考えたのではないかと思います。
 本書も同様に、予備知識がなくても理解しやすい順番で、地図や統計を用いて私たちを案内してくれます。普段あまり地図に触れない生活をしていても、読んでいる中でだんだん地図や統計が面白く感じられてきそうです。そして読み終えたあと、全国各地を巡る取材の旅に出たくなるような一冊になりました。
  (金子幹夫)
────────────────────────────────────────
【5】編集後記「~自己観照~」
────────────────────────────────────────
 今回も見てしまいました。大河ドラマの「本能寺の変」のシーンです。このあと秀吉の高松から京都まで約230㎞を約10日間で移動した「はやさ」が強調されます。
 いったいどのくらいすごいことなのでしょうか? 今年の、先生のための夏休み経済教室では、生徒の肌感覚で教えるという考え方が示されました。同じように秀吉の中国大返しも肌感覚で表現することはできるのでしょうか。
 思い浮かんだのは箱根駅伝です。往路と復路合わせて約217㎞。多くの生徒は,約200㎞という距離を具体的なイメージとして受け止めることができそうです。鍛え抜かれたアスリートが最新のシューズを履いて荷物を持たないで10時間37分でかけぬけるということも知っています。
 この距離を、荷物を持った兵が、そして普段鍛えているとは限らない兵士が10日間で移動し、その直後に戦に突入するのですから、そのすごさを感じ取ることができると思うのですがいかがでしょうか?
  (金子幹夫)
 
 
Email Marketing Powered by MailPoet