reader reader先生
 何かいいことがありそうな5月を迎えました。
 授業開きから約一ヶ月経過しました。皆様いかがお過ごしでしょうか。ようやく「新学習指導要領」の「新」という言葉がきかれなくなりました。これは定着してきたからなのでしょうか? 現在、先生のための「夏休み経済教室」の準備をすすめているところです。今年の経済教室では「新」ではなく「シン経済教育の提案」という企画を検討しています。多くの方と学び合える日を楽しみにしてます。それでは今月号のスタートです。
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【今月の内容】 今月は次の5つの内容をお届けします。
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【 1 】最新活動報告・・・2026年4月の活動報告です
【 2 】先生のための「夏休み経済教室」 新情報です!
【 3 】定例部会のご案内・情報紹介
【 4 】授業のヒント…【心の動きを止めない手がかりは?】
【 5 】授業で役立つ本…授業づくりのヒントになる本を2冊紹介します。
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【1】最新活動報告・・・2026年4月の活動報告です
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■ 先生のための「春休み経済教室」を開催しました。
 日時:2026年の3月28日(土)13時~17時
 場所:慶應義塾大学三田キャンパス北館3階大会議室+オンライン(Zoom形式)
 テーマ:エコノミストと考えるフューチャー・デザインの視点を生かした授業のつく      り方
参加人数:63名(会場40名、オンライン23名)
詳しい内容は
   https://econ-edu.net/wp-content/uploads/2026/03/2026HaruKeizaiRecord.pdf
                         をご覧ください。
■ 大阪部会(No.97)を開催しました。
日時:2026年4月12日(日)15:00~17:00
 場所:同志社大学 大阪サテライトオフィス
内容の概要:12名参加
 1.篠原総一先生(経済教育ネットワーク)から「シン経済教育のすすめ:みんなが腑に落ちる授業の作り方」についてのお話がありました。
 2.河原和之先生から(授業のネタ研究会)から、コンビニを題材に「経済のつながり」を主に学ぶ授業計画の報告がありました。
3.大塚雅之先生(三国ヶ丘高校)から「2026年度大学入学共通テスト(公共・政経)の分析」報告がありました。
詳しい内容は
  https://econ-edu.net/wp-content/uploads/2026/01/Osaka97report.pdf
                          をご覧ください。

■ 東京部会(No.149)をハイブリッド形式で開催しました。
日時:2026年4月18日(土)15時00分~17時00分
場所:慶応義塾大学三田キャンパス
内容の概要
1.市川慶太先生から「篠原先生の経済単元提案を中学校で実践してみた」について報告がありました。
2.根本太一郎先生から世界史探究における金融経済教育の工夫」の報告がありました。
 詳しい内容は
  https://econ-edu.net/wp-content/uploads/2026/03/tokyo149reportHybrid.pdf
                           をご覧ください。
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【2】先生のための「夏休み経済教室」 新情報です!
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先生のための「夏休み経済教室」の 開催日が決まりました!
■大阪会場 大阪取引所OSEホール(大阪証券取引所ビル)
  8月12日(水) 生成AI時代の経済学、制度への信頼を問う経済学など経済教育の根幹を問う研究者・実践者の講演をお届けします。
  8月13日(木) 「新しい経済教育の提案」をもとに、これからの経済教育の進め方について実践的な議論を深めます。

■東京会場 慶應義塾大学
  8月18日(火) AI時代の到来で揺れ動く国際政治・経済、多元的思考の意義など、先生方が直面している問いに向き合う第一線の研究者の講演をお届けします。
  8月19日(水)「新しい経済教育の提案」をもとに、これからの経済教育の進め方について実践的な議論を深めます。 
 
 ※ プログラムの詳細、申し込み方法 は決定次第HPにアップします。
 ※ 本年は、これまでの中学向け・高校向けという枠組みを外し、より広い視点で経済教育を捉え直す予定です。
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【3】定例部会のご案内・情報紹介
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■大阪部会(No.98)を開催します
日時:2026年7月5日(日)15:00~17:00
  場所:同志社大学 大阪サテライトオフィス対面のみ(予定)
申し込み方法 下記のフォームにご記入の上送信して下さい。
https://econ-edu.net/application/event-application/

■東京(No.150)を開催します。
 日時:2026年7月4日(土) 15時00分~17時00分
 場所:慶應義塾大学三田キャンパス東館オープンラボ +オンライン(Zoom形式)
申し込み方法 下記のフォームにご記入の上送信して下さい。
https://econ-edu.net/application/event-application/
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【 4 】授業のヒント
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心の動きを止めない手がかりは?
執筆者 金子幹夫
1.冒頭10分で心を動かした後は?
 先月号では、教師が授業の冒頭で生徒の心を動かし、その動いたエネルギーを利用して経済学習の内容を伝えることが有効ではないかという提案をしました。そこで、今月は、この生徒の心が動き始めて数分後の授業について考えてみたいと思います。

2.動き続けるわけではない
 生徒の心が動いて数分後、授業内容に飽きてしまい、気がついたらボーッとしている生徒の姿を想像してみてください。「はじめは面白かったのにな・・・」という顔をしている生徒の心に、もう一度火を付けるための手立てとしてどのようなものがあるのでしょうか。

3.2つのことを考えます
 この手立てを考えるためには2つのことを同時に意識する必要があります。
 第1は、導入時に動いた生徒の心をどのように持続させるのかです。第2は、その動きを教師が教えたい学習内容にどのようにしてつなぐのか? です。
 この教師が持つ2つの意識を現実のものにするために、「何を教えるのか?」に注目してみたいと思います。

4.教える内容の手がかりがありました
「何を教えるのか?」ときかれたら、「それは経済の見方や考え方を教えるのだよ」と答えたくなります。では、「その経済の見方や考え方というのは具体的にどのようなものなのですか?」ときかれたらどのように答えますか?

 この問いに答える手がかりは、2026年 4月 12日に開催された経済教育ネットワーク大阪部会の記録からみつけることができます。(※ 昨年度開催された「先生のための夏休み経済教室」の資料にも詳しく書かれています)    
 その手がかりというのは「希少性、分業と交換、つながり、信頼、機会費用、効率と公正」です。これは経済の本質を表す6つのキーワードとしてあげられています。

5.手がかりをどのように授業づくりにつなげるのか?
 大阪部会では、この6つのキーワードについて、身近なケースを題材にして学びはじめ、徐々に一般化してはどうかと提案しています。
 そこで周囲を見渡します。身近なケースというと・・・これは教師が得意とする分野になります。筆者が見つけたものに新聞があります。これは、私たちの身近な生活と経済学習の内容をつなぐ材料を提供してくれるはずです。

6.どのようにつなげることができるのでしょうか?
 例えば、先月号の編集後記で取り上げました神田の三省堂がオープンしたというできごとは、多くの新聞で報道されました。教室で新聞を用いる場合は、複数紙配付することになりますから、ちょうどよいと思います。
 そこで、次のように展開してみてはどうでしょうか?
(0)神田の三省堂オープンの記事を読みます。
(1)1冊の本を作るためには、どのような人が関わっているのかを考えます。
(2)本は書店に並ぶまでにどのような経路を通ってくるのかを考えます。
(3)開店を待っている人たちは、どのような本を求めているのかを考えます。
(4)どうして、この本屋さんの開店が各全国紙で取り上げられているのかを考えます。
(5)欲しい本があったら、記事で取り上げられている本屋さんに行きますか? 限られた時間や予算をどう使うのが効率的でしょうか、あるいは誰にとっても本が手に入りやすい環境とはどのようなものかを考えます。
(6)なぜこのような問いかけをしたのだと思いますか?という問いかけに答えます。

7.少しずつ一般化してみますと・・・
 この新聞記事を題材にして学びはじめたとしたら、どのようにして一般化ができるのでしょうか?
 (1)の問いは「分業」を意識しました。1冊の本が出来上がるために、どのような人たちが仕事をしているのかを調べてもらいたいと思ったのです。
 (2)の問いは「分業」に加えて「交換」を意識してみました。いろいろな「交換」を経て、書店に本が届くということを理解してもらいたいと思ったのです。
 (3)の問いは「つながり」を意識してみました。ここではじめてお客さんが登場します。このつながりは単に売り手と買い手だけに留まりません。本は世界中の著者と読者をつなげてくれます。古の人ともつなげてくれます。
 (4)の問いは「信頼」を意識してみました。歴史のある有名な本屋さんだから、ここに行けば魅力的な本と出会えるに違いないという根強い信頼があるのかもしれません。
 (5)の問いは「機会費用」を意識してみました。自宅から神田まで出かけるということがどのような意味を持つのかを考えてもらいたいと思ったのです。
 ※ 東京以外の地域では、地元の大きな書店まで出かけるかどうかを考えます。
 (6)の問いは経済学習を意識しました。新聞記事を題材にして、教科書の内容をどのように理解してもらいたいかを生徒と共有したいと思ったのです。

8.今月号の構造
 ここまでいかがでしょうか? 今月号の内容は次のような構造を持っています。まず教科書記述には、暗黙裏に省略された内容があるということです。記述された内容と省略された内容を合わせて経済教育の本質をあぶり出すと「希少性、分業と交換、つながり、信頼、機会費用、効率と公正」が浮かび上がってきます。
 このあぶり出された内容は新聞記事と合わせて学習することで一般化することができます。ただ記事を読むのではなく、教師が六つの問いかけをするのです。キーワードというフィルターを使うことで、新聞記事が生きた教材に変わります。
 
9.授業案が浮かびますか?
 読者の皆様の心は、今動いていますか? 「あっ、これならできそうだ!」と心が動いていましたら、本稿はほんの少し役だったのかなと思います。
もしも教師の心が動かないようでしたら、生徒の心が動くはずありません。筆者は新たな策を考えることになります。
 今回取り上げた題材は、今年度の「先生のための夏休み経済教室」におけるテーマと関連したものになります。多くの先生方と共に考えていきたいと思います。今月はここまでです。                          
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【 5 】授業に役立つ本 
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今月紹介する本は
 川北省吾『新書世界現代史 なぜ「力こそ正義」はよみがえったのか』講談社現代新書2025年   と
 白鳥和生『なぜ野菜売り場は入り口にあるのか スーパーマーケットで経済がわかる』朝日新書 2025年の2冊です。

■川北省吾『新書世界現代史 なぜ「力こそ正義」はよみがえったのか』講談社現代新書2025年
① なぜこの本を選んだのか?
 国際政治に関連する文献を取り上げてみたいと考えました。候補となった本が2冊あります。1冊はジャーナリストが、もう1冊は研究者が執筆したものです。
 今月は、前者を紹介したいと思います。共同通信社の国際ジャーナリストが政治学者、評論家、政治家、実務家にインタビューしたものです。この2冊を順番に読むことで、夏休み経済教室の予習をしておきたいと思い本書を選びました。

② どのような内容か?
1.川北省吾さんについて
 川北さんは共同通信社の編集委員兼論説委員です。ブリュッセル特派員、ジュネーブ臨時特派員、イラク移動特派員、ニューヨーク特派員(国連担当)、ワシントン特派員として活躍されたジャーナリストです。

2.なぜトランプ大統領が当選したのか?
 本書は、トランプ大統領の当選は偶然ではないというメッセージを繰り返し発信しています。なぜ「力が正義」だという社会が形成されてきたのでしょうか? 川北先生は、その謎を多くのインタビューをとおして検証していくのです。
 
3.世界の警察?
 2013年のワシントンにおけるオバマ大統領(当時)の演説が大きく取り上げられます。
当時を象徴する言葉は「アラブの春」です。オバマ大統領が、シリアへの懲罰攻撃について語るのではないかと注目されていました。ところが発信されたのは「アメリカは世界の警察官ではありません」というものだったのです。
 この演説は、パックス・アメリカーナの終わりを告げるものと解釈され、冷戦後の世界を変えることになります。2013年12月、中国の習近平は南シナ海埋め立てに乗り出します。その3ヶ月後、ロシアのプーチンはウクライナ南部クリミア併合を宣言しました。  一連の出来事は偶然ではないようです。アメリカはなぜ、変わり果ててしまったのでしょうか?
 
4.ネオコン?
 そこでアメリカの栄華と没落をたどる作業が始まります。
 とりあげられているのは、フランシス・フクヤマの『歴史の終わり』です。フクヤマは、リベラルな民主主義が人類統治の最終形で、歴史における思想上の「終点」になるという考え方を示した政治学者です。
 この中から、アメリカには世界を統べる責任があると考えるネオコンと呼ばれるエリートが現れたことを紹介しています。

5.リベラル帝国主義?
 一方で、アメリカ単独で一方的に行動することを避けようと考える人たちも出てきます。リベラル帝国主義者と呼ばれる人たちです。この集団は、多国間協調を優先し、国連などを通じて国際的な合意を取り付けることを好んでいます。
 
6.アメリカ例外主義
 多様な考え方がある中、冷戦後に民主主義の理想を押し広げ、世界をつくり替えようとしている点は共通しています。そして、このつくり替えようとしているアメリカは、特別な責務を担っており、人類を進歩に導く「例外的な国」とするという思想が広まります。
 この「アメリカ例外主義」はフランスの思想家アレクシ・トクヴィルが示したとされています。内容は、アメリカは特別な責務を担っており、人類を進歩に導く「例外的な国」とするという思想なのです。

7.諸刃の剣
 クリントン大統領のもとで国務長官を務めたオルブライトは、「我々は他の国々よりも高みに立ち、遠くを見通している」とアメリカ例外主義の思想を述べています。
 この考え方は諸刃の剣です。全体主義や独裁に敢然と立ち向かう使命感の源泉になる一方で、他国の文化や宗教に配慮することなく独善を押しつける危うさがあるからです。
 どこの国にも、その国に根づいた習俗や政体があります。そこに西洋の理想を押しつけてもうまくいかないことだってあるわけです。

8.アメリカ大統領選を解釈する手がかり
 アメリカの栄華と没落の歴史をたどる中で、我々は前回のアメリカ大統領選の結果を解釈する手がかりを見つけることができそうです。
 その手がかりというのは、現時点でのアメリカのジニ係数、格差が拡大した時期にすすめられた金融自由化の影響、当時のクリントン大統領による「小さな政府」、「大きな政府」から距離を置いた立ち位置です。
 この過程の中で、左でも右でもなく「下から上」という政治の見方をした異端の政治家が登場し、支持を集めます。本書を読むことで、このつながりを検証してみてください。

9.次にロシアについてです
 そこで、次にロシアを見ることになります。2013年以降(オバマ演説の後)のロシアの動きはどのように解釈することができるのでしょうか。
 本書はウラジミール・プーチンが若き日にどのような経験をしてきたのかを語っています。プーチンへのインタビューをまとめた『第一人称』という本が出典元です。
 中学3年生の時にKGBに直接出向き、就職する方法を聞いたエピソード、下積み時代にキッシンジャーを空港に出迎えたときのエピソード、アメリカ同時テロの直後、真っ先にブッシュに電話したこと。そしてその後のアメリカによるABM制限条約からの一方的離脱。ミュンヘン安保会議におけるアメリカとの絶縁。教科書記述で省略されているエピソードで満載です。
 過去の歴史を振り返った後、インタビューからプーチンは「昔から攻撃的だった」という人がいるが、同意できないという証言を紹介しています。

10. そして中国です
 次は中国の登場です。習近平がどのような人物なのかをジャーナリストの視点から解き明かそうとしています。
 はじめに、中国においてメディアが党中央宣伝部の管理下にあることについて説明しています。なぜ中国において、メディアは党と政府の主張を広めるために仕事をするのでしょうか。その謎を、中国政府が目指している夢の存在と関連させて説明しています。
 それでは、その夢とはどのようなものなのでしょうか。中国の歴史観と密接な関係があるようです。キッシンジャーとジョセフ・ナイの指摘から、偉大な復興を目指す中華民族の夢を読み取ってみてください。

11.世界の85%の人々
 アメリカ、ロシア、中国について読み取ってきました。次はBRICSです。ロシアと中国が入っています。世界人口のうち、新興・途上国に住む人は約85%です。BRICSはこの人々の擁護者としての役割を果たそうとしています。
 BRICSが形成される原点は1955年のアジアにあると言います。バンドン会議、平和十原則といった歴史を振り返りながらどのようにしてBRICSがG7のGDP総計を上回るまで成長したのかが書かれています。

12.危機感
 次のテーマは白人です。本文はメイフラワー号までさかのぼります。北米にはどのような人たちが、どのような順番で移り住んできたのかが書かれています。
 イギリス、ドイツ、南欧、東欧の人々が移り住むということは、異なる言語を語り、異なる宗教を信仰し、民族起源を異にする人々が同じ政治的主権のもとで生活するということです。何かが起こりそうだとすぐに感じることができます。
 その中で、2060年には白人の占める割合が44%に落ち込むとの予測が示され、社会が少しずつ非白人化されているというインタビューが紹介されます。ハンチントンは移民の流入によりアメリカの文化が浸食されるという危機感を持っていると紹介しています。
 白人が抱く焦燥、そして白人が抱く世界観が、近年のヨーロッパにおける政治の動向と合わせて紹介されます。私たちが新聞記事を深く理解するための知識が得られます。

13.人の心を動かすSNS?
 白人の次はSNSです。 
 9・11が私たちに与えた教訓は、歴史を変えるために多くの人間を動員し、革命や政変を起こす必要はないということでした。ローンウルフ(一匹狼)型テロの恐ろしさを表した一文です。
 ソーシャルメディアは過激思想を拡散するだけではありません。特定の価値観が響き合い、次第に増進していく現象は投票操作にも利用されています。ブレグジットの例が挙げられています。
 2016年のアメリカ大統領選にも言及しています。この選挙にロシアのプーチンがどのように関係しているのか。CIAやFBIの見解を根拠に選挙介入について教えてくれます。
 情報工作について、人の心を動かしたいのであれば、その社会に深く根差す「真実」に働きかける必要があるという指摘を取り上げています。アメリカの場合、白人優位の人種差別意識、内にこもる孤立主義等々。ヨーロッパの場合は階級が当てはまるそうです。

14.
 ここまで読み進めてくると、国際政治はかなり複雑な状況にあることがわかります。この混乱の中から、どのようにして平和を維持していくことができるのでしょうか。
 記述は1943年のフランクリン・ルーズベルトによる「4人の警察官」構想まで戻ります。この歴史の中で安保理常任理事国が四カ国から五カ国になった理由がわかります。
 次に、この常任理事国だけが持つ拒否権です。この問題に光を当てたリヒテンシュタインの行動が取り上げられています。国連憲章第27条を用いて拒否権を制限しようとする試みが紹介されています。
 
15.本書の全体像
 以上が,本書の内容です。最後に目次を示して全体像を眺めることにします。
プロローグ 「警察官」の退却 
第1章 覇者の驕り―「無敵」から「Gゼロ」へ
第2章 「格差」の超大国―アメリカを蝕む病
第3章 リバンチズムー「大ロシア」再興の野望
第4章 百年国恥 ー中華民族の偉大な復興
第5章 「南」の逆襲ーBRICSの論理と心理
第6章 白人の焦燥ー「人種置換」の世界観
第7章 SNSと情報工作ー民主主義の新たな脅威
第8章 「警察官」の犯罪―時代遅れの戦後秩序
第9章 逆流する歴史―よみがえる伝統主義
エピローグ 「19世紀」へ向かう歴史

③ どこが役に立つのか?
 現在の国際政治がどのような状況にあるのか? その枠組みを歴史的に理解することができます。ジャーナリストの視点で世の中の仕組みをみると、どのように見えるのかを体験することができます。章の構成から発信されているストーリー、そして歴史の動きをダイナミックに感じさせる文章は魅力的です。

④ 感 想
 パクス・アメリカーナの終わりは、次の帝王が決まるまでの空位期間という引用がありました。この期間のことを「不安定な地政学的後退」だと表現しています。本書には2カ所に「地政学」という用語が登場します。どうもこの用語が気になります。経済教育の視点でざわつくのです。これは来月号に向けての宿題にしたいと感じました。
                  
■ 白鳥和生『なぜ野菜売り場は入り口にあるのか スーパーマーケットで経済がわかる』
朝日新書 2025年
① なぜこの本を選んだのか?
「授業のヒントがたくさん書かれているに違いない」とタイトルを見て感じました。本書に書かれている素材を使って学習指導案をつくってみませんか? という最適な1冊になると思い選びました。

② どのような内容か?
1.白鳥和生先生について
 白鳥先生は、流通科学大学商学部経営学科教授です。研究者になる前は日本経済新聞社記者、デスクを担当していました。主な取材対象は小売、卸、外食、食品メーカー、流通政策だったそうです。著書に『不況に強いビジネスは北海道の「小売」に学べ』(プレジデント社)があります。

2.授業づくりに役立つ一冊
 いつもとは異なる方法で紹介したいと思います。紹介者は、本書を読み終えた瞬間、問題を作成してみたくなりました。もしかしたら全国の先生方にとって、この問題のどれかが、授業創りに活かせるのではないかと思ったのです。
 選択問題や空欄補充などいろいろありますが、まずは問題を眺めてみてください。そしていくつか解いてみてください。
 一冊の新書から授業を創ることができるのではないかと感じさせる一冊です。それでは問題のスタートです。

3.この本から次のような問題を作ってみました
 問1 スーパーマーケットにとって全国をカバーすることが難しい理由は何でしょう?
 問2 どうして多くのスーパーは入り口付近に青果売り場を配置するのでしょうか?
 問3 スーパーの来店客は正面ではなく、やや上に目を向けながら売り場を見ている。    本当でしょうか? ウソでしょうか?
 問4 スーパーはスムーズに来店客を誘導するために、各売り場にマグネットと呼ばれるものを4カ所に配置しています。どのような場所だと思いますか? そしてそこにはどのような商品が並べられていると思いますか?
 問5 食品売上げランキングです。次の3つを第1位から第3位まで並べ直してください。(ア)「ノンアルコール飲料」 (イ)「冷凍食品」 (ウ)「惣菜・弁当」
 問6 『失われた30年』の間もスーパーマーケットは順調に成長した。これは本当でしょうか? それともウソでしょうか?
 問7 2005年以降、日本のエンゲル係数は上昇傾向にありますか?それとも下降傾向にありますか?
 問8 日本人のタンパク源は(1)から(2)にシフトしています。それぞれのカッコに「魚」「鶏肉」のどちらかを入れてください。
問9 魚を頻繁に食べる国はどこでしょう? 上位3カ国をあげてみてください。日本は入っていません。
 問10 日本のスーパーマーケットでは「セルフレジ」が広がりつつあります。そこで問題です。もう一つ広がりをみせているレジがあります。それは何レジでしょうか。「○○○レジ」です。
 問11  次の空欄に入るのは何でしょう。選択肢から選んでください。「高所得層は(   )をよく買います。低所得層は(   )をよく買います。
 選択肢:「パスタ」、「うどん・そば」 選択したら、その理由も考えてみてください。
 問12 スーパーのライバルにドラッグストアがあります。ドラッグストアの食料品はものすごく価格を安く設定しています。なぜ安い価格設定が可能なのでしょうか? 理由を考えてみてください。
 問13 スーパーマーケットを訪れる(  )割の顧客が来店前に予定していなかった商品を購入しているそうです。さて、何割でしょうか?
 問14 100品目中の48%の商品を安くしたら、ほぼ100%の顧客が安いと感じるそうです。それでは100品目中の何%の商品を安くしたら、85%の顧客が安いと感じるでしょうか。思いついた数値を挙げてみてください。
 問15 セブン&アイホールディングス会長だった鈴木敏文氏は「小売業は(  )学」だと言ったそうです。ここまでの問題を解いていると「その通りだ」と納得します。さて、何学でしょうか?
 問16 地政学に関連する問題です。ウクライナが輸出世界一であるのは(  )油です。さて何でしょう。
 問17  みんな大好きな半額シール。多くのスーパーではこの半額シールを貼るタイミングをどのように決めていると思いますか?  
 答えは全て本書に書いてあります。
 どうでしょうか。授業に活かすことができるでしょうか?
 皆様のご意見や感想を聞かせてください。

4.本書の全体像
 最後に目次を示して全体像を眺めることにします。
 第1章 なぜ野菜売り場は入り口にあるのか? 
 第2章「日本人の○○離れ」は本当に起きている?
 第3章 ドラッグストアの食品が安い理由は? 
 第4章 どうして余計なものまで買ってしまうのか? 
 第5章 食の「買い負け」が安全保障リスクに? 
 第6章 AI導入で「半額シール」が消える?
 
③ どこが役に立つのか?
 教師も生徒も利用しているスーパーマーケットの秘密をたくさん知ることができます。ここでの話題は、授業づくりの材料でいっぱいです。読み進めるごとに「あー、そういうこと・・・」と思わず納得してしまいます。今月紹介しましたもう一冊の『新書世界現代史』と同じくジャーナリストが書いた文章は、読者を引き込んでいきます。まるごと授業に役立つ一冊だと思います。

④ 感 想
 スーパーマーケットの陳列の順番には、ものすごく深い意味があることを知ることができました。本書には書かれていませんが、まだまだスーパーには、私たちが知らない秘密がありそうです。教師の、そして生徒の探究心を刺激する一冊に出会うことができました。
(金子幹夫)
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【 6 】編集後記「~自己観照~」
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 4月某日早朝の出勤ラッシュにて。筆者は座って「授業に役立つ本」の候補を読んでいますと、突然若者の集団が「大丈夫、乗れる乗れる」と助け合いながら乗車してきました。どうやら修学旅行のため羽田空港に向かうようです。大きなキャリーケースと共に、ギュウギュウ詰めの車内に無事乗車しますと、ある生徒が「これが社会ってもんなんだよ」と友人に話しかけていました。この生徒は社会をどのように捉えたのでしょうか。きっと修学旅行先でも多くの「社会」を身体全体で受け止めることでしょう。思い出深い旅行となりますように。
  (金子幹夫)  
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